21 吸収、吸収、また吸収
「⋯⋯限定スキルを使う意味は⋯⋯聞いていますね?」
(たしか、それをすることで『根付き』までの時間を延長できるって)
「⋯⋯そうですね。そして、それには副産物が⋯⋯あるのです」
(副産物? 進化する以外で?)
俺の質問にユミナが考える素振りも見せる。
「⋯⋯ティトは増えたスキルは⋯⋯いくつありますか?」
ユミナにそう問われて考えてみる。
真っ先に思い出すのは、生産の派生(?)のスライム蜜生成とスライム万能薬 (序)だ。
どちらも獲得したことで喜んだり、驚いたりした。
そして、残るは進化をキャンセルした事で出た限定スキルと、食い意地で出現させた消化。
ユニークスキルは最初の方に増えたので勘定に入るかわからないから除外でいいかな?
(増えたのは四つかな?)
「⋯⋯多いですね。普通は⋯⋯進化の際に一つ増えるだけ⋯⋯なのですが」
「まぁーねぇー。ダーリンは神に選ばれた特別な存在なのよー」
(普通は進化をキャンセルなんてないもんな。消化も頑張らないだろうし)
エステルは俺のことを褒められたと思って喜んでいるが、しなくていい消化を頑張ったと褒められるのは恥ずかしい。
イリナに食いしん坊だなどと言ってはいられなくなる。
「⋯⋯そこで副産物の話です。簡単に説明すると⋯⋯他の自然スライムの一部を⋯⋯限定スキルで吸収することで⋯⋯『根付き』の延長以外に、吸収した⋯⋯スライムのスキルも獲得できる⋯⋯のです」
「きゃー! ダーリンがますます素敵になっちゃうわー!」
「⋯⋯テイムが切れない限り、限定スキルは⋯⋯いくら使っても完全な自然スライムには⋯⋯進化が出来ません。⋯⋯『根づき』の事もあります⋯⋯ここでは気にせずにどんどんと⋯⋯使ってください」
エステルがテンション高めに飛び回り始めた。
正直、俺のテンションも実は上がっている。
スキルが増えると言って上がらない転生者などいるだろうか?
いや,いない!
(よし! まずは、どれにしようかなー?)
「ティト! あれなの! リンゴンなの!」
イリナが俺に覆いかぶさるようにして、大樹の枝先の果実なっている一帯を指差す。
頬を紅潮させて指さす姿に気持ちがほっこりする。
「小娘はブレないわねー」
(よーし! いくぞー!)
俺はイリナを抱えると木登りを開始する。
幹が太いからか、意外と登りやすく、スルスルと目的地まで進む。
リンゴンのなっている付近に着くと、枝の上とは思えないほど立派な果樹園が広がっていた。
「リンゴンなの! リンゴンなの!」
(駄目だよイリナ。ここはこれでも枝の上なんだから)
走り出しそうなイリナを押さえつつ、まずはリンゴンの木に行って吸収する。
ステータスにスライム果樹生成が浮かび上がる。
すぐに生産してイリナに渡すと、食べたイリナの体が跳ねた。
「すごいの! おいしいの!」
イリナの反応に、あらめて俺も自分で生産したリンゴンを食べてみる。
(うっっっまっっっ!【甘露】さんマジパネェ!)
現代でも高級な方のリンゴの味が広がる。
明らかに【甘露】が影響した味の変化に、思わず変な語彙が崩れる。
辺りを見ると果実がなってる木の種類はかなりある。
これだけでも生産して一財産築けそうだ。
(見た目だけでは味が想像出来ない果実も多いな。味わいながら吸収していこう。
「食べるのー」
とりあえず、片っ端らから食べて吸収していく。
食べてみてわかったが、見た目と味が同じじゃ無い物の方が多かった。
オレンジの見た目でオリーブオイルだった時は、食べたがるイリナの説得に苦労した。
そして、吸収して出した果実をほとんど全て食べていたイリナが、ついに限界を迎えた。
「まっ、まんぞく⋯⋯なの」
「小娘は食べすぎなのよー」
(結構時間も使ったし、一度下に降りようか)
口を押さえて少し気持ち悪そうにするイリナにエステルが呆れる。
他の枝に目を向かれば、まだまだ多種多様な植物が共生しているのが見える。
今日中に全てを吸収するのは無理だし、一旦みんなで下に降りて休憩する事にした。
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