121 次の町へ
「ヤバいわねあのベット。私もスライムテイムしようかしら」
「ティトは最強なの」
「もう、その言葉を馬鹿になんてできないわ。夕食で出してた食材もヤバ過ぎよ」
スライムベットの寝心地が良すぎたようで、朝までぐっすり寝てしまったミッシェは見張りの交代をしなかったことをノエルとビースナスに謝った後に、感嘆の声を上げていた。
「また一人、ダーリンなしでは生きられない体にされてしまったようね」
「そうだね。ボクももうティトなしじゃ満足できない体になっちゃってるし」
(その言い方止めてくれる?)
朝ご飯を食べた後に、下流に向って下りながら、他の場所の水の溜まりをチェックして戻る。
ミッシェの仕事はまだ続くようなので俺たちはここでお別れだ。
「ミッシェ一人で大丈夫なの?」
「失礼ね。これでも何年もこの地域で警戒をしてるのよ? それにあの場所だって本来ならば、被害を覚悟で先に下流に情報を伝えるとか、応急処置してから応援を呼びに聞くとか、対処はいくらでも出来たんだから。まぁ、助かったのは事実だし、私もいきなりの事でテンパってたのは認めるけど……本当に助かったわ」
「被害が出なかったんだし、結果良ければすべてよしだよ」
「うふふ。今回ダーリンが居たことに感謝するのは当然ね」
ノエルが気にしないで良いと言い、エステルが感謝しなさいと言う。
ミッシェはどちらの意見も聞いて答えていた。
馬車も下流に近づき、いよいよミッシェと別れる。
「あのような事態も考慮して、調査の人間を増やしてもらうように次の町で私の方からギルドに提案しておきたいと思います」
「助かります。それから……あの、握手してもらえますか?」
「イリナは構わないの」
「違う。ビースナスさんとよ!」
「私ですか?」
「石柩のビースナスさんですよね?」
(ああ、そういえばビースナスは二つ名持ちの最上級冒険者だったっけ)
「ファンなの?」
「うるさいわね! 私の地域では英雄なのよ」
「なんだか、面と向かって言われるのは恥ずかしいですが、構いませんよ」
ビースナスも快く握手をして、その場でミッシェと別れた。
しばらく進んでいると、浮かし袋を使って走って行く馬車の姿も見かけるようになった。
そろそろ普通の街道に戻れそうだ。
「ティト様のベットも快適ですが、次の町ではすこしゆっくりしましょう」
「次の町も大きいの?」
「はい、商業の盛んな町です」
「いろいろなご飯が食べれるの!」
水の無い街道に出た後、一日進んで夕方ごろに町が見えてくる。
「見えてきました。商業都市トラオンです」
(トラオン? 何かどこかで聞いたような……)
「確か、ゼンダが言ってたテイマーの聖地じゃない?」
「ゼンダなの?」
「薄情な小娘ね~。忘れたの? ライバル宣言していたスライムを連れた娘の事じゃないの」
「忘れてないの! 確認しただけなの!」
(ああ~、ルーフェンってところがテイマーの聖地だって言ってたね)
「ルーフェンなの?」
「ルーフェンはテイマーの研究機関であり、教育機関ですね。確かに聖地と言われるのも納得です。どうしますか? 行かれますか?」
「先に屋台でご飯なの~。宿のご飯も楽しみなの~」
「小娘はほんとにもう~」
(宿でゆっくり後の事は考えよう)
町に着くと、聖地と言われるだけあって魔物を連れた冒険者が多かった。
宿の中も宿泊客にテイマーが多いのか、宿の食堂には人と魔物両方が溢れて、いつもより賑やかだ。
席がいっぱいなので宿の食堂では珍しく相席になった。
「あら? 小さなテイマーさんね。私はビルマ、この子はライア。よろしくね」
「イリナなの。ティトなの」
「とってもかわいいスライムさんね。まぁ、私のライアの美しい毛並みには勝てないけど」
「ちょっと、ダーリンの良さがわからないなんて、あんたの目は節穴なんじゃないかしら?」
「おいおい、毛並みなら俺のヘッド君のトゲトゲが最強だろ?」
「はぁ? 何よあんたいきなりそんなチクチク話にならないわ。触れないじゃない」
「ちょっとちょっと~。毛並みなら俺のも負けてないぜ~」
相席になったビルマがテイムしている狼の魔物を褒めると、隣の席のテイマーらしき男性も反応して、自分のテイムしている魔物の良さを称えだした。
そして、その波があっという間に食堂全体に広がる。
イリナは興味が無いようで、注文したご飯が来るのを待っている。
「お待たせしました。ビックリした? ここではテイマーの自分の魔物自慢で騒ぎになるのは日常茶飯事なのよ」
給仕がイリナの頼んだ肉料理を運んでくるとそんなことを言って来た。
再度視線を騒ぎの方に向けると、中央で俺の凄さを力説するエステルの姿が映った。




