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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両


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16/20

16 近くてちゃんと遠い村

「もうダメなの。置いて先にいくの!」

(はいはい。休憩ね)


 歩き始めてから五度目の休憩をイリナが申し出てきた。

 へたり込むように地面に座ると、ノエルが渡してくれた水筒をゴクゴクと飲んでいた。

 ノエルに『村はここからすぐ近くだからすぐ着くよ』と言われて歩き始めてから、すでに6時間は経っていた。


「獣人のすぐ近くは当てにならないわねー」

「もう本当にあと少しだから! 走れば一瞬だから!」


 そう言ったエステルは、途中で飛ぶのを止めて俺の頭の擬似枝に寄りかかって寛いでいる。

 あとどれくらいと聞いても、あと少しとしか返ってこない。

 休憩までの間隔も短くなっている。

 先の見えない行進にイリナの限界も近そうだ。


(もしかして、この距離を走って移動してたってこと? 獣人の体力は恐ろしいんだなー)

「えへへー。ボクは村で一番足が早いんだよー」


 冗談で言ったのだが、ノエルの言い方だと本当に走って移動しているのかもしれない。

 出会ったのは早朝だったのに、ノエルはテントのような装備を持っていないのだ。


(⋯⋯地面にそのまま寝る。ストロングスタイルの可能性も捨てきれて無いけどね)


 歩いてる間中、何度もこちらを振り返ってはソワソワと動き回る様は、なんだか散歩で走り回りたいのを我慢する犬を彷彿とさせた。

 そして、案の定イリナの限界は来た。


「もーうダメなの! イリナはここで暮らすのー!」

「だらし無いわねー。そんなんで冒険者になるとか笑わせるわー」

「ざんねんなの。イリナの冒険はここまでなの」

「仕方がないわねー。ダーリンに乗ることを許可してあげるわよ」

「やったーなの!」


 立ち上がったイリナが擬似枝を掴んで跨った。

 だが待って欲しい。

 擬似枝は見た目ほど固くはないのだ。

 このまま動くと千切れてしまう。


(イリナ、ちょっとだけじっとしててね)


 俺はすぐに粘力で窪みを作りイリナが収まる椅子を用意する。

 ベルトのように腰を固定すればスライムゴーカートの完成だ。

 ギュンギュンと魔力が減り、イリナの魔力でギュンギュン回復する。


(あっ、レベル上がった)


 念のためタイヤ部分を大きくしてオフロード使用にする。

 タイヤを模した部分を粘力で回転させると、ゆっくりとだが前進した。


(⋯⋯おっそ)

「ああー。なんて愛らしい姿なのかしら。まさに森に舞い降りたダーリンね」

   

 エステルがよくわからない例えをしている。

 だが、残念ながら俺はもう舞い降りるつもりはない。

 イリナを乗せて移動するのに、この方法では速度が出ないが、飛び跳ねて移動するのは怖い。

 そして、たぶんイリナが酔う。

 あと舞い降りるつもりはない。


(移動の間に粘力が少しでも上がれば、速度は改善されるはず! 安全第一でゆっくり行こう。さすがに日が落ちる前には着くだろうしね。⋯⋯着くよね?)

「わー。なにこれ凄い! ボクも負けないよー」


 俺の不安とは裏腹に、ノエルは俺の周りを回ってはしゃいでいる。


「あんたはさっさと案内しなさい」

「はーい」


 結局、村に着いたのは暗くなるギリギリだった。

読んでいただきありがとうございます。

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