(ニ)発見:帰ってきたお宝
次の日の放課後、いつものゲーセン仲間に囲まれていた────。
「悪い、また今度な」
「なんだよ、付き合い悪ぃな」
「来ればいいじゃん。そばで見てるだけでもよ」
「『資金の宛ができた』とかSNSで言ってた件はどうなってんだ?」
「いや、あれは、その……」
残念ながら、俺の小遣いはゼロのままだ。
「(あの荷物、早く見つかってくれないかな……)」
父さんから譲り受けた、ガラクタが詰め込まれたあのスポーツバッグ。一応、ゼノリスの滝宮隊長には、ミストに巻き込まれた際に置き去りにしたことを伝えてある。見つかれば、連絡をもらえるという話だ。
父さんと姉さんにもその話はしたんだが……。
『見つかるまで小遣いはやらんぞ!』
『え〜、あたしの漱石さんいつ帰ってくるのよ? 諭吉さんを連れてきてくれるのよね?』
という始末。父さんに、神妙に土下座して前借りを頼み込んでみたものの……。
『返す宛無き者に貸す金など一銭も無し! 痴れ者が!』
と一喝されて終了。芝居がかってるくせに、そういうところは硬いんだよな。
遊びの誘いを断るってのは本当につらい。でも横で見てるだけなんてのはもっとつらい。拷問にも等しい。
「ポータブルだったらいつでもやれるんだが?」
「新モンスターのレア確率アップ期間中だぞ? せこせことポータブルなんかやってられっかよ」
「社会人金満ギルドのヤツらに負けてらんねーし」
「Sランク日向様がいなくちゃ始まんねーんだよ」
「おいBランク『スポ専』は黙ってろ」
「『スポ専』じゃねーっつの! ちゃんとデュエルしてっだろ!」
「おま、昨日ひでかったじゃんよ〜。神風特攻隊かよ、ってツッコんだわ」
「バーカ、俺が本気出したらマジやべーっての、バーカ」
ああ、いいな。楽しそうだ。
いつもの日常って感じで、心穏やかな気分になる。
「そうだ、お前が日向にゲーム代おごってやれよ」
「おお、ナイスアイディア!」
「その手があったか!……って、ねーわ! 訴訟訴訟!」
「よし弁護!」
「なに!? しからば秘技! 逆転敗訴!」
「控訴!」
「弁護断念!」
「なんでだよ! 諦め早すぎんよ!」
「あ、よく考えたらそもそも第一審が逆転敗訴っておかしくね? 勝つ可能性が高かったみてーじゃん」
「いや俺が弁護しちゃったら白も黒になるからさ」
「お前のせいか! じゃあ弁護断念で良いわ!」
先立つモノが無ければどうしようもない。コントを続ける3人を尻目にカバンを手に取ると、席を立った。
「悪ぃな、じゃ。3人でがんばってくれ」
「明日はどーだ?」
呼びかけに肩をすくめて返すと、教室を出る。廊下を下駄箱に向かって歩き始めた時、向こうから担任の教師がやってきた。
「おお、日向。いいところに」
「はい?」
「校長先生がお呼びだ。至急、校長室に来てくれと」
校長先生が……? 一体、どんな用件だろう……。
◆
「やあ、日向くん」
校長室のドアをノックして、恐る恐る開けると、そこには校長先生と机を囲むゼノリスの滝宮隊長の姿があった。
「すっかり元気なようで安心したよ」
「ご心配おかけしました。……あ、家まで送って頂いたのに、お礼も言わず……」
「いやいや、構わないさ。あれも重要な任務の内だからね」
暖かい言葉に恐縮して、思わずペコペコ頭を下げる。
「本日の昼に、これを発見してね」
と言いつつ、校長先生の机の上を指し示す。そこには、あのスポーツバッグが乗せられていた。
ひとまず中身をチェックしてみるが、間違い無い。さすがにこんなもの、誰も持ち去ったりしなかったというところだろう。
結構早いタイミングで見つかってホッとする。今日にもゲーセン資金がなんとかなるかもと思うと、心踊らずにはいられない。同時に、電車賃が無いこととあの坂道のことを思い出して憂鬱にもなるが……。
「(絶対運命の枷で精霊魔術を使って、あの町までピューッと飛んじゃうか……?)」
いやいや。昨日、つまらないことには使わないと誓ったばかりじゃないか。
「失礼だが、すでにゼノリス本部で中身を改めさせてもらったよ。危険物などあっては責任問題になるからね」
「あ、はい……」
「と言っても……ガラクタばかりのようだが?」
「そ、そうなんですよね……」
改めて指摘されると、なんと答えて良いものやらわからない。
「父さんの知り合いが質店を経営してるとかで、そこへ持って行くようにと」
「ほう、質店?」
「はい。真舟質店という店なんですが」
「真舟質店? ああ、あそこか。盾冬教授のいらっしゃるところだね」
「『たてふゆ』……あ、父さんが言ってた知り合いの人が、確かそんな名前です」
「ほう、そうなのかい? 盾冬教授は国際魔術評議院の元顧問にして、精霊プリズムの開発者という素晴らしいお方だが……その御仁で合ってるかな?」
滝宮隊長の言葉に、驚きを隠せない。父さんの知り合いが精霊プリズムの開発者だって?
そんなこと一言も言ってなかったけど……。
「えっと……ちょっと待って下さい」
確か、スマホの電話帳に住所を登録したはずだ。
「この人です」
滝宮隊長にスマホを差し出して見せる。
「ああ、どうやら間違いないようだ。ここに住んでおられるよ」
マジか……。父さんはいったいどういう繋がりでこんな凄い人と知り合いに……。
「ふむ、日向か……なるほど」
戸惑う俺とは対照的に、滝宮隊長は納得顔だ。
「まあ詳しい事情はこの際置いておいて……どうかな? キミさえ良ければ真舟質店までお送りするよ?」
「ホントですか!?」
これは渡りに舟だ! このガラクタさえ資金に変われば、帰りはなんとかなるだろうし!
「私も、盾冬教授がこのガラクタ……もとい、不思議な品々にどのような反応をするか見てみたいのでね。是非とも」
イタズラっぽい表情でウインクをする滝宮隊長。乗り気なようだし、ここはご好意に甘えよう。




