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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
三章

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48 水路掃除三日目

 ついに最終日。

 同じ様に噴水前に集まるが、冒険者達の顔つきがあきらかに変わっていた。

 昨日の出来事が心構えに影響をあたえたのは確かだ。

 ダレンさんがどうしてこの依頼を進めてきたのか、理由がわかった気がする。


「では説明をします。今日の水路掃除はこの噴水に繋がっている水路の大本の部分の掃除です。大変重労働ですので、覚悟しておいてください」


 そう言って職員のお姉さんが歩き出す。

 門を越え案内されたのは、城の手前にある深い堀だ。

 職員のお姉さんの説明では、山から流れてくるゴミや泥を堀に沈殿させ、綺麗な水だけを流す設備のようだ。

 二つあるうちの一つがすでに堰き止めてあり、中のドロが見える。

 あれをかき出す作業だ。


 水を抜いたとはいえ、大量に溜まったドロを出さなければならないのは重労働だ。

 ハシゴから堀に入った冒険者は腰近くまでドロに沈んでいる。

 ヘドロ化しているのか、鼻をつまんでいる冒険者が多い。


(イリナは体が小さいから、もう少しドロが出された後じゃないと入れないな)

「くさいのー」

「ボク入りたくないかも」


 お姉さんが次々に冒険者を指名していく。

 ノエルは大きいので堀の中の担当のようだ。


「わー、やだなー。でも仕方ないよね」


 獣人は鼻が良いようで、珍しくノエルは本気で嫌がっていた。


 始まった作業の内容は、はっきり言ってバケツリレーだった。

 先頭がかき出してバケツに入れたドロを、次々に受け渡して外まで出す。

 そして、最後にバケツをロープで引っ張り出すのが、上に残ったイリナ達の仕事だ。


 バケツは堀に溜まったドロの量が多いため、効率を上げるべく通常の三倍以上の大きさがある。

 それに並々とドロが入っているので重量はかなりのものだ。

 バケツをロープで引張上げる係の子達はその重さに悪戦苦闘していた。

 上に残っているのは体の小さい子達ばかりなので当然だ。

 しかし、ティトマークⅡの状態のイリナは、俺の力を使いロープを軽々と引き上げていく。


「うぐぐぐ。おっ、重い」

「まかせるのー。 手伝うのー」

「君には無理、ってえええー!」

(これ目立ってる? これくらいならまだ普通だよな?)


 驚いて尻もちをついた少年を見ながら焦るが、この世界には加護があるので、見た目以上の怪力も珍しくないはずだ。

 たしか、ダレンさんのパーティーのピノカさんは〝怪力〟の加護持ちだと言っていた。


「うー。臭いし早く終わらせちゃおうー」


 堀の中ではノエルも獣人らしい力強さを発揮して、どんどんとドロをかき出していく。

 そのスピードは、他の参加者より早い。


(ウチの娘達はたくましいねー)

『食いしん坊なだけはあるわねー』


 臭いのが嫌なのか、擬似枝から出てこないままエステルが感想を伝えてきた。


「うわあ! 魔物だ!」


 堀の中から悲鳴が上がる。

 山から水を引き入れているので魔物も入り込んでいたようだ。

 所々で、ドロから飛び出した魚型の魔物が飛び跳ねている。

 ドロに汚れるのを嫌って武器を持ち込んでいない冒険者が多く、中は大混乱だ。


(これも学ばせるためにあえて言わなかったな)


 お姉さんを見るが特に反応はない。

 本当に危険な魔物がいたら、すぐに助けは来るだろう。

 俺はこの三日間、魔力探知で周囲をちょくちょく見ているが、隠れてベテランの冒険者が見張ってくれている。

 ダレンさんもしっかりちゃっかりメンバーに入っているようで、護衛しながらギルドの手伝いでもお金を貰っていそうだ。


(さすがはベテラン、ってところなのかな?)


 そうこうしてる間に魔物も片付けられていき、量が減ったことで上下の人員が入れ替わる。

 ノエルが少し付かれた顔で堀から上がってきた。


「うー。臭いよー。早く水浴びしたいー」

(しょうがないなー。ほら)


 俺はこっそりと大き目のグラシ-の実を出す。

 中に真水がたっぷり入った実で、水筒代わりによく携帯される実だ。

 そこに吸収で細かい穴を開けて簡易のシャワーが出るようにして渡す。


「わあ、ありがとう」


 ノエルが頭の上に持ち上げて、穴を下にして水を浴びだした。

 それを他の子が羨ましそうに見ているが、全員に出すわけにはいかないので我慢して欲しい。

 参加者の中には魔法で水を出せる子もいるようだが、疲れていてそれどころではなさそうだ。


 ノエルを見送ってイリナがハシゴを降りていく。

 堀についたら、ドロの深さは足首より少し上くらいになっていた。

 全てをかき出すのは無理だろう。

 そこまでの作業にはならなさそうだ。


「えーい。なのー」


 イリナがどんどんとスコップでドロをすくってバケツに入れていく。

 疲れは確実に溜まっているので、イリナのアシストは強めだ。

 そこからは一気に掃除は進んで、お昼前には底が見えるようになった。


「いつもより早いですが、水路の掃除をここで終了します。三日間お疲れ様でした」


 お姉さんの宣言で俺達が堀を出る。

 するとお姉さんがせき止めていた方に、合図を送り堀に水が流されていく。

 明らかに綺麗になった堀と流れる水を見て、皆の顔が達成感に満たされていく。

 水を流したことで流れ始めた水道橋の一部をお姉さんが外すとが、そこからシャワーのように水が滴る。


「参加者の皆さんはここで体のドロを洗い流してください」


 それを見た冒険者から安堵の声が上がる。

 さすがに泥まみれで帰っては、宿でも嫌な顔をされるのだろう。


「疲れたのー。お腹すいたのー」

「なに食べよっかー」

(一度、館に帰って着替えてからだよ)

「「はーい。なの!」」


 イリナだけじゃなくノエルも改めて服の上から体を流す。

 今日は天気は良いが、やっぱり館で着替えたほうが良いだろう。


 報酬は別の日払いなのだが、さすがにセキュリティーの関係で城の前で解散とはならず、最初の噴水まで職員のお姉さんと移動してからの解散になった。

 二度手間になってしまうがしょうが、俺達は来た道を引き返して館に戻った。

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