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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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98/119

98 行き着く先

 幼虫が俺の触手の中で抵抗するように動き回る。

 ここで俺が噛まれてしまうとややこしくなるので慎重に対処する。


(大人しくミルベラを食べてくれー)

「ほら、これがご飯だよ?」


 しばらく悪戦苦闘していたその時、レゴラが幼虫に話しかけ、目の前でミルベラを食べてみせる。

 すると、幼虫が大人しくなった。

 興味を示したのか、ミルベラの前で食べるか迷っているようだった。


「大丈夫なの! ほらなの!」

「これを食べるんだよ」


 レゴラを見習ってイリナとノエルもミルベラを食べてみせる。


(よし。俺も……)

 シャーー!

(えええ! なんで!)


 なぜか俺が食べようとした所で、幼虫に威嚇されてしまった。

 そこで幼虫の心情を見ようと魔力探知を強めに使ってみたら、予想外のものが見えた。


(レゴラと幼虫に魔力的なつながりが出来てる?)


 魔力の糸のようなものが幼虫から伸びレゴラと繋がっていたのだ。


(テイム?……って訳でもなさそうだな。インプリンティングでレゴラを親と思ったとか? まさか村で信仰してから通じわけじゃないよな?)


 信仰を集めて神格化したとか、さすがに無いだろう。

 原因は不明だが、助かったのは事実だ。

 ミルベラを食べてくれれば、この幼虫は草食に戻れる。

 すると、ついにバキバキと音を立ててミルベラを食べ始めた。


「やった! これで良いんでしょ?」

「食べてるの。凄い勢いなの!」

「ヘケ様見て……あっ!」


 レゴラが振り返ってビンゼグルを見たが、力を使い果たしたのか、すでに息絶えていた。

 レゴラは静かに近寄ると、悲しそうにビンゼグルを撫でた。


(おじいさんも心配しているだろうし、戻ろう)

「ヘケ様はどうするの? このままじゃ可哀そうだよ」

「ぐすっ……連れて帰りたい。お願いします」

「……俺が背負って帰るよ」

「あんたもフラフラじゃないの。ビースナスに頼みなさい」

「そうですね。私が抱えていきます」


 急ぐ必要がなくなったのでゆっくり帰ると、俺たちに気が付いたおじいさんとブリゼが駆け寄ってきた。


「無事じゃったんじゃな? 怪我はしておらんか? 良く見せてみるんじゃ」

「大丈夫だよおじいちゃん」

「ビンゼグルの成虫はどうなったんだべ?」

「こちらに」

「これが……ヘケ様……」


 ビースナスが抱えたビンゼグルを見せると、二人は言葉を失った。

 とくにおじいさんの方は、形の違いに驚いているのか、敬っていた存在がなくなったことに動揺しているのか、複雑な顔をしている。


「おじいちゃん、それでヘケ様の子供がいるの!」

「子供じゃと? まさか、これが……ヘケ様の幼虫……?」


 ビースナスの魔道具で虫かごを作って入れていたビンゼグルの幼虫を見せる。

 おじいさんの反応から、やはりこのビンゼグルは変異してしまっているようだ。

 判断できないで二人が沈黙していると、ビースナスが手を上げる。


「差し出がましいようですが、この個体の管理はすでに個人の裁量を越えていると思われます。元よりビンゼグルは国に管理されている生物だと聞きました。ここは国に任せるべきだと思います」

「そんなのヤだ! おじいちゃん、この村で面倒を見るんだよね?」


 レゴラの向けられた視線を避けるようにしたおじいさんがブリゼに尋ねる。


「国に預ければどのような扱いを受けるんじゃ?」

「ビンゼグルはそのほとんどが今では保護対象だべ。研究機関に預けたとしても丁重に扱われるのは間違いねぇべさ」

「おじいちゃん! 嫌だよ。ヘケ様を取らないで」


 レゴラが必死におじいさんに縋りつくが、苦悩するように話し始めた。


「ワシが若い頃にはヘケ様の好物のミルベラはすでに取れなくなっていたんじゃ。村の若いもんは、謝りながらヘケ様を水に沈めて殺したんじゃ。残ってた繭で布を作っても、そんなものすぐ無くなる。村が衰退してどんどん人が出ていく中、村を支える為にはヘケ様の名前を利用するしかなかった。先祖伝来の土地は守るには、それを支えにするしかなかったんじゃ!」

「……じいちゃん」


 ジュラがおじいさんの手を握る。

 その手を握り返して、おじいさんは続けた。


「じゃが、もういいんじゃ。ヘケ様の呪縛に縛られるのはワシで最後じゃ。ビンゼグルは国に預ける。それで終わりじゃ」

「やだやだやだ~!」

(ごめんレゴラ。駄目だよ)


 俺は諦めきれないと幼虫に手を伸ばすレゴラを止める。

 するとブリゼが勢いよく自分の太ももを叩いた。


「わかったべ! オラが国に掛け合ってレゴラがたまに幼虫に会えるようにするだ。三人の住むとこも用意するだよ!」

「いいのですか? ブリゼ様に利益があるようには思えませんが?」

「ああ、建物の中の繭を研究機関に売ってお金にするだ。そこからは商人の腕の見せ所だべ。大船に乗ったつもりでいるだよ!」

「すごいの! 大船なの!」

「本当に会える? ヘケ様を傷付けたりしない?」

「オラが保証するだ」

「良かった」


 その後、ヘケ様の遺体は神社の片隅に埋めることにした。


「さようならヘケ様」

「さようなら……ううっ、痛い! お腹が!」


 別れを惜しんでいると、急にレゴラがお腹を押さえて蹲った。


(お腹! ……まさか!)


 卵を産み付けられていた?

 そんな可能性が頭に浮かんで全員が息を飲んだ。

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