第23話 ギルドの依頼ではありません
ギルド調査隊が納屋を調べている間。
私は畑の端で座っていた。
「なんか大変そうだね」
「お前のせいでな」
クロが即答する。
「えぇ?」
「普通、害獣退治で密輸組織は出てこねぇんだよ」
私は少し考えた。
「でも見つかってよかった」
「結果論だ」
クロは深いため息をついた。
調査隊の冒険者たちは、地下から次々と荷物を運び出している。
「かなり大規模ですね」
「街の中にも流れてた可能性がある」
「よく見つけたな……」
そんな声が聞こえる。
私は苦笑いした。
「転んだだけなんだけど」
「だから怖ぇんだよ」
クロがぼそっと言う。
その時。
「リリアさん」
後ろから声がした。
振り返る。
そこにいたのは、ギルドマスターのヴァルドだった。
「ヴァルドさん」
「話を聞いた」
ヴァルドは壊れた納屋を見る。
「また妙なことになったな」
私はえへへと笑った。
「なんとかなりました!」
「……そうだな」
ヴァルドは少し疲れた顔をした。
クロが低く言う。
「偶然じゃ済まなくなってきたぞ」
ヴァルドの目が、一瞬だけ細くなる。
「お前も気づいてるか」
「気づかねぇ方がおかしい」
私は二人を交互に見る。
「?」
なんか難しい話してる。
ヴァルドはしばらく黙っていた。
それから、静かに言った。
「リリア」
「はい?」
「しばらく単独依頼は控えろ」
「えっ」
私は目を丸くした。
「なんでですか?」
「目立ちすぎた」
クロが小さく舌打ちする。
「やっぱりか」
ヴァルドは周囲を確認してから続ける。
「最近、お前を調べている連中がいる」
私は首をかしげた。
「調べる?」
「ああ」
一拍。
「王都の魔術師だ」
空気が少し変わる。
クロの目が鋭くなった。
「……あのローブ野郎か」
「心当たりあるのか?」
「ある」
クロは低く答えた。
「嫌な感じのやつだ」
私は「ふむ」とうなずいた。
「人気者だね」
「違ぇよ」
二人同時だった。
ヴァルドは額を押さえる。
「とにかくだ」
「しばらくはギルド管理下の依頼だけにしろ」
「危険なんですか?」
ヴァルドは少しだけ考える。
それから、静かに言った。
「まだ分からん」
「だが」
その目が少し鋭くなる。
「お前は普通じゃない」
私はちょっと傷ついた。
「そんなにはっきり言わなくても」
「そこじゃねぇ」
クロが呆れる。
ヴァルドは小さく息を吐いた。
「……リリア」
「はい」
「お前、自分のスキルをどこまで理解してる?」
私は少し考えた。
「よく失敗する!」
「……」
沈黙。
クロが顔を覆う。
ヴァルドは遠い目をした。
「そうか」
「はい!」
ヴァルドはしばらく黙っていた。
それから小さくつぶやく。
「やはり本人は自覚なしか」
私は「?」となる。
「なんの話ですか?」
ヴァルドは答えなかった。
代わりに。
一枚の封筒を取り出す。
「これを預かっている」
「手紙?」
「ああ」
私は受け取る。
白い封筒。
封蝋には見慣れない紋章が刻まれていた。
クロがその瞬間、低く唸る。
「……おい」
「どうしたの?」
「開けるな」
「え?」
ヴァルドも真顔だった。
「本来なら渡すべきか迷った」
「でも?」
「もう向こうは接触してきている」
一拍。
「隠しても意味がない」
私は封筒を見る。
なんだろう。
ちょっと高級そう。
「開けてもいい?」
クロは険しい顔のままだった。
「……好きにしろ」
私は封を切る。
中には、一枚の紙。
そこには綺麗な文字で、こう書かれていた。
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『あなたの“失敗”に興味があります』
『ぜひ一度、お話しませんか』
『アルヴェイン』
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私は首をかしげた。
「誰?」
クロが静かにつぶやく。
「……面倒なのに見つかったな」




