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天使な悪魔の絶対運命  作者: みきもり拾二
◆【第一章】悪魔を狙う天使の使徒
12/155

(二)ゼノリス:天使がいる!?

「……はい、怪我人です……え? 紋様ですか?」


 聞き返しながら、俺の方を見る。つと、その手が俺の胸のへんてこな紋様をなぞるように動いた。


「はい、そうですね。あります。それが……え!?」


 不意に、女の人が驚きの声をあげて空を見上げた。見ると、金髪の男も空を見上げていた。金髪の男はいつの間に取り出したか、ヘッドセットを耳に押し当てていた。


「『天使』様? 天使様が、ですか!?」


 不思議に思いながらも、二人の見上げる上空に視線を向ける。

 すると、道路にかぶさるようにして枝を伸ばす高枝の木々の向こうから、透明の大きな何かがゆっくりと現れた。「目の錯覚か?」と思うほどのわずかな変化だが、上空の雲が歪曲して見える。まるでガラスの球体を通して光が屈折して目に届いてるかのようだ。

 耳を澄ませていなければ気づかないほどの、小さな「グオオオン」という低い振動音をかすかに感じる。


「ありゃあ、浮遊要塞ファーグッセンじゃねえか! 天使がなんでこんなところに……?」

「……はい、でも、まずは地区本部で治療をした方が良いかと……はい?」


 透明な物体を見上げながらヘッドセットに喋りかけている女の人の口が、わずかに「悪魔?」と動いた気がした。


「いえ、他には……え? 直接お会いになられるんですか?!」


 びっくりしたような声をあげながら、女の人が俺の方を見る。


「はい……はい……ええ、了解しました」


 女の人が神妙な面持ちで頷いた頃、上空の透明な物体は俺たちの頭上をゆっくりと通り過ぎ、不気味な重低音を残して山の連なる方へと去って行ってしまった。


 天使がすぐ近くにいる────。


 なぜだかわからないが、急に心がぎゅっと重くなった気がした。

 激しく高鳴る心臓の鼓動が、耳の奥でドクドクと木霊する。


『こんなところを天使様に見つかっては大変ですから────』


 唐突に脳内再生される『モンスレ』のシスター・アンジェの言葉。なぜ今、それが思い起こされるのか、全くわからない。耳の奥で重い鐘の音が微かに響き、チクリとした頭痛が突き上げてくる。


 何かを……俺はミストの中で出会った誰かを、天使から守らなければ、と感じた気がする。だからこの場を急いで離れる必要があったんだ、天使に見つかる前に……。


 湧き上がる重苦しい鐘の音が、この思いが真実であることを証明しているかのようだった。



 ◆



「チッ! なんで天使が介入してくんだよ、あったくよお」


 金髪の男がさも面白く無いといった様子で地面を蹴り上げる。


「こんなボロ雑巾、オレの手で締め上げりゃ十分だっつーの!」

「はいはい、一般市民に向かって物騒なこと言わないの」

「ハッ! 天使にお呼ばれするヤツが、まっとうな一般市民なわけねーっての」

「簡単な聞き取り調査をしたいってだけじゃない。カズマはビクビクしすぎなのよ」

「だからビクビクなんかしてねーっつってんだろ!!!」

「どうだかね〜?」


 二人が呑気に言い合いを繰り広げている最中、坂の下からエンジン音が響いてきた。

 見ると、特殊車両が三台、こちらに向かって来ているようだ。前面に『Xenolithゼノリス』のロゴが描かれている。


 どうやら俺は、あれに乗らなければならないらしい。重い全身を無理やり引き上げるようにして腰を上げる。

 逃げ出したい気持ちに駆られながらも、ぐっと堪えて立つ。それを実行しようものなら金髪の男が嬉々として襲いかかってくるだろう。痛みは無いが、全身が重く感じられるこの状態で、ましてや見知らぬこの町で逃げ切れる自信は無い。


 これから、俺はどういう扱いを受けるのだろうか────。




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