117 あれ? なんかやっちゃいました?
「危なくないの。ティトがいるから大丈夫なの!」
「スライム? ははぁ~ん、初めてテイム出来て気持ちが大きくなっているのね~。残念だけど、スライムはよわよわな魔物なのよ。あなたを守る事なんて出来ないわよ?」
「ちょっと! ダーリンをよわよわ扱いは聞き捨てならないわね」
「妖精までテイムしてるのねー。でも、ちょっと躾がなって無いわよ」
「なんですって! ムキー」
(まぁまぁ、落ち着いて)
エステルをなだめるがイリナも納得していないようだ。
すると、テイマーの女の子が傍らのカエル型の魔物に指示を出す。
「じゃあ、これをよけて見なさいよ。ペーちゃん! 舌で絡めとるのよ!」
(ええっ、いきなり攻撃してくるの!)
「キャーーー! ダーリン!」
舌が俺に巻き付いたかと思うと、一瞬にして巻き取られて、口の中にしまわれてしまった。
ペーちゃんと呼ばれた魔物は、気を使ってくれているようで、口の中は広めに確保されているが、さすがにコレビックリだ。
(ペーちゃんは指示に従っただけだけど、ちょっとイタズラしてやるか)
口の中が湿っていて、ちょっと気持ち悪かったこともあり、生産で俺の周りにシリカ苔を生産して出す。
急に口の中の水分を吸われたペーちゃんが驚いて俺を吐き出した。
しかし、その後、予想外の展開になる。
「キャー! ダーリンがカサカサになってしまったわ!」
「ティトが死んじゃったのー」
「ここまでするなんて、いくら何でも酷いよ。ティトが何したって言うの!」
「えええ! ペっ、ペーちゃん、私そこまでしろなんて言ってないわよ! あわわわ! ごめんなさい、私ー。わぁーーーん!」
イリナ達が俺を見ると非難するように少女を睨んだ。
その視線を受けて、少女も焦って謝罪すると泣き出してしまう。
吐き出された俺の姿は、ただシリカ苔に包まれている状態だ。
しかし、水分を吸収する前のシリカ苔が、ひび割れてカサカサになっている、緑色の土みたい姿だとは俺も思わなかった。
自分で見ても、その姿は心配になりそうな光景だ。
(大丈夫! 俺は何ともないよ)
「ティト! よかったのー」
「ダーリン、私を残して言ったら許さないんだからね」
「ティトが脱皮したみたいになってる。でも良かったー」
「へっ? 生きてたの? ああ~、よかったぁ~。焦らせないでよ~」
全員が俺の無事を見てヘナヘナとしゃがみ込む。
「だいたね! テイムしてるんだから、あんたは無事かわかったでしょ!」
「そもそも、いきなり攻撃をする人間が悪いと思いますが?」
「それは……先輩として危機感を持たせようと……ごめんなさい」
ビースナスに注意を受けて、気まずそうに眼を逸らしたが、ちゃんと謝った。
皆を驚かせてしまったが、少女にとっては良い薬になったようだ。
「ティト様もイタズラが過ぎるのでは?」
(ギクッ! って、別に皆にイタズラしようとしたわけじゃ無いぞ)
ここでちゃんと言い訳をしておかないと、俺にまで飛び火しそうだ。
そう思っていると、俺の魔力探知が何かが接近してきているのを捉える。
その数は三頭だ。
(何か来る! イリナは俺のところに!)
「わかったの!」
「この足音、結構大きな獣が来るよ」
「なんですって! それはラクスベアよ。熊型の魔物でこの時期は冬眠明けで、腹を空かせていて狂暴なの! だからこの場所は危ないって言ったのに!」
森から飛び出してきた三匹の内、二匹は魚へ向かって行った。
しかし、その中で一番デカい個体がこちらに狙いを定めてきた。
目線の先は、少女のテイムしているカエルだ。
「大きすぎる! 私が時間を稼ぐからあなたは逃げなさい」
(時間を稼ぐってことは勝てないんだな? じゃあ、俺が対処しよう)
俺の実力を見せておいた方が、この後の話しが早くなりそうだ。
俺はピョコピョコと少女の前に出る。
「危ないわよ!」
「大丈夫なの。ティトは最強なの!」
「だから、スライムはよわよわなんだってば!」
「ガァア!」
少女がイリナの方を振り向いたタイミングでラクスベアが襲って来た。
(恨みはないけど、容赦はしないよ。スライムシールドバッシュ!)
俺は触手を伸ばして殴りつける。
スキルで体積を増やし威力を上げる。
先端には流動金属を硬化させた盾を装備している。
シールドバッシュなんて言っているが、ただのパンチだ。
パンチは見事に熊の頭を正面から捉えたようでゴイィィィン! っと派手な金属音があたりに響いた。
殴られたラクスベアが白目をむいて、巨体を横に倒した。
その音で魚を取っていた他のラクスベアも驚いて逃げていく。
(ごめんなー)
「ティトの勝利なの!」
「なっ、スライム……よね?」
胸を張るイリナと俺を交互に見ながら、少女が呆然と呟いた。
(ここは、あのセリフの良い時だな!)




