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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両


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17 村とノエルの家

「ようこそカティ村へ、ここがボクの村だよ」 


 手を広げたノエルの先に村が見えた。

 村は、獣避けの低めの柵に囲まれていて、石を重ねた壁と木の屋根のシンプルな家が並んでいる。

 山の斜面の僅かな平地に作られた家々は、高低差があり長閑ながらに、独特の雰囲気を醸し出している。

 村は太陽に面した右側に向けて低くなっていて、開けた空間から壮大な山の景色が見える。


 そこであらためて、来た道を振り返ると、一見して山とは断言が出来ないほどに広大な、森の壁が広がっていた。

 雲の先まで続いている緑の絨毯はまさに幻想的だった。


(あそこからずっと降りてきたのかー)

「頑張ったのー!」

「小娘は途中でダーリンに乗ってただけじゃないの!」


 立ち止まって振り返えっている俺達に、入口に立っていた獣人が走り寄ってきた。


「ノエル、どうしたんだ? 今日は遅かったじゃないか」

「ごめーん、シューさん。今日はお客さんのペースに合わせてゆっくり帰ってきたんだー」

「ああ? 客ー?」


 ノエルの肩越しに、シューと呼ばれた獣人の男性がこちらを見てくる。

 まず俺を見て疑問顔になり、イリナを見て驚き、エステルを見て目を丸くした。

 そして俺に目線が戻りエステルと俺を交互に見る。


「これは! ユミナ様に報告せなば!」


 シューさんは踵を返すと階段を一気に駆け登っていった。


「ボクの家に案内するねー」

(シューさんは良いのかな?)

「良いんじゃない? もう暗くなるしノエルの家でゆっくりしましょ」


 ノエルの家は村の少し奥にあり、村の中央を流れる川を渡って少し進んだところだった。

 他の家と同じ石造りの家で、入口には灰色の髪の女性が立っていた。


「私のお母さんだよ。お母さんお客様連れてきたからリンゴン剥いてー」

「もう、この娘ったらいきなり⋯⋯。 ああ、どうぞお客様、中に入って寛いでくださいな」


 先に家に入ったノエルは靴を脱いで、ちゃぶ台のような低いテーブルの前で寛いでいた。

 ちゃぶ台の下には簡素だが柔らかい絨毯が引かれている。


(へぇー。この世界も日本のように家では靴を脱ぐのかー)

「そうでもないみたいよ。イリナは戸惑っているもの」


 エステルに指摘されて振り返ると、イリナがノエルの脱いだ靴を見ながら立ち止まっている。

 脱いだ靴は置くスペースがあるわけではなく、その場に乱雑に脱ぎ捨てられたままだ。


「コラ! ノエルお客様の前で、はしたないでしょ! どうぞ食事を用意いたしましたので食べてください」


 ノエルのお母さんがちゃぶ台に食事を置くと、ノエルの靴を揃えて部屋の隅に置いた。

 イリナもそれを見て、靴を脱ぎノエルの靴の隣に並べる。

 俺は靴など無いのでどうしようかと迷っていると、ノエルのお母さんが濡れたタオルを用意してくれていた。


「イリナが拭くの!」


 イリナに無造作にひっくり返されゴシゴシと拭かれる。

 頭に擬似枝があるから勘違いしていたが、よくよく考えればスライムに天地は無い。

 俺は拭かれてる側に擬似枝を出して、そのまま拭いてもらう。

 タオルで拭かれるのもさっぱりして案外気持ちがいい。

 これからは自分でも拭くようにしようと思った。


(こうなってくるとお風呂にも入りたくなってくるなー)

「お風呂なの?」

(熱い湯を溜めた、水浴びみたいなものだよ。それよりご飯を食べよう)


 ちゃぶ台に置かれた料理を見る。

 野菜の入ったスープにサラダ、串に刺さった肉と魚だ。

 俺の前にも小さな器に入った、野菜のスープが置かれている。


(おおー、川魚もあるのかー)

「ダーリンはお肉は駄目よ。ダーリンの消化力じゃ胃もたれしちゃうものー」

(俺は中年男性か! まぁ実際、消化力Gじゃ無理なんだろうけど⋯⋯いただきまーす)


 消化力を上げるためにスープと煮込まれた野菜を頑張って食べる。

 野菜は限定スキルで吸収出来るが、あれは食事ではないのだ。


(美味しいなー)


 イリナを見ると両手に串を持って美味しそうに食べていた。

 休憩の時にイリナが食べていたのはスライム蜜だけだ。

 栄養はあるが、それだけでは満たされないものがあったのだろう。


(スライムになって食事に関して、少し疎かになってたな。少し反省)

「特にダーリンはイリナの魔力でお腹が減らないものねー。今でも完璧だけどノエルのお母さんくらいに気配りが出来れば無敵ね」


 妖精であるエステルも、ちゃんと食事をするようで、エステル用に小さく切ってあるリンゴン食べていた。


(ごめん。そう言えばエステルに蜜を出してなかった。言ってくれれば良かったのに)

「謝らなくていいわよ。私は別に食事を必要としてる訳じゃないから、あえて言わなかったんだもの。このリンゴンが美味そうだったから興味が湧いただけよ」


 すると、その言葉を聞いてノエルが嬉しそうにする。


「美味しいよー。ボクが見つけてきた村の名産品なんだ。明日、取れる場所に案内してあげるね。きっと驚くよー」


 ちょうどそこにノエルのお母さんがリンゴンをデザートに剥いて持ってきてくれた。

 イリナはすぐにリンゴンを掴んで食べ始める。

 すでに晩御飯を結構食べていたはずなのに、イリナは案外食いしん坊なのかもしれない。


「美味しいの! ティトも食べるの!」


 味に興味があったのでさっそく食べてみる。

 そうすると、レベルが上がらないまでも、それに匹敵する感覚と美味しさがあった。


(⋯⋯っ、コレって!)


 この感覚は【倒木激旨キノコ】を食べた時に似ている。

 つまり、これは自然スライムの一部だ。

 思わず、リンゴンを鑑定しそうになったが、無作法かと思い直し我慢する。

 案内してくれると言っていたので、その時にでもしよう。


「美味しいでしょー。すごく人気があるらしくって、お父さんがいま領主様に持って行ってるんだよ」

「おいしいの! 甘くてすっぱいの!」

(俺の密には及ばないけどね)


 正直、現代のリンゴを知っている身としては物足りなさがある。

 俺に作らせたらもっと美味しいリンゴンを作れるだろう。

 だが、それでも十分にこのリンゴンは美味しかった。


 リンゴンを褒められたのが嬉しかったのか、いつの間にかイリナとノエルは打ち解けていて、ノエルがイリナをちゃん付けで呼んでいた。

 すると、お腹が満たされたからか、会話の途中にイリナがウトウトし始める。


「このままここで寝て良いよ。あとはボクが片しておくから」

「⋯⋯うん」


 イリナは頷くと素直に横になる。

 そして、すぐに寝息をかき始めた。

 片付けが終えると、ノエルもその横に嬉しそうに寝転び一緒に寝始める。


(やっぱり屋根がある方が落ち着くんだろうな。頑張ってイリナを家に帰そう)


 イリナの安心しきっている寝顔を見て、俺は新たに決意を固めた。

読んでいただきありがとうございます。

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