6 この先生、キノコ
(なんとか無事に新しいキノコの群生地に着けたな)
思った以上に移動に苦戦した原因の毒キノコの傘を地面に置く。
かなり疲れはしたが、移動の途中でしたキノコに擬態(?)に、少しの手応えを感じる事は出来た。
新しく着いた群生地は期待していたほど種類は多くなかったが、来る前から他と明らかに違う点は見つけていた。
(近くに来るといよいよ凄いな⋯⋯)
直前に移動してあらためて観測する。
森の中に浮かび上がるような純白。
倒木から生えた柄は力強く、均整の取れた傘は上品で、ヒダの部分は上質な絹の様だ。
(綺麗なキノコだけど、なにより凄いのが魔力の量だよな)
魔力探知で見ると姿が見えなくなりそうなほどに輝いている。
強い魔物を彷彿とさせるほどの内包魔力。
(なぜか殺しの天使を思い出したけど、コレは毒キノコじゃないよな?)
そのキノコからは魔力探知では毒々しさは伝わってこない。
むしろその逆で、思わず齧りつきたくなるような感覚に襲われる。
とにかく目が離せないのだ。
(どうしようかなコレ。食べても大丈夫なんだろうか? こんなに齧りつきたいキノコなのに傷や齧られた跡が一切無いんだけど⋯⋯)
スライムの直感は食べても良いと言っている。
食べるべきだとすら思えるほどだ。
しかし、それほどの感覚を覚えるキノコが無傷の状態であるのは、正直不気味で仕方がない。
(さすがに食べた瞬間に即死とかは無いよな? ああー! ステータスさんの『あなたは死ぬ』が頭をよぎるー。自分を切り離してその部分だけに食べさせるとか出来たら良いのに!)
魔力が満タンで外敵もいない状態がいつまでも続くとは限らない。
元より進化のために毒キノコに挑むのは決めていたのだ。
迷いに迷った末に覚悟を決め、ほんの少しだけ吸収してみることにする。
(うっまぁぁぁぁぁぁあい!)
念の為に魔力吸収だけをしたはずなのに、そのキノコは蜜をはるかに超える美味さがあった。
それと同時に頭の中に何度もレベルアップの音が鳴り響く。
すかさず、今度は消化をするために端を齧ると、弱い消化力にも関わらずスッと溶けて吸収され、さらにレベルが上がる音が響く。
(美味すぎる。なんか凄いものを食べてるぞ! なんだコレ! なんだコレ!)
驚愕しながらすごい勢いで上がったレベルを確認する為にステータスを開く。
種族: 森スライム【甘露】
レベル 24
体内魔力量 880
スキル
生産 F
スライム蜜生成 G
吸収 F
消化 H
貯蔵 E
粘力 F
魔力探知 E
スキルポイント 1
ユニークスキル
現状把握 A
進化の条件が整いました。
進化しますか? YES\NO
(レベルが前に見たときより一気に14も増えてる! ステータスもあがってるし、スキルポイントも増えてるじゃん! しかも⋯⋯)
ステータス画面の一番下に“進化しますか?”の文字が出ていた。
前回は迷わずに進化してしまい今の困った状況になっている。
さすがに学習したので、進化後を確認できないか試みる。
(進化先を確認させろー! 出ろー! 進化先出ろー!)
画面をいじってみたり、頭の中で進化先の表示を念じたすると、あっさりと進化先を表示することが出来た。
進化後:
自然スライム【極上旨蜜キノコ】
自然スライム:
大自然スライム【倒木激旨キノコ】を取り込んだ事で進化可能になったスライム。
自然と共存を選んだ森スライムの上位種であり、空気中の魔力のみを取り込み成長する自然共存型のスライム。
スライムとして移動しながら空気中の魔力を吸収して生き、一定量が溜まるとその地に根を張り自然の一部になって生きていく。
【極上旨蜜キノコ】:
自然スライム【倒木激旨キノコ】を取り込んだことで完成した、甘みと旨味を極めた【甘露】の上位種であり、網焼きで焼いた香りすら数キロ離れた人をも魅了する。
キングオブおかず。
(⋯⋯違う、そうじゃない! 美味しくなる以外の選択肢をくれよ、俺は食べられたくないの!)
振り返って八つ当たりでキノコとなったスライムを睨むが、反応することはなかった。
(あっ、齧った部分がすでに再生してる。この再生力がスライムの証明だな。完全にキノコになってるんじゃなく、あくまでスライムなのか?)
反応が無いので意思があるのかはわからない。
ただそこにある姿はまさに自然の一部といった感じだ。
(自然の一部になって生きていくかー。これが森スライムの終着点なのかなー)
進化はキャンセルしたものの、森スライムの行き着く先を垣間見た形になる。
スライムの体が精神にも影響しているのか、自然の一部になることに恐怖は感じないかった。
しかし、言い様のない寂しさが胸の中に湧いては消えていくのを感じた。
気軽に評価の方をお願いします。
反応があるのが何よりうれしいです。




