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天使な悪魔の絶対運命  作者: みきもり拾二
◆【第四章】天使の卵
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(八)文化祭当日:開幕!

 ────日曜日、文化祭当日。


 メインステージでのオープニングセレモニーを皮切りに、埜之平(ののひら)高校文化祭『樹平祭(じゅだいらさい)』が開幕した。


 そのオープニングセレモニーだが……正直、ひどいもんだ。


 宝箱を抱えるハノンが「やーですのー!」と棒読みゼリフを繰り返している。ちなみに衣装は、『わんこ茶屋』のメイド服のままだ。

 そんなハノンに向かって、海賊姿の矢茨(やいば)カズマがビシっと細身の剣を差し構え、「我が栄華(えいが)に相応しきお宝だ! 逃すわけにはいかねー!」などとカッコイイセリフを決めている。それはいつもの矢茨そのもので、心なし、ノリノリで演じてるように見えた。


 どうやら海賊に狙われた城のお宝と少女を、埜之平高校の”選ばれし戦士たち”が守るという小芝居らしい。


 水着ニーソの埜之平(ののひら)コトネ副会長が、鳥女と狼女と抜け目ないナマケモノ女を引き連れてメインステージに上がると、会場のボルテージが一気に加速した。というのも、鳥女も狼女も抜け目ないナマケモノ女もみんな、目のやり場に困るほどの大胆な衣装だからだ。しかもみんな、その……とても女性らしいイイ身体つきをしている。


「(精霊魔術の才能が高いと発育が良くなるとか、そういう理由……?)」


 ……いや、副会長のことだ。きっと、わざわざそういう人選をしたんだろう。


「(あざといを通り越して、えげつない! そうだ、えげつないぞ!)」


 ここに滝宮(たきみや)隊長がいてくれたら、俺の意見に力強く同意してくれるに違いない。


「その露出度のたけー衣装、この場でひん剥いてやってもいいんだぜ?」

「ちょっと! そういうアドリブやめてよね!」

「へっへー! 祭りにハプニングは付きもんだろ?」

「余計なサービスいらないから! さっさとお宝を奪いに来なさい、海賊! 後がつかえてるんだからね!」


 副会長たちの精霊プリズムが五色の光を放ち始めると、矢茨カズマが腰を落として剣を構え直し、臨戦態勢を取った。

 湧き上がる男子たちの囃し立てる声に混じって、矢茨カズマに向けた女子たちの黄色い声援が聞こえたのは気のせいだろうか?


「やーですのー!」


 ハノンの棒読みゼリフを合図に、ステージ上では光が交錯する派手な殺陣が始まった。


 小芝居の内容はともかく、女子たちの衣装のおかげか、メインステージ前は異様な盛り上がりだ。

 ……きっとみんな、徹夜明けや早起きでテンションがどうかなってるんだろう。ああ、きっとそうだ、そうに違いない。


 とまあ、それはともかくとして……。


 俺からすれば、校内に再び賊が現れるかもしれないこの緊迫した状況が、気が気でならない。なのに、平然とオープニングセレモニーを演じている様子のゼノリス第二十六地区4班の他のメンバーには、感心せざるを得ない。


 副会長曰く……。


「『変に警戒したり、挙動不審になってちゃ、生徒みんなの不安を煽っちゃうでしょ〜?』」


 ってことらしいが。だから出来る限り平常運転を装うように、と言われている。

 まあ、確かに一理あるけどさ……。


 今朝、『重要監視地点ピーワン』で遭遇した2名の不審人物の件は、副会長に報告済みだ。

 しかし、事前の予定とは違って、警察には通報していない。

 その理由は、現場に残された『ガフィレフの術符』だ。あれを警察に見せれば、即刻、ゼノリス1班に出動要請が出され兼ねない。


「『そんなことになったら、せっかくの囮作戦が台無しよ』」


 副会長の言い分もわからなくはないが、独断で決めて良かったものかどうか……。双破(ふたば)タケルも矢茨(やいば)カズマも、「面白そうなミッションをみすみす逃したくない」とか言って賛同する始末だし。


 現場で一番権限のあるのは、『班長代理補佐』のハノンだが、寝起きでいまいち状況が理解できてなさそうだった。


「『コト姉様にお任せしますですの〜〜……クゥ〜〜〜』」


 ってな具合で……。


 ちなみに、警報音を聞きつけた付近住民から、幾つかの苦情が寄せられたそうだ。そちらはすでに、「文化祭準備の際の精霊魔術の誤作動」ということで副会長が陳謝して処理したようだ。

 今のところ、それ以上の騒ぎにはなっていない。文化祭というイベントに救われた形だ。


 とにかく現状は、すべてにおいて何も異常は無い、という装いなわけだ。


 ただし、生徒会と文化祭運営チームによる自主的な監視体制は、より一層、強化することになった。


 『重要監視地点ピーワン』は進入不可にして、その両端にビニール紐を張り、文化祭運営メンバーの監視を一人ずつ立てている。『オバケ出現ポイントにつき進入禁止!』の張り紙は余計だと思うが……。

 ともかくまあ、賊が実際に現れた場所だし、『襲撃ルートの確認』という言葉と女の呟きを信頼するなら、再びあそこを通るに違いない。厳重に警戒をしても損は無いだろう。


 『重要監視地点ピーツー』である屋上は、今のところ何もなさそうだが、引き続き監視を行う予定だ。ただし、こちらは進入不可にはしない。屋上は、文化祭運営チームによる『オープンカフェ』『精霊魔術制御の命綱無しバンジージャンプ』の会場になっているからだ。

 なので、文化祭運営チームを中心とした目視による不審人物の監視体制を、二人一組から四人一組に強化することになった。その分、文化祭運営チームの負担が増えたと矢茨カズマがボヤいていたが、それはそれで仕方ないだろう。


 さらに、双破タケルの検知魔術も引き続き利用する。術符による混沌反応をしっかり検知して警報音を発したことは、副会長をはじめとして生徒会や文化祭運営チームにも非常に高く評価されていた。

 だが当の双破は、自身の精霊魔術が正常に作動したことにご満悦かと思いきや、そうでもない雰囲気だった。本人曰く……。


「『こんな事になるなら、検知したら重力で拘束する魔術にすべきでしたね』」


 と自省している様子だった。実際に鉢合わせて取り逃したのは俺だが、双破としては自身に責任があると考えているようだ。確かに、賊に勘付かれていなかったあの瞬間は、捕縛の大きなチャンスだったかもしれない。


 とはいえ、重力拘束の罠を張るとなると、それに合わせて全校生徒に周知が必要だ。こっそり仕掛けようものならそれこそ、知らずに捕まってしまう不慮の事故が多発しかねない。

 さらに文化祭当日となると、外部の人で校内が溢れ返る。何かの間違いで一般客を捕縛しようものなら面倒が多くなるだけだ、という理由から、やはり警報音を鳴らすまでに留めてある。


 副会長的に、生徒や一般客にあまり不安を与えたくないという意向もある。あくまで生徒会の役割の範疇に収め、なおかつ、生徒や一般客の安全確保を考慮するとこれが限度だろう。


「『”噂のオバケが出たのかも!”って思ってもらえればいいじゃん♪』」


 そんな具合になればいいんだけどね……。


「(まあ、ひとまず、『ミッションS』の方はそれでいいとして……)」


 ひとつだけ、ずっと気になっていることがある。


「(二人いたうちの小柄な方……)」


 女性に違いないだろう。そして、ブツブツと呟いた時のあの声。


「(な〜んか、どこかで聞いたことのある声だった気がするんだが……)」


 首を捻って思い出そうとするが、どこかで何かがつっかえたような感じで出てこない。


 メインステージで繰り広げられるアクロバティックな精霊魔術のオンパレードをよそに、俺は一人、溜め息をついていた。


 どうやら今日は一日中、そのことが心に引っかかってそうだな……。





ミッションSそっちのけで文化祭開幕っすか~。どうなることやら。

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