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45時限目・戦争終結

 授業の時間だー


 さて駆け足で2年ぶっ飛ばしたが、細々とした戦闘は歴史の授業ではなく、映画で見るなり、平和学で学んだ方が良いだろう。


 この2年というのは日本の歴史の中では転換点と言えるのだが、それは技術的な部分の話であって、表に現れるのは1944年の話だった。


 日本の直接の話としては、阿羅斯加(アラスカ)やハワイから直接北米爆撃が出来る巨人爆撃機が揃い、作戦が実施される事になった。


 同じ様に中型爆撃機がスペインへと供与され、ドイツの工業地帯も爆撃に晒される事になる。


 さらに、それは小型機にも表れ、空母艦載機のジェット化が実現した。


 それを成し遂げたのは、もちろんフライヤー忠八の執念だ。

 忠八自身は残念ながらその成果を目にせず亡くなっているが、どうやら確信があったらしいな。


 そんな彼の遺志を受け継いだ二宮技術陣はとうとうガソリンエンジンを過去の物にするジェットエンジンを世に送り出したのが1942年のことだった。


 そのエンジンを活かす機体開発に尽力した二宮、江戸前の面々は、戦時予算という青天井を背景に開発を加速させ、1943年半ばには全長45m、離陸重量170トンというバケモノ爆撃機「富嶽」を完成させた。

 ハワイからアメリカ西海岸を爆撃して帰り、阿羅斯加からならアメリカ東海岸まで行けるバケモノだ。


 スペインへと供与された爆撃機はより常識的な性能に抑えているが、それでも離陸重量50トンの巨人爆撃機にかわりなく、スペインからドイツのいかなる地域をも爆撃できた。しかも、速度800kmで。


 その登場は、ヨーロッパ戦局をひっくり返すには十分だった。

 アメリカは、阻止できない爆撃によって大統領の威信は失墜した。


 1932年に登場し、日本において実用化されたジェット戦闘機は確かに速度は凄かったが、急な操作でエンジンが焼け、機体のコントロールを失う危険と隣り合わせだった。

 さらに初期にはエンジンの寿命が短く数回飛行したらエンジン交換が必要だった。


 開戦頃には信頼性は向上し、寿命も延びはしたが、燃費の悪さは改善しておらず、あまり長時間飛べる訳ではなかった。


 そのネックを根本から解決した真打と言えるエンジンの登場により、もはやガソリンエンジンは軽飛行機専用と宣告されてしまった。


 ジェットエンジン開発で遅れていたアメリカには、日本に対抗する手段がなく、ヤラレ放題の負け局面丸出しになってしまったのだから、もはや事態打開なんて無理だわな。


 1944年は大統領選挙の年に当たっていたアメリカは、大統領が戦局挽回を叫び反撃作戦を軍に要求し、野党や大連総督府が大統領の弾劾を主張する内戦直前の事態にまでなっていった。


 もはや日本との戦争どころではなかった。


 それでも大統領は戦争を止めようとはしない。


 1944年7月、日本はハワイに集結した中央艦隊によるカリフォルニア湾爆撃作戦を実行に移し、7月12日には迎撃に出て来たアメリカ艦隊を巡洋艦や駆逐艦の飛行水雷(対艦ミサイル)によって瓦解させ、無残な姿を晒す戦艦を戦艦の砲撃で沈め、300機ものジェット機による反復攻撃によってカリフォルニア湾工廠を瓦礫へと変えてしまう。


 この攻撃でメキシコでは反米勢力が勢いづき、独立宣言を行い戦争が勃発する事態となった。


 中央艦隊はさらにサンディエゴも瓦礫に変え、ハワイへと凱旋したのは8月末のことだった。


 アメリカはメキシコ独立宣言で大統領選挙どころではなくなり、大統領弾劾か、それとも対日戦争継続かという論争が盛んになる。

 メキシコ独立宣言に刺激を受けたワシントン州も、戦争離脱を宣言して東海岸に反旗を翻す事になった。


 こうしてアメリカは日本と戦争するどころではなくなり、ワシントン州から開戦からこれまでの夥しい犠牲が叫ばれてる中で、大統領は強権発動の挙に出たが、それはさらに西海岸や南部州を離反させる事にしか繋がらず、大統領は弾劾ではなく強制的な失脚という異例の事態が起こり、1944年11月には臨時政府が発足し、日本との停戦が成立する事になったんだ。


 停戦に当たってマッカーサー総督が日本の立場を半ば代弁する様な形でアメリカ側の内容が纏められ、日本はまったく苦労なく停戦に応じる事が出来たんだ。


 そもそも日本にはごく一部にしか漢大陸への欲望を持つ人物はおらず、本来ならばアメリカと対立する必然性なんかなかったんだが、アメリカ側の勝手な思い込みから対立していたんだ。


 停戦合意の内容には、満州国の承認や独立の保証、アメリカによる漢大陸権益への不可侵が定められたが、日本には何ら不利益が無いんだよなぁ。


 必死に東海岸の政治家や企業家が拘る理由が、日本人には理解出来なかった。

 マッカーサー総督はその辺りを理解していたから、無難に合意内容をまとめ、すんなり合意に至っているのはさすがだ。


 アメリカでは全ての罪をルーズベルトに着せて問題解決を図ることにしたらしい。


 確かに太平洋戦争の開戦理由はまさしく彼による捏造ではあるが、メキシコ併合に関与していたかは疑わしいんだがな。


 こうして、傷口が広がる前にメキシコ独立を認め、19世紀に得たカリフォルニア州などを渡すことなく決着を見る。


 日本にとって重要な裏前の岬(バンクーバー島)についても、完全かつ最終的に日本の領土だという確認が行われる事になった。


 知っているかも知れないが、シアトルにおいてもっとも知られた日本語は「ずんだ」なんだ。もはやシアトル名物と化したずんだ菓子を列島や南大孤島(オーストラリア)へとアメリカ土産に買って帰るくらいには、浸透している。


 もちろん、今や浦前の岬はずんだ生産で樺太と並ぶ産地になっているんだが、その大きな違いは消費地にある。

 樺太のずんだは樺太や日高見(北海道)寒凍(シベリア)で消費されるのだが、浦前の岬産のずんだはワシントン州へと輸出されている。


 アメリカ合衆国の中で、刺し身やずんだを日常の食事に加える唯一の地域になっているんだ。


 いくら国境から近い外国だからと言って、ワシントン州へ行くのはお勧めしない。

 あそこはもはや日本だ。


 それはさておき(閑話休題)


 太平洋戦争はこうして終わりを迎えたが、ヨーロッパの戦争は続いていた。


 スペインが日本から供与された爆撃機「飛龍」を駆ってルール工業地帯を爆撃していたんだが、日本に続いてジェット機を実用化したドイツは、飛龍の爆撃に対抗する様にジェット迎撃機を繰り出し、飛龍にもかなりの損害を与える様になっていった。


 1944年には地中海をイギリス、スペインが席巻している事でイタリアは虫の息だったので放置されていた。


 日本はスペインを経由してボルドー政権へも武器供与を行い、フランス南西部からの反撃に協力していたんだが、あまり芳しくなかった。


 イギリスはロシアからの資源輸入で生き延びてはいたが、十分な反撃力があるとは言えない状況だ。


 東部戦線はと言うと、ジューコフはマンシュタインに手こずり、マンネルヘイムもドイツ領侵攻には決め手を欠いていた。


 ただ、ドイツによるハンガリーやルーマニアに対する工作は完全に失敗していて、ロシア軍トップのトハチェフスキーは明らかにドイツが弱るのを待っていた。


 当時のドイツ軍は、神懸った様な作戦を行うマンシュタインやひとりルフトバッフェなルーデルという超人の存在が懸念材料だったからな。


 そんなドイツもアメリカの支援を失うと急速に失速していった。


 スペインによる工業地帯空襲で戦力の補充が出来なかった事も大きいだろう。


 1945年に入ると一気にロシア側へと形勢は傾き、西方進撃が開始されている。


 マンシュタインがいくら巧みな防衛線を構築しようと、それを支える物資は乏しく、ロシア軍は穴だらけの防衛線を難なく突破する事が出来た。

 

 そして8月15日のベルリン大空襲でヒトラーが行方不明になると、ドイツ国防軍がクーデターを起こし、20日にヒトラーがドイツ南部に逃れて声明を出した時には全てが手遅れだった。


 ドイツは国防軍派と総統派による内戦状態となり、それを見たイタリアは日和見してイギリスへと降伏し、ヨーロッパでの戦争も9月3日には終結する。


 ドイツではまだしばらく内戦が続き、パリを奪還したボルドー政権が介入したり混乱は続くんだが、それはまた世界史で習ってくれ。


 おっと、時間だな。

 

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― 新着の感想 ―
ルーデルさんはどの世界線でも魔王ですねw もしかして、この世界の日本はアメリカ以上の超大国なのですか?!
アメリカとの戦争も無事に終わり、ようやく平和が訪れた。 欧州の方はもう少し長引きそうな気配はしてるけど概ねヨシ!
この世界線の米国も弱い訳じゃないんだけど、日本が強すぎて弱く見える。
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