23 ゴールの先には
(よーし! 次はあっちの枝だ!)
昨日に引き続き、今日も巨大樹の枝の上での吸収作業だ。
まず最初に吸収したのはシダ植物、その後はツル科の植物や苔類さらに花達だ。
ガンガン吸収したが種類も多く、時間がかかった。
(ふー。こんなところか。なんとか間に合ったな)
目標にしてたエリアの吸収を午前中で終わらせることが出来たので、下に戻ってイリナと合流する。
これから向かうのは野菜エリアだ。
野菜と言うこともあって、イリナが同行するのはもちろん、ノエルも一緒に来てもらう。
ここからはお昼ご飯も兼ねて、ゆっくり食べながらの吸収になるので、説明を任せる為でもある。
(これはなかなか食べごたえがあるなー)
「がんばって食べるのー!」
「おー!」
イリナを連れて登ってみると、そこは大規模な家庭菜園っと言った装いだ。
数よりとにかく種類が多い。
(あっ、これ見た目は捻じれたキュウリなのに、中の種がトウモロコシだ)
「おいしいのー」
「ティトが食べてるのがモコシで、イリナちゃんの食べてるのが二ニブだよ」
ノエルがイリナの為に食べた物の名前を教えてくれている。
ちなみに、生でも美味しいものをイリナが、茹でたり火を通したい野菜を俺が食べている。
イリナの食べた二ニブは、太いワラビの様な見た目で、ステータスの説明では味は塩気のある甘さ控え目のメロンだった。
そして、俺が次に食べたのが⋯⋯。
カリッ!
(!? これ米だ! 生のままだけど間違いない!)
俺は素早く鑑定吸収を発動し確認する。
鑑定成功
結果:自然スライム【米】
古代に研究に研究を重ねて、品種改良された美味しいお米。
自然スライムを合成してまで作った、米を追い求めた者の情熱の血晶だが、現代には流通していない。
(⋯⋯これ絶対に他の転生者が作ったやつだ。こんな事に情熱を捧げるのなんて、きっと日本人だったんだろうなー。俺、転生者では最速に近い速さのお米獲得者なんじゃないか?)
お米の他にも味噌味のアロエ、ハッチョウなんてものもあった。
結構、やりたい放題してたようだ。
その後も食べたり吸収したりと和気あいあいと作業していった。
「満足なのー」
「また一杯食べたねー。どれが一番美味しかった?」
「これなの!」
(⋯⋯ああー)
イリナが持っているのはソビアと言う芋だ。
枝の上だと言うのに、落ち葉が腐葉土になっているのか根菜や芋類も結構あったのだ。
芋の中でも生で食べられるソビアは、なんと焼きそばが中にはいっていた。
正確には焼きそば味の塊根の繊維質なのだが、薄いとは言えソース味でほんのりシナモンのような香りがするシコシコ食感にイリナは虜になってしまった。
ちなみに、これも転生者が作ったようだ。
(お土産も持ったみたいだし、続きは俺一人でやるよ)
「わかったー。イリナちゃんはボクが下ろすねー」
(ありがとう。お願いするよ)
残る一画は薬草やハーブのエルアだった。
そこもかなり充実していて、薬の素材には困りそうもなくなりそうだ。
ちょっと期待していたが、残念ながら忘れられし古代の葉の自然スライムは居なかった。
下に降りてきた俺は、人心地ついていた。
周囲に目を向ければイリナとノエルが寝っ転んでおしゃべりをしている。
寛ぎモードに入っていると、そこにユミナが来た。
「⋯⋯お疲れ様です。吸収してみて⋯⋯どうでしたでしょうか?」
(確実にこれからの助けになるよ。ありがとう。しかし、明らかに山の幸では説明できない種類まであるったな)
「⋯⋯この都市では、恐らく自然スライムと⋯⋯共存が成立していたのでは⋯⋯と思います」
またしても根本を見ながらユミナは続ける。
「⋯⋯昔はもっと人と自然スライムの距離が⋯⋯近かったのでしょう。数も今より多かった。⋯⋯その時の名残なのでしょうね」
大樹ファリステンの周りには風化した建物の残骸が残っている。
このポッカリと空いた空間にも、きっと人の暮らしがあったのだろう。
ユミナの言葉を聞いて、エルフと自然スライムの共存していた都市を夢想する。
「⋯⋯さあ、最後はこのファリステンの吸収です」
ユミナが大樹を指差す。
(ゴクリ!)
「ユーモアは大事よねー。ダーリン」
雰囲気を出そうと、生唾を飲む擬音を呟くと、エステルが察知したのか近くに来て拾われてしまった。
少し恥ずかしくなって誤魔化すように、すぐファリステンに鑑定吸収を使う。
鑑定成功
結果:大樹ファリステン
魔力の大地で成長する魔樹。
世界樹のように、世界の魔力を循環させる事に役立っている。
聖なる樹とも呼ばれ、魔力を使うことで形や硬さをある程度自由に変える事ができる。
大樹ファリステンを吸収しますか? YES/NO
(よし、これにYESっと!)
「⋯⋯これで植物魔法の⋯⋯ファリステンが使えるように⋯⋯なりましたね」
(⋯⋯ふぁ!)
ユミナの予想外の発言に変な声が出る。
ファリステンは自然スライムではなく魔樹だった。
自然スライムの吸収以外でスキルが得られるとは思っいなかったので心底驚いた。
思わず硬直していまったが、震えながらステータスいて確認する。
種族:自然スライム(仮)【イリナのティトの苗木】
レベル 99
体内魔力量 999999
称号【甘露】【植物の総合商社】【スライムの超越者】
スキル
生産 A
スライム蜜生成 A
スライム薬生成 A
スライム葉物類生成 A
スライム果実類生成 A
スライム根物類生成 A
スライム蔓類生成 A
スライム菌類生成 A
スライム苔類生成 A
スライム穀物類生成 A
スライム芋類生成 A
new スライム樹木生成 A
吸収 A
消化 G
貯蔵 S
粘力 S
魔力探知 S
スキルポイント 2
ユニークスキル
現状把握 A
new 植物召喚魔法ファイステン A
限定スキル
自然物鑑定吸収 A
(えっぐっ! レベルってこれマックスだよな⋯⋯スキルもステータスも凄いことになってるし。またしてもツッコミどころ満載だ)
鑑定吸収の時も自分のステータスは意識していなかったので出ていなかった。
あまりの成長とスキルに、事態を飲み込むのに時間を掛けているとイリナ達も集まってくる。
「なになに? 魔法?」
(召喚魔法みたいだけど、使えるようになった!)
「えっーなの! ティトずるいの!」
本気で妬んでいる訳では無いようだが、魔法が使えない事にコンプレックスがあるイリナが頬を膨らませて拗ねる。
すると、ユミナがイリナの頭を撫でた。
「⋯⋯いいえ、植物召喚魔法のスキルは、ティトに触れて使う事のできる⋯⋯イリナさんの魔法ですよ」
「イリナの魔法なの! ティト⋯⋯ありがとうなの⋯⋯」
(ガーン、俺は使えないのかー。なんてね、イリナおめでとう)
「ダーリンは、食べ物で遊んでは駄目だからねー」
イリナが俺を強く抱きしめてくる。
俺も魔法は使ってみたかったが、イリナが嬉しそうならそれでいい。
「つかうの! まほうなの!」
イリナが魔法を使う準備に入った。
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