18 夜明け前の時間と
(ん? 誰か起きたみたいだ)
朝、ノエルの目覚めに反応して俺も目を覚ます。
ノエルはイリナを起こさないように慎重に移動すると、そのまま家を出ていった。
(川の方に向かってる。顔でも洗いに行ったのかな?)
朝と言うにはまだ早い時間帯だ。
獣人が早起きなのかとも思ったが、ノエルのお母さんが起きた気配はない。
俺も目が覚めてしまったのでノエルの元に向かう。
「あっ、おはようティト」
(おはよう!)
俺の声は聞こえないので身振り手振りで、おはようを伝えるとノエルが嬉しそうにする。
「えへへ。こんな早くにおはようを言えるの嬉しいなー。村のみんなもまだ起きてこない時間だし」
「早いのねー。昨日あれだけハシャいでたのに」
(あっ、もしかして起こしちゃった? おはよう、エステル)
「いいのよダーリン。せっかくだから私がノエルにダーリンの言ってること伝えてあげるわ」
エステルが起きてきて、俺の言葉を通訳してくれると言ってくれた。
もしかしたら、その為にわざわざ起きてきてくれたのかもしれない。
とても助かるのでありがたく申し出を受け入れる。
エステルには感謝だ。
「あっ、エステルもおはよう。楽しかったよねー。夕食をみんなで食べて」
「イリナは食いしん坊だったわね」
(あんなに夕食食べてたのに、リンゴンもお替りしてたもんな)
「あんなに美味しそうに食べてくれると、こっちも幸せな気持ちになるよー」
話す内容はイリナの事が多かったが、話の流れで出会った時の話になる。
「ティト、あの時はいきなり斬りつけてゴメンね。普段は匂いで自然スライムだってわかるんだけど、あの時は焦ってたから気が付かなかった」
(まあ、森でスライムが女の子を取り込んでたらビックリするよね)
「そういえば、ティトは男の子なの?」
(無性だよな? 転生前は男だったが⋯⋯)
「ダーリンは無性よ。そもそも森スライムは、魔力溜まりで生まれるから、親もいないし子も作らないもの」
「そうなんだー」
(そうなのかー)
「ダーリンはステータスで、ある程度は知ってるでしょ。もう、そんなところも愛おしいわね」
(全肯定だなー⋯⋯)
そんな取り留めのない会話をしていると、ノエルがソワソワしている事に気が付く。
村に案内してくれる途中に見せた、走り回りたくて仕方ない時の仕草だ。
イタズラ心で木の枝を投げたら、走って取りに行っていた。
「獣人は元気ねぇー」
「うーん。時々、なぜか無性に体を動かしたくなっちゃうんだよね。夜に目が覚めちゃった時は、狩りに行ったり、自然スライム集めに行ったりしてるんだー」
「あんたまさか、自然スライムを狩ってるんじゃないでしょうねー」
「ええー!」
エステルが声に若干の威圧を交ぜて、ガルルと威嚇をした。
それを見て、ノエルは怯んだ仕草を取る。
どちら本気でやっているようではないが、これではどちらが獣人かわからない。
「体の一部を分けて貰ってるだけだよ。ちゃんと断って貰ってるし、その後も村で大切に育ててるから大丈夫だよー」
その言葉を聞いて、エステルが少し驚く。
「へー。自然スライムの一部とはいえ、定着させてるなんて、凄いわね」
「えへへー、今日はそこに案内するねー」
そこでイリナの気配を感じる。
(あっ、イリナが起きそうかも?)
結構な時間を話し込んでいたのか、空はすでに白んできていた。
イリナが起そうな事をノエルに伝えるとノエルが慌てる。
「大変だー! イリナちゃんが起きて、みんなが居なかったら驚いちゃう! ちょっと待ってね。水汲んじゃうから」
ノエルが顔を洗うようの水を川で汲むのを待って、みんなで急いで家に帰る。
家に着くと、ノエルが言った通り、イリナが外に出てキョロキョロと俺達を探していた。
「いたの! ひどいの!」」
「ごめん! イリナちゃん。おはよう」
「大げさねー。あんただってダーリンの居場所がわかるでしょうに」
「そうなの? ⋯⋯ほんとなの!」
言われて目を瞑ったイリナが、俺を感じ取ったのかビックリした顔をする。
そんなやり取りをしていると、ノエルのお母さんが来た。
「みなさん、朝ご飯の準備が出来ました。食べちゃってくださいな」
「わーいなの。 ごはんなの!」
「ボクもお腹ペコペコー」
晩ごはんの時と同じ様にちゃぶ台の上に朝ご飯が乗っていた。
朝から肉多めのワイルドなもので、量も結構あったが、、ノエルとイリナが次々にぺろりと平らげていく。
(イリナって大食いだよなー)
「いっぱい食べるの! 大きくなるの!」
(よし、俺も負けてられないな!)
俺とエステルの前に置かれているのは、朝どれの瑞々しい野菜で作ったサラダだ。
(このサラダも、もしかして自然スライムかな?)
「⋯⋯そうですよ。遠慮なさらずに⋯⋯食べてくだい」
いきなり後ろの方から、声がして驚いて振り向く。
すると、入口にエステル以外の妖精が飛んでいた。
眠そうなたれ目に、紫の長い髪が印象的な妖精だ。
「あっ、ユミナ様。おはようございまうー」
「⋯⋯おはようございまうー、皆様。⋯⋯ノエル、ゆっくり食べてくださいね。⋯⋯昨日、シューから連絡を受けて⋯⋯私も少し浮かれていたようですね。⋯⋯早く来すぎました」
口にお肉が入っていた所為か、ノエルが噛んでしまう。
少し恥ずかしかったのか、今は飲み込むためモグモグと咀嚼を頑張っている。
ユミルと呼ばれた妖精は、柔らかに笑うと、ノエルの横に移動してテーブルに座った。
「⋯⋯ユミナと申します。カティ村の⋯⋯村長のようなものを⋯⋯やらせてもらっています」
独特な間で喋るユミナの自己紹介を受けて、俺達もそれぞれ名乗った。
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