122 トラオンでの再会
(せっかくテイマーについて学べる施設もあるし、イリナはテイマーについて学んでいきたい?)
「? ティトと一緒ならどっちでもいいの」
「私もどっちでもいいわね。小娘のサポートなんてなくてもダーリンは最強だもの」
「私も基本はイリナ様の判断にお任せしますが、イリナ様がテイマーの技術を学ぶ事は、冒険者としての実力を上げることになると思います。ですので、マルス共和国に着くのが多少遅くなったとしても、この機会に学んでおく方が良いとは思います」
「ボクもどちらでもいいかな。ただ、イリナちゃんが学ぶ事になったら、ボクはちょっと暇になっちゃうかも」
ルーフェンでテイマーの事を学べると聞いてどうするかを聞いてみたが、どっちでもいいという答えだった。
みんなの意見も、ビースナスは賛成よりだが、イリナの気持ちに任せる方向では一緒だ。
イリナはどっちでも良いと言ったが、ここにきてイリナ自体に目的があって旅しているわけでは無い事に気が付いた。
俺の目的はイリナの家族を探す事と、自然スライムを集める事だ。
だが、それはあくまでも俺がしたいと思って行動しているだけで、イリナ自体は冒険者になって冒険したいと言っていたが、一度も家族に会いたいとはいっていない。
冒険したいというのならば、今の様に旅を皆でしていることがイリナの望みと言う事になる。
「どっちにしたらいいのなの?」
(いや、俺に聞かれても……)
「とりあえず、屋台でいっぱいご飯を食べるの。その後決めるの!」
「小娘、考えるのが面倒になって無いかしら……」
エステルが冷たい視線を向けるが、イリナはもう明日のご飯の事を考えているようだ。
イリナとしてもテイマーとして学びたいと強い希望があるわけでは無いようで、学ぶかどうかはとりあえず保留のようだ。
次の日、屋台で串焼きを買っていると、懐かしい人物にあう。
「イリナじゃない! やっぱりルーフェンに学びに来たのね。さすがは私のライバルよ」
「ゼンダなの! 久しぶりなの。あの子も一緒なの?」
「当然じゃない。 私とイデアは一心同体よ」
「イデア、名前なの!」
「そうよ。しっかり意思が伝わってくるようになったら、最高の名前を付けてあげようと思ってたのよ。そして、遂にこの子の納得する名前を付けてあげられたってわけ」
「じゃあ、あの後にちゃんとテイム出来たんだね。おめでとう」
「ノエルさん。ありがとうございます」
「良い名前なの。喜んでるなの」
「当たり前じゃない。私は天才テイマーで名付けるセンスもレジェンド級なんだから」
久しぶりに会ったのは、タウの町でスライムをテイムしていた少女のゼンダだった。
トレードマークのポニーテルを揺らして、嬉しそうに濃くなった水色のスライムを抱き寄せる姿に俺も安心した。
(二人の絆は切れなかったな)
俺の果実を食べたことでスライムとの力の差が開き、一時的にテイム関係を解除し中ればならなかったが、無事に戻れたようだ。
俺のせいでもあったので、二人の姿に心底ほっとした。
「それで? イリナはルーフェンで学んでいるの?」
「学んでないの!」
「なんでよ!」
「あはは、ボク達は昨日この街に着いたばっかりだよ」
「ええ? タウの町を出てから半年以上たってるじゃない。どれだけ寄り道しているのよ!」
(確かに、めちゃくちゃ寄り道はしていたな)
「ゼンダは学んでるなの?」
「私はお爺ちゃんと入学前の下見と言うか、体験入学中よ。……そうだ! イリナも体験入学すればいいじゃない。いつでもできるって言ってたわよ」
「体験入学なの?」
(おお、良いじゃないか。それで本格的に学ぶかどうか判断したらいいんだよ)
「じゃあ、そうするの!」
ゼンダも午後から受けるというので俺達もその時について行く事になった。
案内されたルーフェンはドーム型の形状をしていて四階建ての建物だ。
壁も屋根も白に統一されていて、装飾の無い外観はここが学び舎であると語っているようだった。
「こんにちはゼンダ。っと、そちらの方は?」
「イリナはテイマーなの。私と一緒で体験入学しても大丈夫でしょうか?」
「ああ、いいよ。なにか身分証明できるものはある? あれば手続きも簡略化できるから、このまま見学できるよ」
「冒険者カードがあるの!」
「はい。承りました。手続きは……」
「私が代わりにいたしておきます。これは私の身分証明書です。イリナ様、私は手続き後は情報収集に行ってまいります。私に用がありましたら、宿かギルドに来てください」
「わかったの」
「では、確認しますね。――っ! これは最上級冒険者でしたか、すごいと共にいらっしゃるのですね。……はい、手続きはあちらでお願いします。それでは館内の説明をいたしますのでついて来て下さい」
(やっぱりビースナスは凄い冒険者なんだな)
ビースナスに手続きを任せて、その間に案内してもらう。
ルーフェンの授業は、午前か午後の選択制なのでこの施設に食堂は無いらしい。
イリナは楽しみにしていたのか、その話を聞いた途端に露骨にテンションが下がっていた。
「ゼンダさんは教室に行っていて構いませんが案内に参加するのですか?」
「私も一緒に行くわ。この子とはちょっとした知り合いなの」
「わかりました。あっ、私の名前はベルーヒです。よろしくお願いします」
「イリナなの。ティトなの」
そこでノエルが申し訳なさそうに手を上げた。
「あの、ボクはテイマーじゃないけど、一緒にいてもいいかな?」
「体験入学なら構いませんよ。親御さんと一緒の方も多いですから」
「よかったー」
「では、これから施設の案内をしますね」




