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【失敗】スキルなのに、なぜか最善の結果になるんですが?  作者: ソル
第三章  計算外の少女
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第24話 会うべきじゃない相手

「会いに行けばいいんじゃない?」


 私は手紙を見ながら言った。


 その瞬間。


「ダメだ」


 クロが即答した。


「えぇ?」


 私は目をぱちぱちさせる。


「でも話したいだけって書いてるよ?」


「信じるな」


 クロの声は低かった。


 ギルドの応接室。


 ヴァルドも腕を組んだまま黙っている。


「そんな危ない人なの?」


 私が聞くと。


 ヴァルドが静かに口を開いた。


「危険、というより」


 一拍。


「厄介だ」


「どう違うの?」


「悪意だけで動く相手なら分かりやすい」


 ヴァルドは低く言う。


「だがアルヴェインは違う」


 私は首をかしげる。


「どんな人なんですか?」


 少し沈黙があった。


 答えたのはクロだった。


「計算の化け物だ」


「化け物って失礼じゃない?」


「お前には言われたくねぇ」


 クロは小さく舌打ちした。


「王都魔術塔の天才」


「成功率至上主義」


「無駄を嫌う」


「失敗を嫌う」


 そこで言葉を切る。


「そして」


 クロの目が細くなる。


「理解できないものを放っておかねぇ」


 私は「ふむ」とうなずいた。


「研究者っぽい」


「その“研究対象”にされる側はたまったもんじゃねぇ」


 ヴァルドも静かに言った。


「アルヴェインは、世界を数式で見る男だ」


「数式?」


「ああ」


 一拍。


「人間も含めてな」


 私は少し考えた。


「頭よさそう」


「そういう問題じゃねぇ」


 クロが額を押さえる。


 私は手紙を見る。


 綺麗な文字。


 丁寧な文章。


 でも。


 なぜか少しだけ冷たい。


「でも、断ればいいんじゃない?」


「……それで終わればいいがな」


 ヴァルドの声は重かった。


「終わらないの?」


「観測を始めた相手を、あいつは簡単に手放さん」


 私は「?」となる。


 なんだか大げさな気がする。


 クロが低く言った。


「リリア」


「うん?」


「あいつは」


 一拍。


「お前を“人”として見てねぇ」


 私は瞬きをした。


「じゃあ何に見えてるの?」


 クロはすぐには答えなかった。


 代わりに。


 静かにつぶやく。


「現象だ」


 部屋が静かになる。


 私は少し考えた。


「……よく分からない」


「だろうな」


 クロは深くため息をついた。


---


 その頃。


 王都、魔術塔。


 アルヴェインは静かに紅茶を飲んでいた。


「手紙は届きました」


 黒ローブの魔術師が言う。


「そうか」


 アルヴェインは窓の外を見る。


「反応は?」


「警戒されています」


「当然だな」


 彼は小さく笑った。


「理解できないものは恐ろしい」


 机の上には大量の計算式。


 その中央には、一つの名前。


 リリア。


「ですが」


 部下が慎重に聞く。


「接触しますか?」


 アルヴェインは少し考えた。


 それから静かに首を横に振る。


「いや」


 一拍。


「まずは壊してみよう」


 部屋の空気が変わる。


 部下が目を見開いた。


「……壊す?」


「失敗が最善へ至るなら」


 アルヴェインは淡々と言う。


「極限状態で、どう結果を修正するのか見たい」


 その声には迷いがなかった。


「観測は終わった」


 一拍。


「次は実験だ」


 静かな声だった。


 だが。


 その言葉だけで、空気が冷える。


 アルヴェインは窓の外を見ながら、小さくつぶやいた。


「さて」


「君はどこまで“成立”できる?」


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