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【失敗】スキルなのに、なぜか最善の結果になるんですが?  作者: ソル
第二章  失敗の再現性
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第17話 簡単な依頼のはずだった

「今日は安全な依頼にしろ」


 ギルドに入った瞬間、クロが言った。


「えー」


「えーじゃない」


 クロはしっぽを揺らす。


「装置系は禁止」


「はいはい」


「返事が軽い」


 私は掲示板を見る。


 討伐。


 採取。


 運搬。


 今日は平和そうな依頼が多い。


「これとか?」


 私は一枚の紙を指差した。


 クロが読む。


「荷物運び」


「簡単そう」


「……まぁ、これなら」


 クロは少し安心した顔をした。


「危険物なし」


「装置なし」


「魔術関係なし」


 私はにこっと笑う。


「完璧だね」


「ああ」


 クロは深くうなずいた。


「今日は何も起きねぇ」


 依頼は、街の商人の手伝いだった。


 荷車に積まれた荷物を、倉庫まで運ぶだけ。


「よろしくお願いします」


 商人のおじさんが頭を下げる。


「新人さんですか?」


「はい!」


 私は元気よく返事をした。


 クロは荷車の上に飛び乗る。


「さっさと終わらせるぞ」


「楽勝だね」


 私は荷車を押した。


 ごとごとと車輪が鳴る。


 空は晴れていた。


 風も気持ちいい。


 平和だ。


「こういう依頼もいいね」


「だろ?」


 クロは満足そうだった。


「何も壊れねぇし」


「壊さないよ?」


「どうだかな」


 私はむっとする。


「失礼だなぁ」


「事実だ」


 そんな話をしながら歩いていると。


 ――ガタン


「あれ?」


 荷車が止まった。


 私は首をかしげる。


「動かない」


「車輪か?」


 クロが下を見る。


 石畳の隙間に、車輪がはまっていた。


「なるほど」


 私はうなずいた。


「ちょっと持ち上げればいいね」


「待て」


 クロが言う。


「嫌な予感がする」


「なんで?」


「お前だからだ」


 私は荷車に手をかける。


「よいしょ」


 その瞬間。


 バキッ


「……え?」


 車輪が外れた。


 荷車が大きく傾く。


「あっ」


「ほら見ろ!」


 木箱が崩れる。


 荷物が転がる。


 通行人が悲鳴を上げた。


「うわああ!?」


「ご、ごめんなさい!」


 私は慌てて荷物を追いかける。


 転がった木箱が坂道へ向かう。


「止まれー!」


 私は走った。


 クロが叫ぶ。


「リリア!」


 その先には、人がいた。


 このままだとぶつかる。


 私はとっさに飛び込む。


 そして。


 盛大に転んだ。


「いたっ!?」


 どさっと荷物の山に突っ込む。


 木箱が跳ねる。


 荷物が宙を舞う。


 通行人が目を見開く。


 次の瞬間。


 ――ガシャァン!


 荷物が、別の荷車の上にきれいに落ちた。


 しかも。


「……え?」


 商人のおじさんが固まる。


 私は顔を上げた。


「どうしたんですか?」


 おじさんは震える指で前を指した。


「あ、あれ……」


 そこには。


 壊れた木箱から転がり落ちた大量の果物。


 ……の、下。


 割れた車輪の軸に、ぴったりとはまる金具。


 クロが目を細めた。


「なんだ、これ」


 商人のおじさんが慌てて駆け寄る。


「見つかった……!」


「え?」


「ずっとなくしてた荷車の固定金具です!」


 私は瞬きをした。


「そうなんですか?」


「これがないせいで、荷車がずっと不安定で……!」


 おじさんは感動した顔をしている。


「ありがとうございます!」


「え、いや」


 私は困った。


「壊したんですけど」


「でも直りました!」


 クロは黙っていた。


 私は苦笑いする。


「なんか結果オーライ?」


 クロは答えない。


 ただ。


 じっと荷車を見ていた。


 割れた車輪。


 崩れた荷物。


 偶然見つかった金具。


 そして。


 結果だけが、最善になっている。


「……おい」


「うん?」


 クロの声は低かった。


「これ」


 一拍。


「装置関係ねぇぞ」


 私は首をかしげる。


「?」


 クロはゆっくり言った。


「どこでも起きてやがる」


 私はよく分からないまま笑った。


「便利だね?」


 クロは頭を抱えた。


「便利で済ませるな……」


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