召喚士されし者 70・残光
シェイリアの拳王編、後もう一話です。
今回も長い。
拳王杯本選が始まり、抽選会で決まったトーナメントが次々と消化されていきました。
私の試合は第八試合。初戦対戦者は最優勝候補の残光のアルカバーンさんです。
私としては体力のある内に強い選手と闘いたいと思っていましたので、幸先は中々に良い感じです。
周りからはあまり期待されていないようです。受付のセルカさんが悲痛な顔で此方を見ていましたし、たまたま目のあったフリークさんには気合いの入った声援を戴きました。
前評判から、足を使ってくる速攻型の拳術家だと予想出来ますので、開始直後の速攻だけは気をつけなければいけないでしょう。
控え室で柔軟体操をしていると、ドアがノックされました。
係員の方が試合のお知らせにきたのでしょうか?
第七試合は実力的に拮抗している筈なので、私の出番はもう少し後だと思っていたのですが・・・・。
私はうっすらとかいた汗を拭い、ドアを開きました。
「すみません、直ぐにいきま・・・す?」
ドアを開けた先には係員の方ではなく、見知らぬ男が立っていました。
・・・?誰でしょう?
そんな私に男が眉をしかめます。
「・・・・もしかして、俺を知らないのか?」
何を言っているんでしょうか?
「はぁ・・・・。あの何処かで会いましたか?」
「え、あ、本当に知らないのか。アルカバーン・リドって聞いた事ないか、一応あんたの試合相手なんだが。」
「・・・・あ。はい、知ってますよ。アルカバーン流拳闘術の人ですよね。今日はよろしくお願いします。」
「あぁ。よろしく。」
バタン。カチャ。
さて、もう少し柔軟体操をしておきましょう。
「あ、ちょっと待て!話をさせてくれ!ちょ、あ、鍵が!?」
◇━◇
「取り合えず部屋に入れてくれてありがとう。さっきは済まない、うるさくしてしまって。」
「はぁ。」
あまりに必死にドアを叩かれたので入れましたが、何でしょうか?
「大したようではないんだ、ただ少し話してみたくてな。」
「話しですか?」
「あぁ。あのブーギーが興味を示した女性が、どれ程の者かを、闘いの前にどうしても見たくてな。」
アルカバーンさんの纏っていた気配が少し重くなりました。
威嚇ではありますが、身構える程の物ではありませんので、私の反応をみたいだけなのでしょう。
「?動けないか?」
「いえ。そんな事はありませんけど、・・・反撃とかした方がいいですか?でも試合会場以外の暴力沙汰はご法度だったと思うんですが・・・・。」
私がそう言うと、何が面白いのかアルカバーンさんが腹を抱えて笑いだしました。
「はははっ!そうか、成る程なぁ!ブーギーが面白いと言うだけあるなぁ!そうだな、会場以外は確かにご法度だ!悪かったな気が利かなくて!ははははっ!」
「はぁ。」
「俺の殺気を受けてケロッとしてんなぁと思ってたら、そんな事考えてたのか。胆据わったいい女だあんた。試合が楽しみだ。」
「はい。それは私もです。」
五連覇を果たしたアルカバーン・リド。
三年前、私の目標である武祭にも出場した事のある、拳王杯の王者。
この人ならば、あの高みへの足掛かりになる事は間違いないのですから。
「強ぇーぞ。俺は。」
アルカバーンさんの瞳に獣のような荒々しい光が宿りました。
その気配は何処かキリシマ拳岩術のガンレイさんのようでした。質はかなり落ちるでしょうが。
それでも、強い事は間違いないでしょう。
今の私と同等か、それ以上の・・・・。
「私は自分が強いとは思っていません。」
「あ?」
「私より強い人をいくらでも見てきましたから。貴方のように傲れません。・・・・ですが、貴方には勝つつもりです。」
「━━ははっ。面白ぇ、やってみな。」
私の言葉を聞いたアルカバーンさんは一度背筋が寒くなる程の殺気を放ったら後、嬉しそうに部屋を出て行きました。
廊下に響き渡るアルカバーンの足音をききながら、殺気に当てられた私の心が加熱されていくのを感じます。早く試合がしたいです。
◇━◇
第七試合が終わり、私達の試合の番になりました。
名前を呼び上げられて入場すると、会場に火が着いたように盛り上がります。
期待はされていない筈なのですが、凄い声援です。
これで人気とかあったらどうなるでしょうか?本当に火が着きそうな気がします。
私の後に、アルカバーンさんも入場してきました。
名前を読み上げられた瞬間、「火が着いたような」ではなく。観客席の一部から本当に火柱が上がりました。
応援団のパフォーマンスらしいですが、凄いです。
さらにアルカバーンさんが手を挙げると、大きな旗が登り、数十の太鼓の音が鳴り響き、野太い声援が始まりました。
凄いと言うより、もう、恐いです。
「いやぁ、済まんな。あいつら何時も煩くてな。」
「いいですよ。それだけ、アルカバーンさんが実績のある方だと言う証拠でしょうし、勝敗には関係しませんので。」
「勝敗には関係ないかぁ、言うじゃないか。」
「両選手、私語は慎むようにお願いします。」
話していた私達の間に審判の方が入り、軽い注意を受けました。
まぁ、仕方ありませんね。
「簡単にルールの確認をさせて戴きます。闘いは素手のみ、武器の使用は認められない。また、魔法、魔術の使用も認められない。試合会場からの途中退場はいかなる理由があろうと認められない、実行した場合、定められた罰則とその時点での敗北を言い渡される。勝敗はどちらかの戦闘続行があきらかに不能と判断された場合、及びどちらかが棄権を申し出た場合とする。以上を踏まえ正々堂々と闘う事誓って戴きます。」
審判の方の目が私とアルカバーンさんを見つめます。
「ああ、誓う。」
「はい!」
「それでは━━」
見上げた審判の視線の先に、解説席に座る二人が見えます。
合図を待っているようです。
審判の視線に気がついた実況が棒状の物を持って口を開きます。
「準備が終わったようです!それでは、これより第八試合始めさせて戴きます!アルカバーン・リド選手、シェイリア選手、両名構えて下さい!」
実況の声に観客達は声を上げず、じっと合図を待ち、一瞬の静寂が訪れました。
「始め!!」
実況の掛け声と共にドラが叩かれました。
そして私は━━━━
◇━◇
アルカバーン・リド。
アルカバーン流拳闘術の開祖にして、キリシマ拳術を排せば、恐らく最強だと言われる男である。
無手のみに拘り、技を磨きあげ、男は頂きに立とうとしていた。
三年前、一度だけその頂きに手を伸ばした事があった。
武祭と呼ばれる、持たざる者達の頂点を決める闘いである。
アルカバーンは第二回戦にて敗退。
対戦者はキリシマ拳術五家、その一角だった。
当初アルカバーンは、八百長の噂を耳にしていた為、キリシマ拳術と呼ばれる物にそれほど関心を示していなかった。
どうせ見せ掛け、お飾り、そう思い試合に挑んだ。
だが、結果はアルカバーンの惨敗。文字通り、手も足も出ずに圧倒的敗北をつきつけられた。
アルカバーンは知る。
彼等がどうしてそこに君臨するのか。
彼等がどうして八百長など呼ばれる不名誉を被っているのか。
闘えないのだ。
彼等は、五家同士であっても全力で闘えないのだ。
単に強すぎる為に。
彼等が一度本気でぶつかり合えば、どちらかが死ぬ。それほどまでに彼等の強さは行き過ぎているのだ。
ただの一大会の為に、殺し合いをする事を彼等は良しとしていない。
故に彼等は設けたのだ。
己れの命を守る為に、殺してしまわぬように、台本と言う枷を。
それは真剣にこの道を極める者にとって侮辱でしか無いだろう。
だがそれでも、咎める事など誰に出来るだろうか。
事実彼等の頂きに、誰一人として到達していない。自分も含め、誰もかれもが見上げ続けている事しか出来ていないのだ。
アルカバーンはその事実に激怒し、憤怒し、憤慨した。
己れの弱さに、そうさせてしまう弱さに。
それからのアルカバーンは死にもの狂いであった。
気に入らぬ現状を打破する為には強さが必要だったからだ。
圧倒的なほど力を求めて、その鍛練は熾烈を極めた。
血の滲む鍛練の果て、アルカバーンはこの舞台に立った。
全ては、彼等と闘う為。
彼等と本気で闘う為に。
だと言うのに━━━━━━。
「アルカバーン選手ダウンーーーー!!!!これは、た、立てるのか!?と言うか立ってくれぇぇぇぇ、アルカバーン選手ぅぅぅぅ!!!」
そこでアルカバーンの意識が覚醒した。
「かぁっ!?はぁ、はぁ!あぁ!?」
腹部に焼けるような熱を感じながら必死に顔を上げると、一人の少女がそこにいた。
アルカバーンを真っ直ぐに見つめたまま、構えてるその姿はアルカバーンが立つのを待っているように見えた。
歯を食い縛り、アルカバーンは立ち上がる。
なぜ腹部に熱を感じるのか、地面に突っ伏していたのか。理由ははっきりしないが、それでも目の前の少女がそれをやった事は間違いが無い、そう思った。
アルカバーンは吠える。
闘う為に、頂点に立つ為に、あの日成し得なかった彼等との憂いなき闘いの為に。
「アルカバーン選手ぅぅぅぅ!!!立ち上がったぁぁぁぁ!!まだまだいけます!まだまだやれます!出るか、必殺の残光拳!!」
実況による魂の叫びの直後、少女は落ちるように前傾姿勢をとった。
本能が少女の急速な接近を予測する。
地面へとほぼ平行になりながら、少女は一本の矢の如く迫る。
瞬きする間も無く接近されたアルカバーンは地面すれすれを行く少女に拳を振りかざし、そこで思い出す。
この直後だ━━━。
脳裏によぎった予感から、アルカバーンは迎え打つ事を止め、急所を守るように身を縮こませガードの体勢をとる。
目を見開き少女の動きを見たアルカバーンに衝撃が走り、体が浮き上がる。
そして、アルカバーンは先程の腹部の熱の正体を知った。
打ち終えた少女にアルカバーンは渾身の蹴りを放つ。
当然の如く防がれるが問題は無い。
距離をとる事が最優先なのだから。
アルカバーンの蹴りにより少女との距離は二メートルほど空いた。
距離をとったアルカバーンは警戒しつつも、思慮の海に飛び込む。
開始直後、得意の速攻をかける為にアルカバーンは自身から接近した。二つ名にもなった必殺の技、残光拳を放つ為に拳を振りかざし━━━━、そこでアルカバーンは見たのだ。
いや、正確には見えなかったのだ。
アルカバーンの視界から少女が消えたのだ。
その直後、アルカバーンの腹部に重く鋭い一撃が打ち込まれ、一瞬意識ごと刈り取られた。
「おっかねぇな。拳幻術だな。」
アルカバーンの言葉に一度少女は首を傾げるが、直ぐに戦闘を再開する為にアルカバーンに迫る。
急速な接近から幻のように消える少女の動きに、アルカバーンは苦戦を強いられる。
高速で放たれる手数によって、リズムを刻み、圧倒的なまでに対戦者を叩き潰す。それがアルカバーンの必勝法である。
たが、その大前提である最初のリズムを少女に完全に崩されていた。アルカバーンはまともに打ち合わせてすら貰えなかったのだ。
対して少女は実にのびのびと闘っていた。
アルカバーンの目からも明らかな程、少女はリズムに乗っていた。
一瞬の間を幻影が作り、その間を利用し死角から全力の一撃を放つ。
単純な作業を、少女は油断なく淡々とこなした。
かわしては打ち込む。
いなしては打ち込む。
逸らしては打ち込む。
時に髪の毛一本分程のギリギリを抜いて、時には十分すぎる余裕を持って、少女は打ち込む。打ち込み続けた。
試合時間が10分を越える頃には、アルカバーンは完全にスタミナを奪われ、足が地面から離れなくなった。
起死回生と言わんばかりに放った必殺の技も虚しく空を切り、カウンター気味に放たれた少女の拳が、熱の冷めない腹部に深々と突き刺さった。
その一撃は溜まっていた疲労を一気に噴出させ、アルカバーンの動きを一瞬だけ止めた。
直後、アルカバーンのガードを抜いて少女の拳が顔面を捉える。顔面にめり込んだ瞬間、拳に溜めた魔力が槍の如く放出され、拳の威力は爆発的に高まる。
キリシマ拳刀術において、魔力とは発する物である。
纏う事も宿す事もなく、ただ放出する。
振り絞ったソレを、溜め込んだソレを、ただ全力で放出する。
それが極意であり、キリシマ拳刀術の根幹でもある。
少女は誰よりも忠実に、誰よりも実直に、渾身の一撃を放つ。
「ハープーン・ジ・オルバァ!!」
振り抜かれた一撃に、アルカバーンの体は抵抗もなく宙を舞う。何回転したかも分からぬ程、グルグルと舞った体は「ドシャ」っと言う音と共に地面に叩きつけられた。
審判が覗き込んだアルカバーンの顔には戦闘続行の判断を迷わせる要素は無く、直ぐ様こう叫ぶ事になった。
「アルカバーン選手、戦闘続行不能!!!勝者、シェイリア選手!!」
その言葉に、会場が静まりかえる。
やたらと煩かった実況も、派手なパフォーマンスを見せた応援団も、ただの一人も声を発さなかった。
勝者となった少女シェイリアの「ありがとうございます。」という言葉だけが、静寂に包まれた会場でただ一つの音となって響いていった。
ユーキちゃんとゲームするよ
の
コーナー
やる人
ユーキちゃん、シェイリアさん、ロイド、ユミスお嬢、ラーゴ、ルゥ
━━━━第一戦━━━━
ユーキ「タケノコ、タケノコにょっきっきー。」
ロイド「1にょっき!」
シェイリア「2にょっき!」
ユーキ、ユミス「「3にょっき!」」
アウト1 ユーキちゃん、ユミス
ユーキ「くそう!」ユミス「ありゃ」
━━━━第二戦━━━━━
ロイド「たけの━━」
ルゥ「あ!私がやるんで、任せて下さい!」
ロイド「あ、そう?」
ルゥ「タケノコ、タケノコ!にょっきっき!!」
ユーキ「1にょっき!」
シェイリア「2にょっき!」
ロイド「3にょっき!!」
「「「・・・・・・・」」」
ユミス「4にょっきー!」
ラーゴ、ルゥ「「5にょっき!」」
アウト1
ユーキ、ユミス、ラーゴ、ルゥ
ルゥ「くぅーー。負けませんよー!」
ユミス「大丈夫!ラーゴ、勝てるよ!」
ラーゴ「うん。」
━━━━第三戦━━━━
シェイリア「では、いきます!こほん。・・・タケノコ、タケノコ、にょっきっき!」
ユーキ「1にょっきぃ!」
シェイリア「2にょっき!!!」
「「「「・・・・・・」」」」
すっ すっ
ピクッ ピクッ
「「「「・・・・・・」」」」
ユミス「3にょっきぃー!」
ラーゴ「4にょっき!」
ルゥ「よっ・・!?」
ロイド「5にょっき。」
アウト1
ユーキ、ユミス、ラーゴ
アウト2
ルゥ
次回、ルゥ、おまけですら出番なし。
ルゥ「え"ぇ"ぇぇぇえ"!?本編ですら影も形も無いのにっ!?」
ユーキ「どんまい。」
◇━◇
シェイリアさん、おまけですって
シェイリア「ユーキ様が好きです。」
シェイリア「ユーキ様を尊敬してます。」
シェイリア「でも、」
シェイリア「アレク芋の方がもーっと好きです!」
ユーキ「まじか。」
シェイリア「嘘ですよ!ユーキ様の方が少し上です。」
ロイド「少しかよ。」
ユーキ「いいだろう。」
ロイド「いいのかよ。」




