34 レール村まで
「むー、浮気なのー。許さないのー」
帰るとイリナがすでに起きていた。
床に置き去りにした形になってしまったので、謝ろうと近づくとイリナにポカポカと叩かれてしまった。
(えええ? 浮気ってそんなことしてないよ。ねぇ、ノエル)
「⋯⋯ふぇ? う、うん」
「いいえ。浮気だわ。ダーリンじゃなければ極刑ものね」
(ちょっと? エステルさん?)
「う~わ~き~な~の~」
とりあえず、朝までまだ時間があるのでイリナを包み込む。
イリナはうつ伏せになって俺を叩くのを続けていたが、しばらくすると眠ってしまった。
さすがにノエルは包んでいない。
「ダーリンはそうやって抱きしめて大人しくさせるタイプなのねー」
(その言い方は止めて! ⋯⋯って、もしかしてエステルも怒ってる?」
「私はダーリンの包容力を見せられて感動しているだけよー」
そう言うとエステルは擬似枝に入ってしまった。
朝、目が覚めるとイリナの機嫌は元に戻っていた。
出発前にツリーハウスをどうするのかイリナに聞いてもらった。
「このままにしても管理は出来ませんし。魔物の住処になってしまっても困るので、元の広場に戻して頂けますか?」
(じゃあ、一気に吸収しちゃおう)
「凄い光景ですな」
ツリーハウスを包み込むと一気に溶かす。
でも勘違いしないで欲しい。
別に消化力が上がった訳ではないのだ。
ファルステンで作った木はイリナの魔力なので、イリナの魔力で染まってる俺が吸収できるだけなのだ。
(ん? よく考えたら、それでも人に見られるのは危険かもしれないな。気をつけよ)
片付けはすぐに終わったので、中間地点の村まで進む。
今日はイリナには完全に自力で歩いてもらい、疲れたら休憩せずに俺に乗ってもらってとにかく距離を稼いだ。
その日はそろそろ人里も近いと合ってテントで休み、次の日も同じ様に進んだ結果、ついに村に到着した。
「見えました! あれがレール村です」
レール村は開けた平地に家が並んである長閑な村だ。
獣除けの柵で囲われてはいるが、柵の高さはそれほどではないので、外敵はあまりいないのだろう。
しかし、そんな長閑な雰囲気はセイガさんの言葉で一気に崩れてしまう。
「可怪しいですね。人の気配がしなさすぎる」
「村長の家まで行ってみましょう」
ヴァルタさんが早足で向かう。
そして、家の角を曲がって広場に出ると、そこには予想外の光景が広がっていた。
そこには、ついさっきまで鍋を囲んで食べていたであろう村人たちが苦しそうに倒れていた。
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