123 案内と挑戦状
「まずここは魔物の習性や生態を学ぶ部屋です」
案内された場所は教室のようで、廊下のガラスから中の様子を見る事が出来た。
中では教卓の前に教師が立ち、教鞭を執っていた。
生徒たちは机で教師の言った事を必死で取っている。
黒板はないし、生徒の方も年齢も種族もバラバラだが、どこか前世で見た授業風景を彷彿とさせる。
(へぇ〜。学校って感じだなー)
「はいはい。すでにテイムしている魔物がいるのに、魔物の生態を勉強をするのはなんでですか?」
「生涯でただ一匹しかテイムしない人も多いですが、状況によってはテイムを強いられることもありますので勉強しておいて損は無いんです。好物や思考を理解しているのといないのとではテイムの成功率も変わりますからね。それに他の魔物の考え方を理解すると、自分のパートナーにそれを反映できるっていうメリットもあるんです」
「へぇーなのー」
「まぁ、魔物を相棒とするテイマーが他より魔物の知識がないって言うのも、なんか恥ずかしいじゃない? 私も学んでおく方が良いと思うわ」
「ゼンダは真面目なの」
流石は聖地と言われるだけあって、教室の数も多く、五部屋ある。
次に案内される場所は上の階だ。
階段を上ると、黒いカーテンで日の光が遮られ暗くなっている。
廊下の窓も同じようにカーテンがかかっていて中が見えない。
「ここは魔力の訓練を行う部屋になります。テイムも魔力を使いますから、ここで魔力量を増やしたりコントロールを学んだりします。基本的には精神統一しやすいように落ち着いた空間になっていますので、くれぐれも騒がないでくださいね」
「わかったのー」
「ちょっと、イリナ声が大きいわよ!」
「あんたが一番大きいわよ」
「しー! なの」
魔術の訓練する教室も同じように五部屋あるようだ。
さっきもそうだったが、部屋の中を魔力探知で見ると、しっかりと人がいた。
俺が思っている以上にこの学校(?)で学んでいる人間は多そうだ。
「最後は演習場ですね。ここでは実際に動きながらテイムに付いて勉強します。メインとも言えますので規模は他より大きいですね。体験入学は主にこの演習場で行いますので入りましょう」
ベルーヒが扉を開けて中に入ると俺達を呼んだ。
外からドーム状になっているとわかったように、建物の中心は広い運動場になっていた。
そこで一人周りをきょろきょろと見ながら一人で立ち尽くしている少年が目に入る。
少年もベルーヒの姿に気がついたようで、真っすぐこちらにやってきた。
「あれ? フレヒトくんは他のグループで講義を受けていなかったんですか?」
「……」
フレヒトと呼ばれた少年は無言のまま頷くと俺達のグループと合流した。
奇しくもフレヒトのテイムしている魔物もスライムだ。
この場に三人のスライムテイマーがいることになる。
(スライムをテイムしてる人って多いのかな?)
「彼も体験入学に来ている生徒だよ」
「スライムなの! 一緒なの」
「そうなんだよ。凄い偶然もあるものだよね。体験入学とはいえ、僕の受け持ちでスライムのテイマーを三人も教えられるなんて貴重な経験だよ」
スライムをテイムしている人間が多いのかと思ったが、ベルーヒの良いようではスライムのテイマーは少ないようだ。
(まぁ、弱いからね)
フレヒトと呼ばれた少年のスライムを見て見る。
今まで見てきたスライムとは別で、赤い色をしている。
こんなことを言うのは変かもしれないが、悪意は感じないのにどこか禍々しい気がする。
「イリナなの! ティトなの!」
「フレヒト……です」
イリナがいつものように自己紹介を済ませる。
フレヒトは茶色の髪だが、一部分だけが白髪になっているかわった髪型だ。
内向的なのか、積極的に話しかけても反応が鈍い。
それよりも……。
(なんか俺の事を睨んでる? いや、違うな。ゼンダのイデアの事も警戒してるみたいだ。えっ? スライムを嫌いだったりするのかな? スライムをテイムしているのに?)
「じゃあ、まずはテイムの遊びをしてみようか。イロニー、来てくれ」
ベルーヒが運動場の中央に向って声を上げると、ドダダダダと何かが土煙を上げながら掛けてきた。
目の前まで来て空中に飛び上がると、クルっと一回転して着地する。
それは一見するとただの猫の様に見えるが、尻尾が二本あった。
「この子はイロニー。さあ、君たちにはこの僕のテイムしているイロニーをテイムで上書きして見て」




