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【失敗】スキルなのに、なぜか最善の結果になるんですが?  作者: ソル
第二章  失敗の再現性
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第16話 二度目の報告

 王都。


 高くそびえる魔術塔の最上階。


 静かな研究室に、足音が響いた。


「報告です」


 黒いローブの魔術師が、深く頭を下げる。


 机の前に立つ男は、ゆっくりと顔を上げた。


 アルヴェイン。


 その目は冷たく、わずかな揺らぎもない。


「言え」


「対象――リリア」


 一拍。


「再び魔力装置に接触」


 アルヴェインの指が、机の上で止まる。


「結果は?」


「装置は一時的に暴走」


「その後」


 魔術師はわずかに息を整えた。


「完全に停止しました」


 沈黙。


 部屋の空気が、少しだけ重くなる。


「……もう一度言え」


 アルヴェインが静かに言った。


「装置は暴走の後、安定化しました」


 机の上に、魔術式が展開される。


 光の線が複雑に絡み合い、計算が走る。


 魔力量。


 構造。


 崩壊確率。


 結果。


 アルヴェインは小さくつぶやいた。


「再現性」


 一拍。


「あり」


 魔術師が顔を上げる。


「偶然ではない、と?」


 アルヴェインは答えなかった。


 ただ、空中の計算式を見つめている。


「一度目」


 指が動く。


「理論外の成功」


 次の式が展開される。


「二度目」


 さらに複雑な式が重なる。


「同一結果」


 そして。


 すべての式が、ぴたりと止まる。


「……否定されたな」


 静かな声だった。


 魔術師が問う。


「何が、でしょうか」


 アルヴェインはゆっくりと言った。


「偶然という仮説だ」


 部屋が静まり返る。


 アルヴェインは報告書を閉じた。


「成功とは何か」


 魔術師は答えない。


 ただ、聞く。


 アルヴェインは言う。


「成功とは」


 一拍。


「計算通りに進むことだ」


 そして。


 ほんのわずかに、口元がゆるんだ。


「ならば」


 報告書を指で叩く。


「計算を狂わせる存在は」


 目を細める。


「存在している」


 魔術師の背筋が伸びる。


「……対象を危険と判断しますか」


「まだだ」


 アルヴェインは首を振る。


「判断には材料が足りない」


「では」


 魔術師が問う。


「次はどうしますか」


 アルヴェインは迷わなかった。


「三度目だ」


 一拍。


「意図的に起こす」


 魔術師がわずかに息をのむ。


「実験、ですか」


「ああ」


 アルヴェインは言った。


「条件を整える」


「状況を作る」


「そして」


 静かな声で続ける。


「観測する」


 窓の外に視線を向ける。


 遠く離れた街。


 そこにいる少女のことを思いながら。


「三度目で確定する」


 その声は、確信に近かった。


「成功が再現されるなら」


 小さくつぶやく。


「それは現象だ」


 一拍。


「スキルか」


「あるいは――」


 言葉は、そこで止まる。


 魔術師が問う。


「あるいは?」


 アルヴェインは答えなかった。


 ただ静かに命じる。


「依頼を用意しろ」


「はい」


「対象が受けるように調整しろ」


「承知しました」


 魔術師は深く頭を下げる。


 そして部屋を出ていく。


 扉が閉まる。


 静かな研究室に、アルヴェインだけが残った。


 彼はゆっくりと椅子に座る。


 机の上の名前を見る。


 リリア。


 指でその文字をなぞる。


「失敗」


 一拍。


「……興味深い」


 そして小さくつぶやいた。


「次で分かる」


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