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【失敗】スキルなのに、なぜか最善の結果になるんですが?  作者: ソル
第二章  失敗の再現性
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第18話 クロの仮説

 宿に戻ったあとも。


 クロはずっと黙っていた。


「……」


 窓際に座って、外を見ている。


 しっぽだけが、ゆっくり揺れていた。


 私はベッドに寝転がる。


「今日も大変だったねぇ」


「……」


「でも最後うまくいったし」


 クロは返事をしない。


「クロ?」


「なぁ」


 低い声だった。


「お前、自分が何やったか分かってるか」


 私は少し考えた。


「荷車壊した?」


「そこじゃねぇ」


 クロは振り返る。


 金色の目が、じっと私を見ていた。


「結果だ」


「結果?」


「全部だ」


 クロは机の上に飛び乗る。


 そして、指を折るみたいに整理し始めた。


「遺跡」


「うん」


「装置が暴走しかけた」


「したね」


「普通は爆発だ」


「危なかったんだっけ」


「でも止まった」


 クロは続ける。


「倉庫」


「うん」


「お前が触った」


「うん」


「暴走した」


「したね」


「でも止まった」


 私はうなずく。


「結果オーライ」


「それだ」


 クロが言った。


「そこがおかしい」


 私は首をかしげる。


「そうかな?」


「そうだ」


 クロは即答した。


「普通はな」


 一拍。


「失敗したら悪い結果になる」


「うん」


「でもお前は違う」


 クロのしっぽが、小さく揺れる。


「失敗する」


「うん」


「なのに」


 目が細くなる。


「結果だけ良くなる」


 私は少し考えた。


「運がいい?」


「二回ならな」


 クロは低く言った。


「三回目だ」


 部屋が静かになる。


 私はベッドの上で転がった。


「でもさぁ」


「なんだ」


「結果いいならよくない?」


 クロは頭を抱えた。


「お前ほんとそればっかだな……」


 私は笑う。


「だって平和だよ?」


「平和じゃねぇ」


 クロは机を軽く叩いた。


「意味が分からねぇんだよ!」


 その声に、私は少し驚いた。


 クロは普段から毒舌だけど。


 こんなふうに強く言うことは、あまりない。


「クロ?」


「……」


 クロは少し黙った。


 それから、小さく息を吐く。


「悪い」


「別にいいけど」


 私は起き上がった。


「そんなに変かな?」


「変だ」


 クロは迷わず言った。


「普通じゃねぇ」


「ふむ」


 私は腕を組む。


「つまり私はすごい?」


「違う」


「えー」


「そういう話じゃねぇ」


 クロはじっと私を見る。


「お前な」


「うん」


「“失敗してる”ように見えるんだよ」


「失敗してるよ?」


「違う」


 クロはゆっくり言った。


「見えてるだけだ」


 私は瞬きをした。


「……どういうこと?」


 クロは少し考える。


 言葉を選ぶみたいに。


「たとえば」


「うん」


「荷車」


「壊れたね」


「ああ」


「でも、結果的には一番良い形で収まった」


「うん」


「遺跡もだ」


 クロは低く続ける。


「過程は最悪なのに」


 一拍。


「最後だけ、都合が良すぎる」


 私は「なるほど」とうなずいた。


「つまり」


「なんだ」


「世界が優しい?」


「そんなふわっとした話じゃねぇ」


 クロは深くため息をついた。


 そして、小さくつぶやく。


「……結果」


「?」


「お前」


 クロの目が細くなる。


「結果を壊してるのか?」


 私はぽかんとした。


「結果って壊れるの?」


「知らねぇよ!」


 クロは叫んだ。


「だから考えてんだろ!」


 私は少し笑ってしまった。


「クロ、最近ずっと難しい顔してるね」


「お前のせいだ」


「ごめん?」


「ほんとにな」


 クロは疲れた声で言った。


 そして窓の外を見る。


 夜の街は静かだった。


「……普通」


 クロは小さくつぶやく。


「失敗は、悪い結果になる」


 一拍。


「でもお前は違う」


 私は首をかしげる。


「じゃあ何なの?」


 クロはすぐには答えなかった。


 長く黙ったあと。


 静かに言う。


「まだ分からねぇ」


「うん」


「でも」


 その目が、少しだけ鋭くなる。


「お前のそれ」


 一拍。


「本当に“失敗”なのか?」


 私はきょとんとした。


 でもクロは、それ以上何も言わなかった。


 ただ。


 少しだけ警戒するような目で、私を見ていた。


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