38 街ブラ
俺達が街に繰り出してまっすぐ向かうのは馬車から見た串焼きの店だ。
城の周辺は王都や他の領地の貴族の持つ別館が占めている。
普段は大半が館が少人数のメイドのみで維持管理をしている状態だが、調度品は高級そのものなで警備の目も厳しいらしい。
今は晩餐もあるということで、家主が帰ってきており慌ただしさがある。
下手に迷い込んでもトラブルになりだけなのでスルー安定だ。
「はい、これなのー」
イリナが門番に通行許可証を見せる。
領主の城から徒歩で出てきた上に、領主直々の許可証を持ったイリナに理解が追いつかないのか、門番は三度見くらいしていた。
そして、二層目の石造りの家の区画は商人や聖職者といった富裕層が占めている。
高級な店や大聖堂なんかもこの区画で道を歩いている人は少ない。
「はい、これなのー」
今度の門番は普通に通してくれた。
っというよりもイリナを温かい目で見守っている眼差しだ。
丁度、イリナと同じくらいの少年が門番のところに走っていった。
服装はしっかりしていたので、商家の徒弟がお使いを頼まれたんだろうか?
「冒険者ギルドに顔は出すか? 登録は済んでいるから身分証を取りに行くだけだが」
「さきにお肉なの!」
「おう。そうか!」
イリナとセイガさんがハイタッチする。
セイガさんは街に出るということで敬語はやめてもらっている。
ただでさえ、俺を連れているイリナは目立つのだ。
「串くださいなの!」
「おうよ。いくつだい? 一本銅貨一枚、五本買ってくれたら一本おまけするよー?」
「五本かうの!」
「あいよ。一本おまけで大銅貨一枚だ!」
「はいなの!」
イリナとノエルが二本ずつ両手に持って食べる。
俺はセイガさんから一欠片貰ったが、エステルはいらないと断った。
「本当はダーリンにも食べて欲しくないんだけどね」
俺があまりに食べたそうにしていたからかエステルも許してくれた。
だって、屋台の串なんて絶対食べたいじゃん?
串は単純な塩味だった。
素材の味は良かったが、胡椒でもあればもっと美味しいだろう。
イリナとノエルの視線を感じる。
その視線はあきらかに俺のスパイスを求めてのものだ。
(ここでは出さないよ? 目立つしお店の人に見せるわけにいかないでしょ?)
「むー、しかたないのー」
「館では俺達の分の飯も出るから、程々にするんだぞ」
「わかったー」
「よゆうなの!」
イリナもノエルも食いしん坊の本領をいかんなく発揮して、一度に二本の串を食べたり、何度もお代わりしたり、大盛りを要求したりと周囲を驚かせていたが、美味しそうに食べる姿は本当に幸せそうで、どの店の店主もイリナ達を微笑ましい顔で見ていた。
その後も色々な場所で食べ歩きを続けて冒険者ギルドの前まで来た。
「おっ、ちょうど良いから寄ってくか?」
(そうだな。入ってみようか)
「いくのー」
領主の直轄の都市だけあって冒険者ギルドはかなり綺麗だった。
もっと殺伐としているかと思ったが、どこか役所のような雰囲気だ。
時間帯が昼下がりとあって、人はまばらだ。
右の壁側には素材買取のカウンターらしき者があり、狩ってきた魔物の肉をその場で食べられるようにか、炉端焼きのような店が併設されていた。
「冒険者証を受け取りに来た。すでに申請はいっていると思う。調べてくれ」
セイガさんが受付に書類を渡すと受付嬢が奥に引っ込んですぐに戻ってきた。
「イリナ様とテイム済みのスライムの申請ですね。あとノエル様も申請が来ています。こちらにサインをお願いします」
「えっ。ボクも? やったー今日からボクも冒険者だ! ⋯⋯お父さん書いて!」
「イリナは自分で書くの! んーと。イリナ⋯⋯エグラ⋯⋯エリス。できたなの!」
「はい、では承⋯⋯りました」
書類を見た受付嬢が笑顔で一瞬固まったのは気のせいだろうか?
領主に近いヴァルタさんから申請だし、試験や審査も無しでの登録なので、きっと権力が働いたのだろう。
「ランクが上がるまでは登録更新の為に月に一度で良いので依頼を受けてくださいね」
(よし。登録も済んだし、さっそく依頼でも見てみる?)
「まだ食べるのー」
「おー」
食いしん坊二人はまだ食べ足りないらしい。
俺達は観光に戻るべくギルドを出ようとした。
しかし、その時別の冒険者に声をかけられた。
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—変更—
26話の貨幣の価値を少し調整しました。




