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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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113/123

113 まだまだやることはある

 医療研究所に戻ってゲラーデにエルドの居場所を聞いて向かう。

 エルドは個人の研究室を持っているようで、そこで薬の調合をしていた。

 エルドがこちらに気が付くと文句を言ってくる。


「おっ、お前ら戻ってきたのか。って言うか遅ぇじゃねぇか」

「薬の進捗はどうですか?」

「正直、わからねぇとしか言えねぇ。本来なら同じ病気のマウスに投与して経過を見るもんだが、まずアイリア嬢の症状を再現できねぇし、その症状のある人間以外には結局これは毒でしかねぇんだ」


 エルドは失敗の可能性を考えて、一気に作らず瓶の液を小分けにして作っていたようだ。

 しかし、成功してかどうかの確認がエルドには出来ていない。


「早く確認してくれよスライム」

「ティトなの!」

「おっ、おう、頼むよティト様!」

(了解!)


 完成品を目の前に差し出されたのでスキルを使って見る。



 結果成功

 結果:ドーン茸【変異種】

 変異によって生命力を上昇させる成分に変化した毒キノコ。


 注意:この素材を鑑定吸収してしまうと、この未完成の薬からはドーン茸の成分が消失し薬の効果が完全に失われます。

 吸収しますか? YES\NO?

(以下の注意文は省略)


 結果成功

 結果:ゲデン草【変異種】

 変異によって体中に炎症を抑える成分に変化した毒草。


 鑑定成功

 結果:フュデン茸【変異種】

 変異によって内臓の細胞を元に戻す成分に変化した毒キノコ。


 鑑定成功

 結果:ウム草【変異種】

 変異によって血液の流れを正す成分に変化した毒草。

 また他の成分を一部に留める作用がある。


 鑑定成功

 結果:ドレヘン花【変異種】

 調合によって他の成分を変異させ役割を終えた花。



(これによると生命力を上げて炎症を抑え、変異した細胞を元に戻す薬にはなっていると思うが……)


 結果を紙に書いてエルドに渡しながら、ふと俺の中で疑問が生まれた。


 この薬が効くとしても、それは一回で済むものなのだろうか?

 細胞を作り変えるような作用は体の負担が大きいだろう。

 病んでいて体力の落ちている人間ならば、その負担は命の危険につながる可能性もあるだろう。

 それを避けるために、少しずつ改善していくような効果に調整されている可能性もある。

 ポーションで劇的に回復することに慣れているこの世界の人間には効果を感じられないかもしれない。


 そうなった場合、一時的に回復に向かっても、結果が出るのに時間がかかってしまうなら、現時点で薬の正当性の証明にはならないし、プランハルが処刑されてしまう。

 継続的な摂取が必要だった場合、薬の素材と適切な用法を知っているプランハルが死んでしまった時点で全てが終わってしまう。


「この結果だけを見れば、無事に完成したようだが、副作用もわからねぇ薬をぶっつけ本番でアイリア嬢に使うのには抵抗があるな……相談だけでもプランハルにしたいぜ……」

(結局はプランハルを救出しないとダメかもしれないなー)


 スキルで分かった内容を見たエルドの判断は「薬としては完成している」だったが、エルドも完全には薬の効果を信じられていないようだ。

 やはり、プランハルの意見が重要だ。


「救出しに行くのなの?」

「無理やり救出してしまうと、余計に罪が重くなる可能性がありますね」

(救出するかどうかは、プランハル本人に薬の説明を聞いてからの判断になりそうだね。ただ、結局は救出する流れになると思うよ)

「じゃあ、救出した後にどう領主を説得するかだね」


 プランハルを助け出した場合の行動方針だけ話し合った後、前に侵入に使った場所から同じようにノエルに投げてもらう。


『私は二度とごめんだって言ったのに……』

(ごめん。エステルは俺が絶対守るから安心して)

『んっもう~。ダーリンたら! 私をこの場でキュン死させるつもりかしら~』

「じゃあ、行くね~」


 ノエルが振りかぶって投げる。

 二回目と言う事で悲鳴は上げなかったが、やはり怖い。

 おそらく、この恐怖は自分が死ぬ可能性のある勢いで飛んでいると、本能で理解しているからだろう。

 俺は湧き上がる悪寒を必死に押さえながら、着地までの一連の流れをなぞる。


(ふー。本当にこれで最後にしたい)

「同感だわ。じゃあ、周りを確認して窓を開けるわね」


 確認の後に窓を開けてもらい中に入る。

 中に入ってしまえば、魔力探知で部屋の中を見る事が出来るので、プランハルの位置と、それ以外の人間が部屋にいないか確認する。


(よし。いるのはプランハルだけだな)

「――ッ! ? どうしてスライムがここに?」


 俺のかけた薬草液が効いたようで、プランハルは意識がしっかりしていて体の傷も消えている。

 扉が急に開いたことで警戒から体を強張らせたが、俺の姿を見て混乱したように声を出した。

 喋れない俺の代わりにエステルが話しかける。


「あんたの薬を完成させたわ。あの薬の話をしたいのよ。薬に即効性はあるのかしら?」

「完成させたのですね。よかった……。残念ですが、あの薬に即効性はありません。むしろ、新薬ですのでアイリア様の体調を見ながら量を調節しながら、長期間治療を続けなければならないと思います」

(ああ~、やっぱりか~)


 そこはご都合主義な展開を期待したが無理だったようだ。


(プランハルを脱獄させるにしても本人の意思が重要よな)

「もうすぐあんたの処刑は執行されるわ。悠長に結果を待っているわけにはいかないわよ? 逃亡犯として指名手配されても治療をする覚悟があなたにあるのかしら?」

(えっ? そこまでの事になっちゃうの?)

「アイリアを攫っても治療をする覚悟を問われているのですね? それならあります。命を懸けてアイリアを治療して見せます」

「愛ね! ダーリンやるわよ」

(おっ、おー!)


 俺はイリナから預かっていた認識阻害の魔道具を持ったままプランハルにくっ付いて魔道具を装備する。

 これでプランハルにも認識阻害の魔道具の効果が及んだはずだ。


「これであなたは他人から別の人物に見えているわ。このまま部屋を出るわよ」

(オーケー、扉を外すよ)


 鍵はかかっていたが、俺にとって開けるのは簡単だ。

 蝶番の部分に体を入れる事が出来れば、扉を外せるので鍵は意味をなさない。


(牢屋だったらこんなに簡単にはいかなかったな。職員の面会を避けるためだったのか、牢屋じゃなく普通の部屋に移されていて良かったよ)


 部屋の外に出た後に改めて、魔力探知で周囲を確認する。

 領主が街に連れ出したのは側近だったのか、この部屋の警備はかなり手薄になっていた。

 エステルにプランハルへの指示を伝えてもらう事で、誰にもバレずに抜け出す事が出来た。

 多少見られたとしても、認識阻害の魔道具の力で印象は薄くなるし、そこに居ても自然な人物に見えているので逃亡は楽勝だった。



「エルド! 君が俺の薬を完成してくれたのか!」

「おう。プランハル。無事でよかったぞ、こんちくしょうが!」

「わかったから、加減してくれ。まだ本調子じゃないんだ」


 あらかじめ決めていた通り、エルドの研究室で合流すると、無事なプランハルを見て、エルドが抱きしめる。

 見た目通りの怪力なのか、プランハルが苦しそうに返した。


「本当に出来ている。驚いたな!」


 瓶を持ち上げて見つめたプランハルが感嘆の声を上げた。


「お前にはわかるのか?」

「ああ、俺は鑑定のスキルを持っているんだ」

(ああ、それでアイリアの容態がわかったり、丁度いい効力の新種の素材を探せたりしたのか)


 鑑定の能力は貴重なんだろう。

 もし他に鑑定の能力を持っている人間がいれば、薬が毒だと言われるのは仕方ないにしても、アイリアの症状は判明していたはずだ。


「鑑定ですか。もしその能力を報告していれば王国は身柄を保護していたはずです。なぜ捕まった時には言わなかったのですか?」

「それは……。そうしてしまえば、私の身柄は王国の中央に移動させられるでしょう。私は……アイリア様の傍に居たかったのです」

「愛なの!」

「おい、プランハルお前マジかよ。まさかアイリア嬢も……」

「なるほど、叶わぬ恋ですか」

「わかんないよ? アイリアさんの命を助けたら領主様も許可してくれるかもしれないし」

(その時には鑑定の能力を伝えてもいいかもな)


 思わぬ話題で盛り上がってしまったが、それ以上の話は全て終わってからだ。

 次はアイリアの所に向って完成した薬を飲ませなければならない。

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