19 サラダとリンゴンへの道
ユミナがサラダを食べる俺を、ジッと見つめながら訪ねてきた。
「⋯⋯ティトは、限定スキルは使わないのかしら?⋯⋯サラダをそのまま消化しているようだけれど?」
(うーん。必要なことだとは思ってるんだけど、限定スキルは食事したって感じがしないからついね。消化ももう少し育てたいし)
「⋯⋯そうですか。⋯⋯意味の説明は⋯⋯受けているようですね。⋯⋯ですが、一期一会という言葉もあります。⋯⋯他の自然スライムに限定スキルを使う癖は⋯⋯付けておいた方が良いですよ」
(うっ、そうだね。ごめん)
「ちょっと! それは余計なお世話じゃない? 自らの寿命のことだものダーリンだってちゃんと考えているわよ」
エステルに庇ってもらったが、申し訳ない。
正直、まだ先なことだろうと悠長に考えていました。
俺はサラダを食べながら反省する。
「⋯⋯そうですね。⋯⋯私としたことが二人の事に⋯⋯口出しすべきではありませんでした。⋯⋯ここにあるものは⋯⋯後から吸収する機会を作れるので、今は食事に⋯⋯集中してください」
そう言って、ユミナは会話を終了させた。
「「ごちそうさまでしたー」」
ノエルのお母さんに朝ご飯のお礼を言って俺達は外に出る。
「⋯⋯では、行きましょうか。⋯⋯ノエル、先導をお任せします」
「ボクでいいの?」
「⋯⋯ええ、あなたのことだから⋯⋯案内する約束をしているのでしょう?」
「うん! ありがとうユミナ様」
ノエルは『任せて』と言って、朝に行った村の中心を流れる小川へと俺達を案内する。
そして、そこから小川に沿って階段を登っていくと、村の外へと続く山道が見えてくる。
「あら? 村の中にあるんじゃないのねぇー」
(イリナ、俺に乗っておく?)
「いいの。イリナいけるの」
「すぐ近くだから大丈夫だよー」
その言葉を聞いてイリナの顔色が変わる。
「ティト、イリナはもうダメなの⋯⋯」
「本当に近くだからー。本当だからー!」
若干のトラウマを抱えていたイリナの心が折れたようだ。
イリナの呟きをノエルが必死に否定するが、前回のこともあり信じてもらえていない。
俺は話題を反らそうと、目的地の話に振る。
(たっ、確かこれから行くのって、昨日のリンゴンが生えてる場所だよね?)
「そうだよー! 他にも色々な食べられる物が生えてるんだよー」
「⋯⋯やる気でたの!」
「現金な小娘だわー」
イリナは、昨日のリンゴンを思い出したのか、目をキラキラさせ始めた。
話をしながら歩いていると、高い崖が見えてきた。
横を流れる小川と道は、そのまま崖の崩れた間へと続いている。
峡谷の道まで近づいて両脇の崖を見ると、崖は思ったより綺麗に整っていて、どこか人工物にも見えた。
(なんだか雰囲気があるなー。ドキドキしてきたぞ)
「冒険してるって感じがしてくるわねー」
「イリナ、冒険者なの!」
そんな事を言い合って、ワクワクしながら進んで行くと、進行先から気配のようなものが流れてくる。
その気配には、圧迫感ではなく春風のような心地よさがあった。
「ティト? どうしたのなの?」
(いや大丈夫、何でも無いよ)
思わず立ち止まってしまった俺をイリナが心配する。
イリナはこの気配を感じていないようだ。
「⋯⋯大丈夫ですよ。⋯⋯この先にあるものに⋯⋯自然スライムとして、反応しているだけですから。⋯⋯あと少しです」
ユミナが峡谷の道の終わりを指さす。
先が開けているようで、強い光が差し込んで来ていて先が見えない。
(よし! 行こう)
「あー、ティト! 案内してるボクを抜かさないでよー」
ノエルを追い越して怒られながら、俺達は光の先へと突入した。
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