68 レオントラとの共闘
「おや? ずいぶん早く戻ってきたんだね。まだ狩りをするのかい?」
小屋の外で水を撒いでいたシリカさんが俺たちに気付いて驚いた顔をする。
そこにイリナとノエルが捲し立てるように話し始める。
「違うの! 事件なの!」
「おばあちゃん。商人がレオントラに襲われたって言って撃退しようって事になっちゃったんだよー」
「ちょいと落ち着きな! 中で話を聞くから、ほら入った入った」
促されるままに入りテーブルの前に座ると、シリカさんが水を出してくれた。
イリナもノエルもそれを一気に飲む。
すると、一息ついたようで落ち着いた。
「言っておくけど、私は別にレオントラが撃退されたってかまわないのさ。それくらいでアイツが人間を敵対視したりしないだろうしね。悲しい別れ方ではあるが、自然に生きてりゃそんなもんだよ」
そういって、シリカさんは何でもないように肩を竦めた。
「それよりも、もし商人を襲ったのが別の魔物だった時の方が危険だよ。魔物によってはちゃんと準備しないと被害が出るからね。討伐隊に参加した村人はサムになんとかしてもらうにしても、危険な事には変わりないさ」
(そうか、レオントラが犯人じゃないなら、商人を襲撃した魔物が他にいるんだ!)
「レオントラに会うの! 話は必要なの!」
(とりあえず、探してみようか。魔力探知を広げてっと……あっ!)
シリカさんの言う通り別の魔物がいた様だ。
二つの大きな魔力がいま、お互いを攻撃するような動きをしている。
そして、冒険者らしき魔力の反応もそこに近い位置にある。
(レオントラが別の魔物と戦ってるみたい。しかも、討伐隊も近いよ)
「すぐ向かうの!」
「待ってください。何があったのですか?」
事態を理解できないビースナスとシリカさんにイリナとノエルに説明してもらう。
「なるほど、急いだほうがいいですね。イリナ様は認識阻害の魔道具を使っておきましょう」
「わかったの。ティト、マークⅡなの!」
(OKー。エステルは危険だから疑似枝に入ってて)
「ダーリン、無茶はしないでよね」
エステルが入るのを確認して向かう。
俺の魔力探知で正確な場所がわかるため、冒険者よりも早く現場に着きそうだ。
二体はかなり激しく争っていたようで、少し離れたところからすでに木々が折れるような音が聞こえている。
そして、目の前にレオントラが弾き飛ばされてきたことで、相手の姿が確認できた。
レオントラの足の傷がまた開いたのか血が滲んでいる。
「どうやら、バーバリヴルのようですね。なるほど、レオントラが苦戦したのは毒のせいですか。気負付けてください。バーバリヴルは尻尾に毒の棘があります」
レオントラを追って目の前に現れた翼竜が、ギィーと威嚇するように鳴いた。
そして尻尾の部分を左右に振りだす。
ビースナスがすぐに戦闘態勢に入ってイリナを庇う様に前に出る。
しかしそこでバーバリヴルが何かに反応するように、顔を別の方に向けて飛んでいった。
(あいつ討伐隊の方に向かったみたいだぞ)
「不味いですね。このままでは被害がでます」
「すぐにむかうの!」
そう言って向かおうとするイリナの前にレオントラが跪いた。
(えっ、なに?)
「乗るの!」
混乱する俺をよそにイリナがレオントラにまたがる。
すると、すぐに立ち上がってバーバリヴルの方に走り出した。
(えっ? えっ? 判断早くない? イリナは思い切りが良すぎだよ)
「いけいけなのー」
「お待ちくださいイリナ様!」
これにはビースナスも驚いたようだ。
良かった、俺の反応は普通だった。
「もう一体来たぞ! あれはなんだ! 人が乗っている?」
「見た事ない魔獣だ!」
認識阻害の魔道具は跨ったレオントラにも作用しているようで、冒険者たちが混乱しているようだった。
「助っ人なの! 戦うの!」
「なんだかわからないが助かる! 俺たちを襲ったのはバーバリヴルだったんだな!」
「そうなの!」
(断定しちゃうんだ……)
俺も実際そうだとは思う。
冒険者が見たのは助けに入ったところなのだろう。
そして、シリカさんに初めて会ったときにすでに怪我をしていた事から、レオントラがここに残っていたのは、このバーバリヴルが原因で間違いなさそうだ。
レオントラは冒険者と一緒に戦ったことがあるのか、弓矢の射線に入らないようにうまくバーバリヴルを牽制しているようだ。
グギャーーーー!
その動きに焦れたのかバーバリヴルが急転してこっちに来た。
(やばい! ハルト生産!)
俺はイリナが噛みつかれる思って、とっさに飛び出して固い木を生成する。
予想以上にうまくいったみたいで、バーバリヴルの口に縦に枝がハマり込んで噛みつきを防ぐ。
『ダーリン危ないわ! 魔道具を使って!』
(えっ!)
ギン!
エステルの声にとっさに魔道具に魔力を流した。
そして、即座に出現した盾がバーバリヴルの棘を止める。
(あっぶなー! 長期戦とか絶対被害が出るよ。全力で止めを刺させてもらうよ。これでも食らえ!)
俺はバーバリヴルの開いた口に生産できる限りすべての毒の植物を生産して突っ込む。
植物毒に限っては間違いなく俺は世界最強なのだ。
効果はすぐに表れて、バーバリヴルが力なく地面に落ちた。
「ティト凄いの!」
「これはえぐいですね」
「ダーリンを攻撃したのだもの当然の罰よ!」
(ちょっとやり過ぎたかも……)
地に落ちたバーバリヴルは紫色に染まっていた。
―変更―
村の冒険者ギルドの出した依頼内容を「討伐」ではなく「撃退」に変えました。
エステルが空気だったのでセリフを足しました。
―お詫び―
ストックもなく勢いだけで書いているので、度々修正や変更が入ります。
作者のモチベが切れないように「まず投稿する」を優先している為ですので申し訳ありませんがご了承ください。




