26 価値と金貨
(高価な素材が使われてるんだし、ただではもらえないよー)
俺は一生懸命ナイフをオン爺に返そうとする。
「誰にも使われないで金庫に入りっぱなしなんて、いい加減この子も可哀想なのよぉ~。お願い~」
(しかし、タダでって言うのは⋯⋯)
遠慮気味の俺にエステルが肩をすくめながら、オン爺に加勢するように横に飛んできて俺に言う。
「良いじゃないダーリン、くれるって言ってるんなら貰えばいいのよ。ダーリンは敬われる存在なんだから、堂々と貰えばいいのよ」
「そうよそうよ~。いっぱい買ってくれたお礼よ~。それにここで断られたら格好が着かないじゃないの~」
そう言うと、オン爺は駄々をこねる様に、なかば強引にナイフを押し付けてきた。
言われてから、イリナを見ると確かに買おうとしている商品が多い事に気がつく。
⋯⋯と言うか、多すぎる。
明らかに旅の荷物としてはいらないものが多い気がする。
(なんでイリナはそんなに商品を持ってるんだ? 旅するには嵩張るし、お金をそんなに持ってたっけ?)
前に鞄の中を確認した時は、コインは少ししか入ってなかったが、まさか宝石で払うつもりなんだろうか?
疑問に思っていると奥さんが困り顔で話しだした。
「それなんだけど、あんたこれを見てくれるかい?」
奥さんが差し出したのはイリナの持っていたコインの内の一枚だった。
「あら、マルサの持ってるそれって⋯⋯マリス記念金貨じゃないの~!」
(マリス記念金貨? 凄いの?)
「凄いのの?」
価値がわからずに語彙力を失った俺達にオン爺の奥さんが説明してくれた。
貨幣の価値は日本円で考えるとだいたい以下の通りだ。
鉄貨 十円
銅貨 百円
大銅貨 五百円
銀貨 二千五百円
大銀貨 一万円
金貨 三万円
大金貨 十万円
⋯⋯になる。
イリナの持っていたマリス記念金貨はミスリルの入った金貨でアンテーク美術品としても価値があるという。
価値は大金貨の更に上、なんと百万円以上にもなると言う。
ここで問題になったのが、イリナが他に持っていたコインが鉄貨と銅貨だった事だ。
要するに、他のコインでは少なすぎて買うことが出来ず、記念金貨では多すぎるという事態になってしまったらしい。
(なるほど、奥さんが必要以上に色々持っていたのは、金額を合わせる為だったのか)
「なら、丁度いいじゃな~い。このナイフはテイムを強化する絆のルーンが刻んである一級品なのよ~。価値としては釣り合うわ~。他の必要な物もオ・マ・ケで付けちゃうわよ~」
「絆のルーンなの? これでいいの!」
旅の装備一式の相場はわからないが、百万円をそれだけで使い切るのは無理があるようだ。
オン爺に余分な商品を戻していいと言われた奥さんは、ホッとした様子で抱えた荷物を戻しに行った。
(いいのかなー。でももうイリナも気に入っちゃったしオン爺の太っ腹に感謝だね)
「大丈夫よ~。こんな長閑な村じゃあ~、お金なんてほぼ使わないし~。けっこう蓄えもあるのよ~」
「太っ腹なのー」
「ああ!? 今なんつった!」
「ごっ⋯⋯ごめんなさいなの」
お腹のことは禁句なのか、オン爺に凄まれてしまった。
俺が言い出したことなのに、イリナが怒られてしまった。
普通にごめんイリナ。
(しかし、あんな価値のある金貨を持っているイリナは何者なんだ? 村から出る時に勝手に持ち出して来てたんなら、怒られるじゃ済まないんじゃないか?)
「くれたのー」
「そんな金貨をポンとくれるなんて、イリナちゃんはマリス共和国になにか関係があるのかしらね~」
(おお、思わぬところから情報が)
マリス共和国はここからずっと東にある王都の北東に位置する国だと言う。
異種族が中心で作られた国家で、それぞれの種族で村や町が分かれており、代表同士の合議制で国が回っている。
そして、世界のえるふの大体がマリス共和国にいるのだという。
ちなみに、他の国は基本的に王様が支配する君主制だ。
ユミナの話だと、この森にエルフは住んでいないと言う。
このまま森で探し続けるのは限界なのだろうか。
次の行き先について、イリナの話を聞いたうえで判断しよう。
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