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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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96/119

96 成虫の脅威度

 おじいさんの慌て具合はただ事では無かったが、ビンゼグルが成体になる事の脅威がわからない。


「落ち着いたください。今は事態を把握することが重要です。ビンゼグルが成虫になると具体的になにが起こるのですか」

「わからんのじゃ。ただビンゼグルを成虫にする時は、ミルベラの木の葉と一緒に閉じ込めて、絶対に開けてはならんと言われていたのじゃ。開ければ恐ろしい事が起こると」


 おじいさんは怯えるばかりで、詳しい事はわからないらしい。

 ビースナスの言葉に反応したのはブリゼが代わりに話し始める。


「ビンゼグルは鎌のような爪を持った羽虫だ。大きさだけでも十分に危険だが、一番やべぇのは、卵を生物に生んだ時だべ」


 ビンゼグルは卵から孵って最初に食べた物で、草食になるか肉食になるかが決まると言う。

 肉食化したビンゼグルの幼虫は狂暴な上に食欲も凄まじく、人すら襲うようになるので危険なのだと言う。

 さらに、肉食化すると成長から繁殖までのサイクルが短くなり、数が爆発的に増えるらしい。

 しかも、草食で孵ったビンゼグルでも、習性的には動いている物に産み付けやすい上に、最初に食べた物に固執する性質があり、生物を襲う様になってからは草食に戻すことも難しいと言う。


「一度で千以上の卵を産むだ。ビンゼグルの養殖に失敗して、国が一つ滅んだって話もあるほどだべ。本来なら厳重に管理されてるはずなんだべが、利益の大きさから勝手に繁殖させる村が昔はたくさんあったんだべよ」

「おじいさん。この村でビンゼグルに食べさせていた植物はないのですか?」

「もう村には生えてねぇ。それもこの村でのヘケ様の衰退の要因なんじゃ」


 その話しを聞いてすぐに俺は動く


(まずは繭から成虫が出てどれくらい経っているのかの確認だな。俺の魔力探知で感じる残留魔力の感じでは、まだ出てからそんなに経っていないはずだ)


 俺の行動で何がしたいのか察したビースナスも繭を調べる。


「繭から出る為に消化液で溶かされた部分がありますね。渇き具合から考えても、それほど時間が立っていないようです」

「ビンゼグルは生まれてから羽を乾かして飛び立つまで、約半日はかかる筈だべ」

「屋根に穴が開いていますので、そこから出たのでしょう。繭を出た後も暗かったので、この建物まで繭だと勘違いしたのでしょうか? 穴に雪が積もっていないので、この建物から出たのは雪が降り始めてからのようです」


 今も外ではパラパラとだが雪が降り続いている。

 俺たちが来てから出たと言うのなら、この建物の前で騒いだ事も繭から孵るきっかけになった可能性はありそうだ。

 今更ながら襲われなくて良かったと思う。


(俺のやるべきことは一つだな。ゼクトパルがビンゼグルの糸で出来ているなら鑑定吸収で分かるかもしれない。イリナ、ブリゼさんに布を出すように言ってもらえるか?)

「わかったの」


 布を出してもらい、買い取った上で鑑定吸収を使う。

 すると、一つだけ植物の鑑定が出来た。



 鑑定成功

 結果:ミルベラ繊維

 ビンゼグルの中でミルベラが消化され、強度の高い成分だけをスキルで再構成された繊維。

 元の自然由来の成分と共に強い魔力的要素を含んでいる。

 ミルベラ繊維を吸収しますか? YES\NO?



(よし! まずは第一弾会突破だな)


 ビンゼグルの話を聞いて、前世の糸を作る虫を俺は思い浮かべた。

 糸の主原料になっている物が食べた植物なら、鑑定吸収が使えると試したが、見事に成功だ。

 後の問題は、これを吸収してスキルを得られるかどうかだ。

 鑑定の結果では、糸はスキルによって作られている。

 魔力的な要素を帯びると書いてあるところから、もしかしたら古代の技術で人工的に糸を作る生物に変えれたのかもしれない。


(心情はともかくとして、今は有難いな。もし自然スライムに近い性質を持っているなら、吸収出来るはずだ)


 祈りながらYESを頭の中で押す。

 その後、すぐにスキル欄を確認する。


(どこに格納されてるんだー。あっ、あった! ミルベラ生産があるぞ)

「やったの!」

「どうしたんだべ?」

「ダーリンがミルベラを生産できるようになったのよ。さすがは私のダーリンだわ」

「ミルベラを生産? なに言ってるかわかんねぇべな」

(とにかく、あとはビンゼグルの位置を確認するだけ、って、んん?)


 俺の魔力探知がこの建物から遠ざかっていく影を捉えた。

 俺はすかさず注視するが、そこには予想外の者が映し出された。


(ええ、レゴラ!)


それは森の中を一人で走るレゴラだった。

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