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召喚士されし者 68・強者への壁

今回、知らないオッサンからの視点です。

オッサンの嫉妬コワイ。

 強さには、どうしても越えられない壁がある。段階とも呼べるそれは努力で越えられる物より、努力では越えられない物の方が圧倒的に多い。


 闘技場と呼ばれるここは、そうしたものがはっきりと分かる場所だ。


 どれだけ努力をしていようと、どれだけ自信があろうとも、残酷に強さの格付けを押しつけられる。

 その時点で多くの者は強さに背を向けてしまうが、ごく一部の者はその壁を前に奮起し努力を重ね壁を乗り越える事が出来る。


 私はそんな壁に挑む彼等を応援するのが楽しみなのだ。

 こうして警備の仕事の合間を縫っては観戦に来ていた。

 まぁ、合間と言うよりはサボっているような物なのだが。


 さて、話は変わるがウィック・デールと言う男がいる。

 見掛けこそ何処にでもいる軟派な優男であるが、彼は壁を乗り越えたその一人である。

 一年前、彼は弱かった。予選回トーナメントをただの一回も勝つことが出来ず、彼は自信を粉々に砕かれこの地を去った。

 だがどうだ。一年の歳月は彼を強くした。

 目に見えて体つきは逞しくなり、その表情から一年前にあったそれ以上の自信が伺える。

 私は彼ならば越えられと信じている。才能と言う隔絶した壁を。


 しかし、本質的には彼の中身は変わらない物だな。

 先程も女性の参加者に声を掛けていた姿を見ている。

 あの軟派な所がなければ手離しに応援出来るのだがな。


 そう言えば、先程シューの奴も見掛けたな。

 彼も中々に有望だ。


 武芸者としては少し薹が立っているが、まだまだ伸びしろがあるように思える。

 毎年のようにやってくる彼が去年より強くなっている姿は、同年代である私にとって嬉しく、そして羨ましくもある。

 今年こそ、本選トーナメントへの出場権を獲得して貰いたいものだ。


 む?お、あれはへリックソン・ルグナーか?

 三年前予選回を賑わせたあの男も参加するとは、今年は荒れそうだな。

 三年前、今や本選常連のグラッグと死闘を繰り広げたあの勇姿は忘れもしない。

 未来の王者になりえると期待していたが、それからとんと姿を見せなかった。てっきり現役を退いてしまったのかと心配していたが、いやはや修業でもしていたのだろう。三年前とは別人のようだ。


「よぉ、ベルギ警備長。」


 急に肩を叩かれ振り向いて見ると、そこには前年度準優勝のブーギー・ビンクスが腹を降らし片手を挙げて立っていた。


「あ、これはビンクス殿。お疲れ様です。また新人の偵察ですか?」

「あぁ、まぁな。それよりもだ警備長、面白くなりそうだな?」

「やはりビンクス殿もそう思いますか?今年は随分と偏った予選回になりそうですが、面白くなる事は間違いないでしょう。闘兎ショー、新鋭へリックの二強も出ていますし。個人的にではありますが、未来あるウィック・デールも押したい所ですな。」

「ウィックデール?去年、アウグスに初戦敗退した奴か?」

「はい。去年から光る物を感じていましたが、中々に仕上がっているようです。今年は本選に出場する可能性が高いでしょう。」

「はーん。そうか。」


 おや?どうやらブーギーの目に止まったのは別の人間のようだ。


「ビンクス殿のお眼鏡に叶ったのはどちら様で?」

「直に分かる。あれは強いぞ。」

「それほど、ですか?」


 ブーギーと話をしていると予選回第一戦の開始のドラが高々と鳴らされた。

 私はブーギーから闘技場へと視線を向ける。


 歓声に背中を押され、一斉に敵に向かい走り出す人の群れ。

 ぶつかり合う肉と肉、舞う砂埃、弾ける血潮、滝のような怒声が闘技場に満ち、何とも言えない感情が私の心を駆け巡る。

 やはり闘いはいい。

 怪我さえしなければ、年さえとらねば、まだ私も彼処にいれたのだろうに。共に血に塗れ、汗を流しただろうに、実に口惜しい。


 混沌とかす闘技場を眺め、私はお気に入りである3人を探した。


 最初に見つけたのはへリックであった。

 しかし既に誰かに敗れてしまったのであろう、ボロボロになった姿で地面に転がされていた。


「なんと!」


 見逃してしまったか。

 いったい誰が彼を倒したと言うのだ。


「見ていたかビンクス殿!?へリックがやられているようですぞ!!」

「へリック?あんまし覚えてねぇんだよなぁ。どれだ、あ、もしかして南門の近くか?」

「ええ!そうですとも!へリックは誰に?!」

「それよりしっかり見とかねーと予選終っちまうぞ?」


 おお、そうだ。

 早々に一戦を見逃しているのに、余所見をしている場合ではなかった!


 闘技場を見るとチラホラと人が地面に転がり始めていた。


 集中し見ているとシューの目立つ耳が目についた。

 まだ無傷のようで忙しく闘技場を走り回っている。

 どうやらシューはヒットアンドウェイにてこの場を乗り切るつもりのようだ。走りながらも隙のある参加者を蹴散らしている。


 するとシューの前に突然一人の女性が現れた。

 シューはまるでその女性が見えていないかのように何事もなく通り過ぎ、その勢いのまま前傾姿勢で倒れ砂埃を巻き起こした。

 そして倒れたまま動かなくなってしまった。


 足がもつれてしまったのかと思ったが、どうやら違うように思える。奇妙、これにつきた。


「ビンクス殿、今のは見ましたか?」


 これだけ乱戦の中だ。二人が同じ物を見ている訳はないと思いながらも、気がついたら私は訊ねていた。

 理屈ではあり得ないと思いながらも、何となくブーギーと同じ物を見ている、そう感じていたからだ。


「ああ。あいつだよ。」


 ブーギーは一も二もなく返した。

 やはりか、私の中でその言葉が響いた。


 それから女性の動きだけに気をおいて見ていると、ある事に気づかされてしまった。


 誰も彼女を見ていない。

 不自然な程、その女性は参加者達の視線から外れていた。


「魔法か?」


 この拳王杯では魔法、魔術の類いは認められていない。

 もし仮に、あの女性がそれらを行使しているのであるならば、間違いない失格を言い渡されるだろう。


「使ってないさ。」

「いや、しかし!現に彼女は━━」

「まぁ、見てろって。」


 言い争っているうちに彼女は次々に参加者を打ち倒していってしまう。既に20人近くが地面に転がされている。


 その女性の拳は鋭く、ほぼ一撃で他の参加者を打ち倒していく。

 その武は間違いなく本物ではあるが、あの奇妙な現象にどうにも納得出来ず、素直に称賛する気にはなれなかった。


「拳王杯は歴史こそ浅いが、無手の頂点を決める為の由緒正しき武闘大会であるのですぞ!反則を認めては他の参加者への示しがつきません!」


 反則であるならば、直ぐ様止めさせるべきだ。

 それが敗れていった者達の為でもある。

 何より、あんな反則行為で私が立てなかった武の頂点に立とうなど許せなかった。


「反則行為はないからな。あれはオレが教えた事だ。」

「はぁ!?ビンクス殿!?」

「幻現って言ってな、気配を操る技だ。」


 幻現?それは━━


「キリシマ拳幻術の極意の一つだな。」

「なっ!?」


 そうだ、あの光景には見覚えがある。

 武祭でのキリシマ拳幻術のあの闘いを。


 キリシマ拳幻術、それは言うならば霧に浮かぶ影。

 捉えようと手を伸ばしても空をきり、音もなく気配もなく死角から襲いくる無常の牙。

 対戦者の多くが影すら掴めないと恐れられる幻の拳闘術。


 それがキリシマ拳幻術。


「オレが教えたのは基本も基本。かるいアドバイス程度だって言うのに。あの女、言われただけでもう完璧にこなしてやがる。」

「言われただけ?アドバイス?あの女性はキリシマ拳幻術家の方ではないのですか?!」

「違うね。オレも拳幻術の奴等とは付き合いはあるが、あんな奴知らない。あんな天才、見た事も聞いた事もない。」


 ああ、なんと。

 なんと言う事だろうか。


 あんな人がいるのか。いてしまうのか。


 私は今だ加熱する熱気に包まれた闘技場を見渡した。

 この会場に一体どれだけの「私」がいるのだろうか。

 努力すれば、研鑽を重ねれば、それが常軌をいっしていれば、その壁は決して越えられない物ではないと、そう思っていた。

 だが、現実とはかくも残酷な物なのだ。


 あんな事、言われた程度で出来る物ではない。絶対にだ。


 強さには、どうしても越えられない壁がある。段階とも呼べるそれは努力で越えられる物より、努力では越えられない物の方が圧倒的に多い。


 彼等もいつか気づくのだろう。

 夢に敗れた私のように。

 怪我を言い訳に逃げ出した私のように。

 努力を積み、研鑽を重ね、それが頂きに届かないと知り、私のように誰かに託すのだろう。


 私は壁を乗り越えていく者が好きだ。

 でもそれは、天才では駄目なのだ。

 その隔絶した才能では、私の夢は預けられないのだから。


 終了のドラが鳴り、闘技場には一人の女性が立っていた。


 才能の無い私や彼等では行きつく事の出来ない高み。

 そこに到ろうとする一人の女性の姿。


 私は壁を見せつけられた彼等の前途を願い、静かに会場に背を向けた。


「私は業務に戻ります。ビンクス殿、ご武運お祈り申し上げます。」

「あ?最後まで見てかねーのか?珍しい。」

「私には彼女は眩しすぎるのです。」


 薄暗い通路に歩みが差し掛かった所で、私は今一度と闘技場を見た。

 歓声が鳴り響くその場所に彼女は立っている。


 私はそれを眺めた。

 意味などない。

 ただ、ただ、眩しく映る彼女を眺めずにはいられなかった。

ユーキ「最近出番がないんだけど」

ロイド「俺もな」

ユミス「あたしもないね」



ユーキ、ロイド「それは、仕方ない」

ユミス「えぇぇぇぇーーーー!?」


ロイド「馬鹿なんだもの」

ユミス「えぇぇぇぇーーーー!?」


ユーキ「でも、そんなユミスが皆大好き」

ユミス「えぇぇぇぇーーーー!?」


ユーキ、ロイド「嘘だけど」

ユミス「えぇぇぇぇーーーー!?」


ラーゴ「あの、僕は、その」

ユミス「無理しなくていいよ」

ラーゴ「あ、うん」


◇━◇


某蒼の一族ことルゥ先輩

「と言うより、それなりに召喚術に携わっているのに出番のない私より遥かにマシですよ!皆さん!うーんデンジャラス!!」


ユーキ「何言ってんだこいつ」



*注*

作者暴走中

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