召喚士されし者 69・拳王杯本選
シェイリアさん。主人公みたい。
今回、無駄に長いです。
なんのかんのと予選回を勝ち上がり、無事本選の出場権を手にした私は闘技場のロビーでオヤツ休憩中です。
ブーギー・ビンクスと名乗っていた彼の助言を活かし、気配を気にかけ試合に挑んだ所、それなりに上手く出来たような気がします。
人に意識されないと言う事は中々に使える技術なのかもしれません。こうして誰にちょっかいを掛けられず、オヤツ休憩がとれるのですから。
私はロビーで販売していたオヤツ[ニョキ]をかじりながら、先程お世話になった受付さんからお詫びとして戴いた、本選出場者の情報が書かれた資料を眺めている所です。
あ、[ニョキ]と言うのはエルキスタ近郊に自生している山菜です。乾燥させスティックに加工された物は食べやすく、モキュモキュした食感が病みつきになる面白い食べ物です。
この地方だとオヤツ代わりや、酒のツマミになるらしく何処にでも売っています。
ユーキ様が帰ってきたら教えて差し上げなければいけませんね。
モキュモキュ。
資料を眺めていると数人の出場者に目がいきました。
[アルカバーン・リド]
身長180㎝ 体重81㎏ 人族
拳王杯本選出場歴5回、優勝4回、準優勝1回
[アルカバーン流拳闘術]
残光と呼ばれる二つ名が有名で早さを尊ぶアルカバーン流拳闘術を操る。攻守共にレベルが高い。乱戦に強い。
セルカちゃんアドバイス[速い、強い、速い、速い]
[ゲイル]
身長176㎝ 体重76㎏ 人族
拳王杯本選出場歴4回、優勝1回、3位入賞1回
[流派無し]
銀矛と呼ばれる二つ名が有名で蹴り技が豊富。中遠距離を得意としており、リーチが長い。
セルカちゃんアドバイス[距離を詰める、乱戦に弱い]
[ハングリー]
身長188㎝ 体重130㎏ 半獣人族(熊)
拳王杯本選出場歴2回、優勝2回
[流派無し]
鋼熊と呼ばれる二つが有名で力押しの攻撃が多い。乱打戦を得意としており、対戦者と距離を置くことは無い。皮膚が厚い為、打撃に高い耐性を持っている。
セルカちゃんアドバイス[スタミナが無い、長引かせる]
[ブーギー・ビンクス]
身長174㎝ 体重142㎏ 人族(もしくは豚)
拳王杯本選出場歴8回、準優勝5回、3位入賞2回、4位入賞1回
[レジロード拳闘術]
拳王杯の豚王と呼ばれる二つ名が有名で変幻自在な戦闘スタイルを得意とする。見掛けより俊敏で動ける豚としても有名。対戦者に合わせて動いてくる為、闘い方に癖はなく掴み所が無い。攻撃力はそこそこ。
セルカちゃんアドバイス[ゴリ押しに弱い、合わせず叩く]
むむ。
この4名くらいでしょうか、今大会で有力な出場者は。
他の方は4位以上の結果は出ていませんし。
ブーギーさん、強かったんですね。全然気づけませんでした。
とにかくこの4名だけでも、対策も考えなくてはいけませんね。
・・・・・と言うか、セルカちゃんとは誰なんでしょう?あの受付さんのお名前でしょうか・・・・。
あれ?!もしかしてこの資料、自筆ですか!?
私が受付さんに目をやると、丁度目が合いました。
手を振って貰えたので振り返しておきましょう。
・・・あ、受付さんが交代するみたいです。そして受付さんはカウンターを出て此方に向かって来ますね。
頭の横から生えた黒の小さいツインテールがピョンピョン揺れてます。
「お疲れ様ですぅ。その資料どうですかぁシェイリアさん。」
「あ、ありがとうございます。とっても参考になります。」
「ふふふぅ。頑張って書いた甲斐があります、良かったぁ。」
どうやら書いたようです。
「いいんですか?あの、こんな物戴いて・・・。」
「いいんですよぉ、お詫びですぅ。それより先程はすみませんでしたぁ。それに同じ女性として頑張って貰いたいですしぃ。」
そう言うとセルカちゃんは私の隣に座りました。
「本当にお強いんですねぇ。予選回第一戦はそうとうに荒れると思っていたんですけど。有望株が集まってましたからぁ。」
有望株?
「そうなんですか?」
「あれ、知りませんですかぁ?シューさん、兎の獣人さんとか有名なんですけど。他にもいましたけどぉ・・・・。」
「兎?」
・・・・・・兎。
「あ、獣人の人ですか?」
「そうですぅ!茶色い耳がピンと立ってるぅ、おじさんの獣人さんですぅ!闘技場では結構有名なんです、私サインも貰ってますから。」
「へぇ・・・・。」
確か、通り過ぎ様に横っ面をひっぱたいてやった人ですよね。
大して強くない気がしたんですけど、体調でも悪かったんでしょうか?
「私この近くの村が出身なんですけどぉ、子供の頃からよく親に連れられて闘技場に観戦に来ていましたぁ。好きなんですよねぇ、人と人がこう、何て言うかぁ、そのぉ、頑張って闘ってるのがぁ。かっこいいじゃないですかぁ?」
「そう、ですね。」
「本当は私も闘技場に出てぇ、ガッシーン、ドッシーン、ズババババーって活躍したかったんですけどぉ、どうにも才能が無くて諦めましたぁ。だから同じ女性としてぇ、闘技場で闘うシェイリアさんを応援しているですぅ!初めは冷やかしかなぁ、世間知らずかなぁ、調子に乗っちゃってるのかなぁって思ってましたけどぉ、全然そんな事無くてぇ、兎に角頑張って下さいねぇ!応援してますぅ!」
「あ、はい、どうも。」
「あ、ニョキですねぇ!いいですねぇ、一本下さい。」
「あ、どうぞ。」
セルカさんにニョキを上げ、私もニョキを戴きます。
そろそろ本選が始まりますしね。
モキュモキュ。
モキュモキュ。
モキュモキュ。
何でしょう。
この変な空気。
闘技場のロビーで女の子が二人、ただ黙々とニョキを食べる。
なんかただの食いしん坊みたいじゃないですか。
「そう言えば、セルカさん休憩は何時までなんですか?」
「え?ああ、いえ、私今日は早番でしてぇ。今日はお仕事お仕舞いですぅ。この後はお昼前の開会式から閉会式まで観戦する予定ですぅ。拳王杯は見逃せないので、シフトを調整したんですよぉ。」
「気合い入ってますね。」
「はぃ!シェイリアさん、私、応援してますぅ!今月のお小遣い全額賭けちゃいますぅ!頑張って下さぃ!」
「あ、ありがとうございます。でも賭け事はしない方がいいですよ?」
「もぅ賭けてきちゃいましたぁ!これがしょーめーしょですぅ!私初めて買ったのでワクワクしますぅ。」
負ける気はありませんけど、何でしょう。
凄くプレッシャーかかりますね。
うっかり負けそうです。
そう言えば、ユーキ様は今頃何処にいるんでしょうか?
日帰りの予定ですし、仕事現場に着いている頃だとは思いますが。
お腹空かせてないといいですけど。
ロイドは、まぁ、分かりませんね。
依頼を受けたとは言っていましたが何をしてるんだか。
大方、遊び呆けているのでしょう。
まったく、帰ったら一度ガツンと言わないといけませんね。
「まぁ、二人にいい報告が出来るよう、頑張りましょう。」
「━━シェイリアさん?なにか言いました?」
「いいえ、何でもありません。」
私は再び資料に目を通し、想像します。
彼等に勝つ為に。
◇━◇
「会場にお集まり戴きました、老若男女の皆様!お待たせ致しました!はえある武祭前哨戦、第11回拳王杯が始まろうとしています!実況この私、ニチロ・フルタチが勤めさせて戴きます!特別ゲストとしてコメンテーターに副都市長ハッシュ・トルベスさんにお越し戴きました!どうぞ!」
音声拡張魔道具によりニチロの声が会場に響き渡る。
声に呼応した観客達が雄叫びを上げ、会場が揺れる。
「ご紹介に預かりました、本日コメンテーターを勤めさせて戴きます副都市長のハッシュ・トルベスです。今日はよい試合を観戦出来ると期待しています。」
そう言って手を挙げたハッシュに観客達が、とくに女性達の黄色い歓声が上がり、別の意味で熱気が増す。
細々と野太いブーイングが上がるが、蚊のなくような物で空気は変わらない。
「それでは会場が暖まってきたところで、今大会本選出場者の入場です!!南ゲートをご覧下さい!!」
南ゲートを閉じる鋼の柵が大きな音を立て開かれる。
会場中の視線がゲートに集まり一瞬の静寂が訪れる。
━━━が、直ぐ様歓声が上がり爆発的な熱気が会場に吹き荒れる。
「先頭を進みますのは前年度優勝者アルカバーン・リド!!漆黒の髪をなびかせ黒曜石の瞳が鋭く光ります!アルカバーン流拳闘術を操る、前人未到の五連覇を果たした残光の拳王!今年はどれだけ速く、圧倒的に、この戦場を駆けるのかっ!私と安パイだと賭けた観客達の為に、勝て、勝て、勝って下さい!!」
アルカバーンが手を挙げ応えると会場が野太い声援が充満する。
黄色い声が無いことに若干残念そうな顔をする。
「続きまして、万年準優勝ブーギー・ビンクスが通ります!!今日も蓄えたお腹の肉が揺れる、揺れる!それでも強いこの男!万年準優勝は伊達じゃない!しかし、今年体重140㎏を越えたとありますが、今年も動ける豚なのか!アスラ国中の太めの英雄、今年こそ優勝目指し頑張ります!!!」
ブーギーの名前があがると甲高い悲鳴じみた歓声が響く。そして観客席に豚の絵が現れる。大人5・6人がすっぽり埋まる大きな旗である。
ブーギーはその方向に両手を振りながら歩いていく。
「さらに出場者が続きます!銀矛のゲイル、炎のワズ・グラハム、豪獣ライオネル、鋼熊ハングリー、闘士ビル・ヴィジャバァの5名です!鋼熊ハングリーは実に第三回大会以来の出場になりますが、現役に食らいついていけるのか!」
実況の声に「コロスぞぉごらぁ!!!」とハングリーが叫び、実況が腰を抜かす場面もありつつさらに入場が続く。
「ここからは二つ名こそ無いけれど、優勝を狙う新進気鋭達が入場です!先頭から、バーキン・ウィズ、ジボルト、リミマイアン、アール、エド・ビィガーの5名です!前大会、初戦敗退に終わったバーキンとジボルトに是非頑張って貰いたいです。」
「前大会は私も観客として見ていましたので、バーキン氏とジボルト氏は覚えております。抽選、上手くいく事を願っております。」
「初戦から優勝候補と準優勝候補ですからね。組み合わせ次第ではベスト4も夢ではないでしょう。・・・・さて!ここからは予選回を勝ち抜いた、有象無象を凪ぎ払い出場権を握りしめた成り上がり共の入場です!!」
熱気が少し下がり、期待されていない雰囲気が出場者にのし掛かる。
緊張し震える者、傲岸不遜に歩む者、しかめっ面で辺りを見渡す者、そして━━
「先頭からハワード・オースティン、ザンバリア、マーク・ブルー!!」
3人が出た後、少しだけ遅れて入場を果たした者がいた。
栗色の髪を後ろに纏め、半袖のシャツに裾の長いえんじ色の袖無しチョッキ。すらりとした長い足が見える紺のフレアースカートをはためかせ、黒のショートブーツが踏み出される。
「今回唯一の女性出場者!シェイリアぁぁぁぁ!!」
少女はただ真っ直ぐを見つめる。
表情には動揺も恐れも無い。
力強く歩むその姿に幾人かが、息を飲んだ。
彼女の未来を、荒唐無稽な未来を幻視して。
「さぁ、拳王杯出場者、全16名出揃いました。第11回拳王杯、優勝と言う最強の称号は一体誰の手に渡るのか!!残光のアルカバーンが蹂躙するのか!万年準優勝、ブーギーがもぎ取るのか!大本命を抜いて、駆け上がるかルーキー!」
実況のニチロが大きく吸い込み、言葉を区切る。
そして、割れんばかりの声で宣言をした。
「これより、第11回拳王杯、開催いたします!!」
会場に万雷の拍手が鳴り、歓声が響き、ドラの音が空気を揺らす。
様々な思いが交錯する拳王杯がここに始まった。
ユーキちゃんとしりとりしようぜ
の
コーナー
ユーキ「しりとり、からの━リンゴ!」
ロイド「リンゴ?」
ユーキ「リンゴ。」
ロイド「なにそれ?」
ユーキ「えっ」
仕切り直し━━━
ロイド「しりとり、からのーリコル」
ユーキ「リコル?」
ロイド「リコル、果物、食ったことあるだろ?」
ユーキ「・・・・しらん?」
ロイド「そうかぁ・・・・知らんかぁ・・・。」
ユーキ「知らんなぁ・・・・。」
ロイド「なぁ、このゲーム何が面白いんだ?」
ユーキ「お前と俺とでは出来そうにないな。」
◇━◇
ユーキちゃんが編み物
するってよ
ユーキ「言うても、俺はマフラーとかしか編めないぜ。ムゥ工場長は機織り並に編めるけど。」
ロイド「俺のなんか作ってくれよ。暇だろ。」
ユーキ「えーー。マフラー?手袋?帽子?セーター?靴下?ヴァニラの編みぐるみとか?」
ロイド「何でも作れんじゃねーか。後、最後のは止めろ、古傷抉るな。」
ユーキ「なんでもは無理だわ。レースを編めとか言われたら、金とるもん。めんどくさい。」
ロイド「編めるのか・・・・。」
ユーキさん、レースで花柄のコースターまで作れるようです。




