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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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90/121

90 もう一度体験しようか

 三日目、今日でファズの商いも最後になる。

 村の野菜を買い取って、町に売りに行くために戻ると言う。

 俺たちも自然スライムの探索も世界樹の情報収集も終わっているので、ファズと一緒に村を出るつもりだが、方向が逆なのでファズとも今日でお別れだ


「突き合わせてしまって申し訳ありません」

「いいよー。お菓子作りも楽しいし」

「早く食べたいのー」


 今はマノンの家でイリナとノエルとお菓子作りを手伝っている。

 作っているのはシャップと言う、カボチャに似た味の果実を練り込んだクッキーだ。

 今日出ていくファズに渡す為だとマノンは言っていた。


(結構かかりそうだから、外の様子を見てくるよー)


 俺も手伝っていたが、台所はそこまで大きくないので、俺は遠慮して外に出た。


(ついでだからファズさんの様子でも見てるかなー)

「あっ、ダーリンに高い高いされた奴がいるわよ」


 見るとジャケンともう一人の若者が歩いている。

 若者の方は大き目の芋のような野菜を抱えている。

 ファズに売りに行くのだろう。


「あんなにケンカ腰だったくせに、お金は欲しいのねー」

(持ってるのはジャケンじゃないだろ?)

「あの二人には上下関係が見えるもの、大方自分で売るのはプライドが許さないんじゃないの」

(なんていうか、難儀な性格だなー)


 ファズのところに着くと、村人でごっちゃ替えしていた。

 空になった馬車には山盛りの野菜が乗せられている。

 ビースナスも馬車で出発の準備をしていた。


「おお、ティト殿にエステル殿。良かった、ここを立つ前に挨拶したかったのです」

「もう出るの? 早いんじゃないかしら?」

「皆さんの野菜がいつもより多いので、少し早く出ようと思うのですよ」

「娘には挨拶しないのかしら?」

「……マノンさんの事ですか? 今日の朝にお礼は済ませていますよ?」

(あっ、これクッキーの事言ってないんじゃないか?)

「商人。まだ居るわよね?」

「今いる人たちから買い取ったら、すぐに出ようと思います」

(やばいな! 急いでマノンさんに伝えないと。エステル何とか足止めして!)

「ちょっと! ダーリン!」


 エステルに足止めを頼んで俺は、急いでマノンの元に戻る。

 クッキーが焼きあがったようで、イリナとノエルがのんびり試食していた。


(イリナ! マノンさんに伝えて! ファズさんが行っちゃうよ!)

「むむん! たいへんなの! ファズ出るの! 急ぐの! マノン」

「ええ、ファズさんが! 袋に入れるから待ってください」


 クッキーを持ってマノンと家を出る。

 すると、さっきと逆方向に歩くジャケンと若者が視界の端に見えた。

 ジャケンは笑顔だが、若者の方は青い顔をしている。


(なんか変だな)


 咄嗟に魔力探知で感情を読み取ると、若者は怯えと言うか罪悪感のようなものを持っていた。

 そして、ジャケンの方から伝わったのは邪悪な意思だ。


(少し待ってイリナ)

「どうしたのなの?」

「? ティトさん?」


 俺がジャケンに近づくと、気が付いたジャケンが警戒したように身構える。


「なっ、なんだスライム。俺に近寄るんじゃねぇ。俺はただ野菜を売っただけだぞ」

「野菜を売った? ジャケン、畑の手伝いなんてしたことないじゃない。野菜も売りに行った事も無いでしょ」

「うっ、売ったのはベンだ! 俺は付き添いだよ」

「ベン? どうしたの顔色が悪いわ!」

「マノンさん実は……」

「黙れよベン! ――って離せスライム!」


 ベンに掴みかかろうとしたジャケンを止める。

 こいつは黒だ。

 ならやる事は決まっている。


(今度は全力でやるよ! ほうら、高い高ーーーーーい)

「うわああああぁぁぁぁ…………」 


 凄いスピードで空中に投げたジャケンの姿が、あっと言う間に小さくなる。

 全力で投げると、こんなに飛ぶのかーと感心していると……。


「…………ぁぁぁぁぁあああああああ!」


 落ちてきたので受け止める。

 一回で気力を使い果たしたのか、ジャケンはすでにグッタリだ。


(……っと言うか、漏らしてるなー。高所恐怖症にでもなったかな?)


 グッタリしたジャケンを指さしてイリナが宣言する。


「次は受け止めないの! 嫌なら話すの!」

「ひぃっ! わかった。話すからぁー」


 ジャケンの心は折れたようで素直にすべて話した。

 ファズさんに渡したのは、この村で取れる芋だった。

 そして、売ったのではなく差し入れに渡したと言う。

 痛んでいるので早めに食べるように、と一言添えて。


 芋はこの地域では定番の焚火で焼いて食べるオヤツだが、その中にプロディと言う爆発する粉を大量に入れたと言った。


「大変だわ! そんなのファズさんが死んじゃうじゃない! 早く知らせなきゃ!」

「急ぐの!」


 馬車の止めてある広場まで走ると、そこにはもうファズの馬車は無かった。


「ごめんなさいダーリン。事情を説明したんだけど、受け取れないって頑なになっちゃって止められなかったわ」

(ビースナスに事情を説明して追いかけよう。マノンさんも乗って!)

「ボクが説明するね」

「マノン乗るの!」


 幸い馬車の出発の準備は終わっていた。


「ビースナス追うの!」

「任せてください。追跡は得意分野です!」


 轍を削り取るような勢いでフロントが大地を蹴る。

 馬車は勢いよく加速し、ファズさんに追いつくために走り出した。


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