20 降り注ぐ光の中で
光の先は、ポッカリと開いた空間だった。
両脇を遮っていた崖は、こちらを招き入れるように大きく外側に広がっていき、遮られることのない日差しが真っ直ぐにその空間に降り注いでいた。
広場の中央に鎮座するのは一本の巨大樹だ。
泉に囲まれて、陽の光と輝く水鏡の反射を一身に受けるその姿はまさに神々しく、山の中にあってなお、天空に浮かんでいるような錯覚を覚えた。
(すっごいな。⋯⋯それ以外の言葉が出てこない)
「⋯⋯きれいなの」
「えへへー。凄いでしょー」
十分すぎるほどに広い空間が、狭く感じるほどに四方に伸ばされた枝には、多種多様な植物が協生している。
巨大樹の葉先からは、木漏れ日とは別の光がキラキラと舞いおりて、空気に溶け込んでは消える。
(陽の光だけじゃなくて、樹そのものも光ってるよな? 魔力量が半端じゃないぞ)
「まあ、認めるわ。ダーリンの次に綺麗じゃないかしら、ここからでも大きすぎて、大きさの感覚がおかしくなりそうだわー」
俺達と巨大樹の間には小川と道が続いていている。
その途中には遺跡の瓦礫のような物が散乱していが、巨大樹が大きすぎて小石の様に見える。
エステルの体だと、更に大きく感じるのだろう。
その声には、もはや呆れの感情が含まれていた。
(これって世界樹?)
「⋯⋯いいえ。違います。⋯⋯確かに⋯⋯近い存在ではありますが⋯⋯」
(これでも世界樹じゃないのか。本物はどれだけ凄いんだか)
「⋯⋯世界樹はもっと大きいですよ。⋯⋯それに世界樹には⋯⋯精霊が宿っていますから⋯⋯すぐにわかります」
呆然としながら呟いた俺の言葉を、ユミナが拾った。
ユミナの話だと、世界樹はこれより大きいらしい。
もはや想像もできない。
「イリナ⋯⋯知ってるの。世界樹の前にいたの!」
(えっ、イリナの家の近くには世界樹があるの?)
「⋯⋯わからないの。でも、世界樹を見ていたの」
「何やってるのー。こっちだよー」
先に進んでいたノエルに手招きされて歩き出す。
だが、頭の中には今の情報でいっぱいだった。
世界樹はイリナに関係があるかもしれない。
そして⋯⋯。
(この森のどこかに世界樹があるのかー。この森の規模なら納得は出来るけど⋯⋯)
「⋯⋯残念ながら、この森には⋯⋯世界樹はありませんよ?」
(えっ! じゃあ、イリナの家の場所と世界樹は関係ない? なら、いったいどう探せば⋯⋯。そうだ、ユミナ様は近くにあるエルフの集落の場所を知ってたりしないかな?)
手がかりが出てきたと思ったら無くなってしまった。
少しでも情報はないかと、ユミナ様にエルフについて詳しく聞こうとすると、更に爆弾発言が続いた。
「⋯⋯この森にエルフは⋯⋯いません」
(えええっ! だって、確かノエルはこの森はエルフ様の森だって言ってたぞ?)
「⋯⋯この森は⋯⋯エルフが癒しましたが⋯⋯ですがそれは千年も前の話です。ここもまた⋯⋯そのエルフの都市だったのですよ」
(⋯⋯ここが?)
俺はユミナの言葉を聞いて周囲の瓦礫を見る。
色は完全に褪せてしまっているが、瓦礫には文字だか模様だかわからないものが刻まれてた形跡があった。
これが建物の瓦礫だったのか。
気がつけば、俺達はもう巨大樹の根本まで来ていた。
見上げるとさらに圧倒される大きさだ。
そして、俺はある事実に気がついた。
(もしかして、あの共生してる植物達って全部が自然スライムなのか?)
「⋯⋯流石ですね。そうです⋯⋯あの植物達は、ノエルが山から取ってきた⋯⋯自然スライムの一部をファルステンに根付かせたものです」
(ファルステン?)
「⋯⋯この巨大樹の名前です」
ユミナに説明を聞いてノエルが胸を張る。
「えへへー。ボクのお祖父ちゃんのずっとずっと前の代から、村の人達で自然スライムを探してきて、この巨大樹様にお供えしてるんだよー」
「ノエルにも⋯⋯村の人達にも⋯⋯何時も感謝しています。⋯⋯ここが賑やかになるのは⋯⋯とても嬉しいですから」
ユミナは優し気な眼差しで、巨大樹の根を見ながらお礼を言う。
そして、顔を上げると俺の方を見た。
「⋯⋯では、ティトにはここの自然スライム達⋯⋯全てを鑑定吸収して貰いましょう」
(ええっ! そんな無茶な)
いきなりのユミナからの提案に俺は声を上げた。
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