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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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97/122

97 レゴラを追って

(この状況で外に一人でいるなんて危険すぎるぞ。イリナ、ノエル大変なん……)

「うわっ、なんだこれはベトベトでねぇか! せっかくの大量のゼクトパル

の材料が手に入ると思ったのに、これが本当にあの生地になるだべか?」


 レゴラの事を伝えようとした所で、繭を触ったブリゼの声で思考がそれた。


「なにが大変なの? ティト」

(ああ……そうだ。レゴラが一人で森に入っていったみたいなんだ)

「レゴラが森に! それは本当に大変だね!」

「レゴラがどうしたって? あれ? レゴラがいない!」

(イリナ、ノエル、まずはみんなを落ち着かせてくれ。場所はわかるんだ。後は追える)


 イリナとノエルが落ち着かせている隙に、俺は繭に鑑定吸収のスキルを使う。



 鑑定失敗。



(ああ、やっぱりか)


 神社の中はジーズの村の閉ざされた坑道と同じだ。

 つまり、ビンゼグルはもう肉食になっている。

 食べた物に執着するビンゼグルは、次に何に卵を産み付ける?

 レゴラの危険度が上がった。


「ティトどっちに行ったの?」

「ああ、あっちだ。あっちに向かっている」


 イリナが俺を抱えて外に出たので、方向を指さす。

 一番に駆けだしたのはジュラだ。

 それに続く様にみんなが走り出す。

 おじいさんは走れそうにないので、ブリゼに後を任せる。


「私が先に向かいます」


 ビースナスが走る速度を上げた。

 追跡が得意だと言うだけあって、距離がどんどん開いていく。

 俺もティトマークⅡになれば追いつけるかもしれないが、ジュラを置いて先に行くわけにはいかない。


「レゴラ……馬鹿。なんで一人で」

「大丈夫なの!」


 涙を拭きながら走るジュラをイリナが励ます。

 魔力探知でレゴラの無事は確認できている。

 すると、おそらくレゴラの向かっているだろう先に魔力の反応を感じた。


(たぶん、ビンゼグルを確認した。まだレゴラとは距離がある。これならレゴラが接触する前にビースナスが追いつけそうだ)

「良かったの! ビースナスが間に合ったの!」

「そう……か、はぁはぁ、よかっ……た」


 ジュラは体力の限界が近そうだ。

 無理もない。

 あった時点で彼らは食べる物が少なく、軽い飢餓状態だったのだ。


(飢餓状態? レゴラの走る速度は落ちていないよな)


 違和感を感じていると、ビースナスが追いついたようだ。

 レゴラの動きも止まっている。

 隣をみればジュラが限界に近かった。


(イリナ、ジュラを抱えて走ろう)

「わかったの!」

「うわぁぁぁぁぁ!」


 ティトマークⅡになると、イリナがジュラを肩車して走り出した。


(イリナ……。あっジュラ、そこを持つのは止めてくれ!)

「こら! ジュラ! ダーリンのトレードマークを掴むんじゃないわよ。千切れたらどうするの!」

「そんなこと言ったって、うわぁ」


 肩車でスピードアップした俺たちが、ビースナスに追いつくと、レゴラが暴れているのが見えた。


「離して! ヘケ様をお社に返さないと」

「落ち着いてください。一人では危険なのです。皆が来るまで待ってください」


 追いついたので手を振ってイリナがアピールする。


「ビースナス~。追いついたのー」

「もういいから、俺を下ろしてくれよ。あとは自分で歩くから!」


 妹の前で肩車されている姿を見られたくないのか、ジュラが慌てて下ろせと言って来た。

 降りたジュラはレゴラに駆け寄って拳骨を頭に落とした。


「レゴラ、あぶねぇだろ一人で森に入るなんて!」

「だって、お兄ちゃん……」


 涙目になるが大人しくもなったので、ビースナスがレゴラを離した。


「では、ビンゼグルの確認に向かいます。私の後ろから離れないでください」

「ヘケ様を傷つけないで。お願い」


 ビースナスが出したナイフと魔道具を見てレゴラが慌てる。


「害するつもりはありません。守るために行動します」


 レゴラは安心したようだが、ビースナスは傷つけないとは言わなかった。

 すべてはビンゼグル次第だ。

 魔力の反応から、いる場所は滝の裏側のようだ。


「滝の裏に洞窟があるなんて知らなかった。なんで俺に言わなかったんだよ」

「秘密の隠れ家だったの」


 空間は意外にも広く、奥に入ると暗くなる。

 ビースナスがランタンを付けると、奥にそれはいた。


(これは予想していた形じゃないな)


 その姿はブリゼの説明した姿ではなかった。

 羽虫と言われたていた体は、実際は動物のニワトリに近いシルエットで、真っ白な体にはふわりと短い毛に覆われている。

 空気を含んだような羽は二重になっていて虫と鶏の二つの翼がある。

 カマキリのような爪は短く、爬虫類の手のようにも見えた。

 不自然な生き物の集合体。

 キメラと言う言葉が頭に浮かんだ。

 しかし、その体には羽も爪も半分が千切れている。


「ヘケ様は私がバフンに襲われたところを守ってくれたの。危険じゃないの。本当よ」


 レゴラが庇う様に前に出ると、片方だけになった羽を威嚇するように羽ばたかせる。

 その時、お尻から丸い球が出るのが見える。

 卵を産んだのだ。


(産み付けるんじゃなく、その場に生んだ? すでに変異が起きているのか?)


 卵の不自然な大きさにも驚く。

 そもそも、神社の中の繭を収納していたであろう並べられていた木の箱は、前世の繭を入れる箱と大きさは変わらなかった。

 成虫になったから大きいのではなく、すでに卵の時点で大きくなっていたのだ。


(千の小さな卵を産むんじゃなく。数を減らして大きくしたのか)


 レゴラは庇っているが、ビンゼグルと意思疎通が出来ているようには見えない。

 バフンから助けたと言うのも偶然ではないかと思えるのだ。


「あっ、卵が孵るよ」


 パキパキと音を立てて卵が割れる。

 中から出てきたのは半透明なツルンとした体に、長い尾びれがついた幼虫だった。

 生まれた幼虫は、すぐにビンゼグルへと這って行く。

 しかし、それは親を求めたものではないことはわかっている。

 俺はその幼虫を掴み持ち上げた。


(ここで負の連鎖を断ち切るよ。イリナ、ファルステンを出して。小さくていいから急いで)

「わかったの……ファルステン」


 イリナが小さな苗木をイメージして出す。

 俺はそれに生産でミルベラを根付かせて幼虫を上に降ろす。


(食べてくれ)


 願いを込めて俺たちは幼虫を見守った。

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