表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/119

84 酵母の行方と

「あれ? コロ? どこに行ったの?」


 案内された場所は菜園の端にある茂みだ。

 ビビが茂みに向かってコロと必死に呼びかけているが、なんの反応もない。

 コロはスライムの名前なんだろう。

 俺も魔力探知を使って一緒に周囲を探してみる。


(それらしい魔力の反応はないなー)


 徐々に範囲を広げながら見ていくが、それらしい魔力は感じない。


(ん? えっ、これって……)


 そこでスライムらしい魔力を感じる。

 集中してみると、そこは例の魔道具の部屋だった。

 砂時計の上に乗せられたスライムが必死に逃げようとして、案内してくれた時のシスターが押さえつけている。


(どういうことだ? イリナ、ちょっと俺を抱えてくれるか)

「? どうかしたのなの?」

「イリナちゃん? なにかわかったの?」


 イリナに抱えてもらった後に、ビースナスを探して、そこに連れて行ってもらう。

 ビースナスは年配のシスターの部屋で話を聞いているみたいだった。

 部屋に向かうとビビも付いて来ていた。


「ビースナス、ティトが話しなの!」

「イリナ様? ティト様、何かわかったのですか?」

「ダーリンが魔道具の部屋に行きたいといってるわ。さっさと許可をもらいなさい」


 ビースナスが話していたのは、院長だったようですぐに許可を貰い、魔道具の部屋に向かう。

 部屋について扉を開けると、シスターが驚いたように振り返った。


「コロ! やめて!」

「ビビ、どうしてここに! やめなさい。これは大事な酵母なのですよ」

「違うわ。コロはただのスライムよ。ああ、こんなに赤くなっちゃって……」

「少し落ち着いていただけますか」


 ビースナスがビビとシスターの間に入って止める。

 ビビはスライムを守るように抱きかかえて距離を取った。

 コロと呼ばれたスライムは赤い体をしていて、とても小さい。

 大きこそ前に魔力探知で見た、苔むした塊と同じくらいだが、魔力の質が全くの別物だ。


「それは酵母です。ジュジュが『パンをビビが食べずに捨てている』と言っていたので、場所を確認しに行ってみれば、このスライムが居たのです。まさか酵母を盗んだのがビビだったなんて……これは許されることではありませんよ」

「ぬ、盗んでなんていないよ。コロは茂みで弱っている所を見つけたんだもん。パンだって捨てたんじゃなくてコロに上げたんだもん」


 どうやら腹ペコの理由は、自分のご飯を上げていたからなのかもしれない。

 ジュジュの発言から推察するに、スライムはパンは食べていないようだが。


(まあ、消化力が弱いからパンは食べられないよな)

「スライムが酵母とはどういう意味ですか?」


 ビースナスが鋭い視線でシスターを見る。

 シスターも状況に混乱しているようで、素直に話し始めた。


「……酵母の入った液体を、そのスライムに吸わせた後に、この魔道具で不純物を抜いて、酵母を引き継いでいたのです。だから、この魔道具にそのスライムを乗せれば、酵母に戻るはずなんです!」

「ティト様、本当かどうか確かめられますか?」

(確かめる? スライムを鑑定すればいいのか?)


 とりあえず、コロのところに行って鑑定吸収のスキルを使う。



 鑑定成功

 結果:自然スライム【ヤーマ】

 魔道具により酵母と分離され、雑多なものを抜き取った為に進化しきった自然スライム。 

 寿命を消費しており、根付きが始まろうとしている。



(このスライムは【ヤーマ】の自然スライムみたいだね。エステル説明してくれる?)

「ダーリンの頼みならお安い御用よ」


 俺にウインクした後に、エステルがわかったことを説明する。

 話が終わるとシスターが青い顔をで叫ぶ。


「そんなはずはありません。液体を吸わせて、もう一度魔道具に乗せれば……」

「無理ですね。そもそもがこの魔道具が原因でしょうから。この魔道具、逆さにセットされています」

「逆さ? まさか!」

「そうです。逆さの魔道具で酵母が抜き取られ、ヤーマだけが残った。それが原因かはわかりませんが、酵母がスライムに戻って部屋を抜け出したのでしょう」


 そこで思い出す。

 初めて酵母を見た時に、絞り出されていた液体こそが、スライムの中の酵母だったのだ。

 ビビは赤くなったと言っていた、抜け出した時はまだただのスライムだったのかもしれない。

 シスターが酵母に戻そうとして、液を飲ませて魔道具に乗せたことで、完全な自然スライムに進化してしまったのだ。

 鑑定ではコロに酵母の成分は残っていなかった。

 あれが合成と継ぎ足しで維持されていたのなら、もう酵母は失われてしまったことになる。


(絞り出した液体はどうしたんだ? それがおそらくは酵母の塊だぞ?)

「絞った液体はどこなの?」

「絞った……ああ、あれは」


 シスターが走り出して、俺たちも追いかける。

 庭園の一角の生ごみを捨て場でシスターが呆然と立ち尽くす。


(あー。生ごみとして捨てちゃったのか)


 ここで俺は考える。

 鑑定吸収ならかなり低い確率だが、捨て場に残った酵母を救出できるかもしれない。 


(スキルの吸収は、直接食べるわけじゃ無いんだけどなー)


 正直、抵抗はある。

 シスターに目を向けると、自分の仕出かしてしまった事に顔を青くして涙を流している。


(イリナ、生ごみから吸収してもいい?)

「ティトがするならいいの。いい事なの」

「ダーリンが優し過ぎて私は辛いわ。でも素敵」


 俺は生ごみの山にスキルを使った。

 すると、捨てられてた生ゴミとカビらしき物がどんどんリストとして出てくる。


(多いなー。ってこれか!)



 鑑定成功

 結果:酵母【ミューズ】

 研究によって作られた酵母。

 ワインを美味くする為だけに合成されたスライムから搾り取られた酵母。

 長い研究で凝縮されているため、自然スライムに近い存在にまでなっていた。

 酵母【ミューズ】を吸収しますか?

 YES/NO?



(YESっと、あっ、スキル増えたっぽい)


 幸運にも酵母が自然スライムに近い存在になっていたおかげで、そのままスキルを手に入れられた。

 これで酵母は復活させられる。


「ティトはいいのなの?」

(えっ? ああー)


 たぶんイリナが言いたいのは、酵母を復活させれば別のスライムが酵母の苗床にされるかもしれないと思っての事だろう。

 だが、苗床になる事は不幸だとは感じなかった。

 あのスライムが魔道具から逃げようとしていたのも、魔道具を嫌ってというよりビビに会おうとしていたからだったような気がする。

 前世の記憶がある俺ですら、初期で苗床になったらなったで、納得していた気がする。

 良くも悪くも、スライムとはそういう存在なのだ。


 酵母をシスターに渡すと、涙で何度もお礼を言われた。

 ビビの自然スライムは寿命が来ていることをビビに伝えると、悲しい顔をしたが、庭園に根付かせる事になった。


「お別れじゃないよねコロ」

「形は変わっても一緒なの」

(いよいよか)


 あれから三日たち、スライムが根付くようなので見送り(?)をした。

 初めて自然スライムが根付く様を見たが、仰々しい事は一つもなく、静かに地面と一体化して木の苗木へと変わった。


「ティト!」


 イリナが俺を抱き上げて強く抱きしめた。

 俺たちにも、いつかこんな時が訪れるのだろうか。

 そんなことを考えて、俺もイリナを抱きしめ返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ