24 魔法の使い心地
「⋯⋯どう使うのなの?」
(いや、使えないんかい!)
手を掲げたままイリナが首をコテンと傾げて振り返る。
その仕草に、俺は魔法が見られると胸が高まってっていたので突っ込んでしまう。
「⋯⋯加減を間違えなければ⋯⋯ここで使っても構いません。⋯⋯ただ、まずは小さい木を出す程度でお願いします」
(具体的には何をするんだ? やっぱり呪文とか?)
「⋯⋯まずイリナさんがティトに触れて⋯⋯魔力を流しながら、木を召喚したい場所に⋯⋯木のイメージを飛ばすのです。呪文は⋯⋯自然と口から出ます」
言われて通りに、イリナが俺に触れると、すぐにイメージが流れ込んで来たのがわかる。
二十センチ程度の苗木のイメージだ。
静かに集中した後、目標となる地面を見ながら、イリナが『ファリステン』と唱えた。
魔樹の名前と同じだが、それがそのまま呪文になるようだ。
すると地面に魔法陣が浮かび、ピョコンと木が生えた。
(おー、凄い。魔法陣だ!)
「⋯⋯できたの?⋯⋯できたのー! 魔法なのー!」
(おめでとうイリナ! 使ってみてどうだった? 体に負担はない?)
「⋯⋯?」
イリナは自分の手足をプラプラさせて首を傾げた。
どうやら問題はないようだ。
「⋯⋯魔力的には、問題ないようですね。⋯⋯初めてで緊張しましたか?」
「問題ないの!」
イリナは自分の魔法で生やした苗木に走り寄ると、嬉しそうにしゃがみ込んで見ている。
ノエルも凄い凄いとイリナの周りを周りながら褒めていた。
「⋯⋯では、次はもう少し複雑なこともやってみましょう。⋯⋯イメージで形を変えてみるのです」
「カタチ? なの?」
「それならダーリン! ダーリンの姿の木を作るのよ。イリナ、ダーリンよ!」
「ティトなのー」
イリナが俺にさらり、もう一度イメージが流れてくる。
しかし、イメージが少し不安定で、幼稚園児の描いた絵のようだ。
なんか、色彩もパステル調だし、俺はこんなに弱そうじゃない。
いや、弱いんだが⋯⋯いや、強くなったか?
俺もわからなくなってきた。
俺の中にイメージが流れ込んで来ているって事は、俺がそのイメージを弄ったり出来るんじゃないだろうか。
そう思って、俺の自分のイメージをイリナのイメージに重ねてみる。
すると上手く行ったようで揺れていたイメージが鮮明になった。
(うん。これこそ見慣れた我が身。イリナ、どう楽になった?)
「おおー。 ティトが出来たの」
形を完全に別のものに変える事は出来ないようだ。
あくまでイメージを受け取っているだけのようで、イリナのイメージを補完するくらいがせいぜいだ。
苗木の横に魔法陣が浮かび上がりると、そこに俺の形をした木が出現する。
「わぁーすごい! ティトそっくりだね」
「なんてかわいい木なのかしらね。世界中の木をこの木に変えましょー」
(駄目だからね)
現れた俺の形の木を見て、皆がはしゃいでいる。
だが、俺の形の木というのはなんとも恥ずかしい。
流行らないし、流行らせない。
イリナ⋯⋯イメージを送るのを止めてね。
「⋯⋯この形のまま成長するわけでは⋯⋯ないですよ。樹魔法で作った木は⋯⋯本当の意味ではファリステンではありませんから。⋯⋯それと、その土地の魔力が低かったり⋯⋯召喚した木が大きすぎると⋯⋯育ちません。⋯⋯注意してください」
「「ガーン」」
(⋯⋯ほっ!)
このまま俺の木が乱立する姿は見ないで済みそうだ。
安堵してしたことで、俺は気づいた疑問をユミナに聞いた。
(そういえば、俺のスキルにも スライム樹木生成があるけど、樹魔法と何か違うのか?)
「⋯⋯スライム樹木生成はリンゴンなどと一緒で⋯⋯ティトの体から直接出される⋯⋯生産物です。独自に成長は出来ませんし⋯⋯吸収したものの形に依存します」
(木を出しても枯れてしまうって事?)
「⋯⋯そうですね。それとティトのスキルなので⋯⋯ティトの属性を持ちます。⋯⋯テイム中の自然スライムは『根付く』事が⋯⋯出来ないのです」
(ああー、なるほどねー)
話に納得して頷いているとユミナが大樹を見上げる。
見ている先は自然スライムが共生している枝だ。
「⋯⋯しかし、全てに対応出来るわけではありませんが⋯⋯例外はあります。⋯⋯テイムの主が使う⋯⋯樹魔法ファリステンです。⋯⋯樹魔法で作られたファリステンは⋯⋯主の魔力で出来た木です。⋯⋯そして、ファリステンには⋯⋯自然スライムと共生できる能力があります」
(つまり、イリナの魔力を帯びてる魔樹なら、俺の生産スキルで出した植物も『根付き』が出来るのかー)
「⋯⋯そういうことですね」
ユミナの話はわかりやすく、かなりためになった。
もし森の外で活動する事になった時、自分の能力を把握しておくのは大切なことだ。
くぅー。
可愛らしい音が聞こえて振り返ると、イリナがお腹を押さえていた。
「⋯⋯いつの間にか暗くなり始めていますね」
(吸収も終わったし戻ろうかー)
「⋯⋯何かわからないことがあったら⋯⋯いつでも聞きに来てください。それと⋯⋯」
最後にとユミナがイリナの方を向き、真剣な顔で一言付けたした。
「⋯⋯魔法の過度な使用は避けてください。⋯⋯あなたの魔力が切てしまうと⋯⋯⋯⋯テイムが解けてしまいますから⋯⋯」
イリナに向けられたユミナの目は、どこか悲しみを帯びていた。
その言葉を受けて、イリナは何度も頷いていた。
「お腹すいたねー。今日の晩ごはん何かなー?」
(また俺が何か出そうか?)
「ダーリンの恵みは安売りしちゃ駄目よー」
「大丈夫、多分お母さんがもう何か作ってるよ」
その後は、晩ごはんのメニューを予想したり、明日の予定を話したりしながら帰った。
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