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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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112/120

112 御使い作戦

「足止めって言っても何をするの?」


 移動しながらノエルが尋ねてきた。


(女神の使徒を探して街に出ている領主を足止めするのなら、やっはり実際に奇跡っぽい事をして、あっちこっちで噂になるのが一番かな? 偽の神託をただの夢だと思われたら城に帰られちゃうだろうし)

「奇跡のようなことでも起こして回れって事かしら?」

「それが一番効果的ですね。それでは、私の方でも噂を流したいと思います」


 ビースナスはエステルの疑問を聞いて賛成すると、メイド服を脱いだ。

 いきなり何をするんだと思ったが、下に服を着ていたのか、一瞬で特徴のない村人のような姿に変わる。

 普段はメイドのような服を着ているせいか、普通の恰好をしただけで別人になったような印象をうける。


「凄いの! 変装なの?」

「人間、印象の強い部分が記憶に残りますから、普段はあえて目立つ服にして他の印象を弱めているのです。仕事をする上で便利なんですよ」

「プロっぽいの! ビースナスかっこいいの!」


 イリナが感動してビースナスを褒めている。

 自慢げに言っているが、俺はあの服装は絶対にただの趣味だと思う。

 エステルの服を作った時の、あの謎のファッションショーの時の興奮した姿は演技ではなかったはずだ。

 思わずジトーっとした視線を向けてしまったが気持ちを切り替える。


(まずどこから始めるかな。教会からがそれっぽい?)

「教会? そうだね、教会なら本当に困っている事があるかもしれないし、丁度いいかも」

「では、街の西の端にあるラント教会から東に移動しながら事件を起こしてください」

(事件って! ……まあ、ある種の事件だけど。それで助かる人がいるならいい事だよな)


 ビースナスが地図に丸を書いて渡してきたので、受け取ってみんなで場所を確認する。


「私はなるべく領主が混乱して、イリナ様の追跡をされないように、ばらばらの場所で噂を広げたいと思います。では、私は行きます」

「いってらっしゃいなの~」


 ビースナスと別れてから教会に向って走る。

 イリナには認識阻害の魔道具を付けさせて、ティトマークⅡの状態(パワードスーツのような形態)になって動きをサポートできるようにしておく。

 移動の途中に人に目撃されたくはないので、先頭をノエルに走って人のいない道に誘導してもらう。

 速度も出ているので、すぐに教会に付いた。


(よし、今なら教会の中に人はいないな。入ろう)


 魔力探知で中を探って人の位置を確認した後に中に入る。

 来たタイミングでエステルに光ってもらい、降臨を演出する算段だ。

 現在は中で食事をしているようだ。

 教会内には孤児も住んでいるようで食堂にはたくさんの子供たちがいる。

 だが、運営が苦しいのか、並んでいる食事は具材のほとんど入っていないスープのみだ。


(これはやる事が決まったな。中庭があるし、そこにリンゴンの木を作ろう。そのまま食べても良いし、売ってお金に換えてもいい)

「それは奇跡っぽいね。ティトの出したリンゴンなら人気が出るのは間違いないよ」

(おっ、神父が来たっぽい! エステル大丈夫?)

「任せてダーリン! ダーリンの威光を見せつけるわよ」


 神父が入り口に差し掛かったタイミングで女神像の裏からエステルが光を出す。


「これは! 女神像に輝きが!」

(驚いてるな。相手は聖職者だし、長くしゃべるとボロが出るだろうから、冷静になる前に畳みかけよう)

「神父よ。あなたの信仰心は私に届いています。敬虔なるそなたに助けとなる者を使わしました。受け入れるがいいわ」

(エステル、素が出ちゃってるって)

「おお、女神エーヴェのお心のままに」


 信じてくれたようで神父が床に跪いて頭を下げた。

 そのタイミングでイリナに出てもらう。

 足音で疑われても嫌なので、ジャンプで一気に神父の目の前に着地する。

 足裏にクッションを作って着地の音をごまかすと、フワリと舞い降りたような感じになった。

 足が見えたことで顔を上げた神父が、驚愕に目を見開いた後に、畏怖の視線を向けてきた。


(信じてくれたみたいだな。後は奇跡を演出して次に移動だ)

「神父、中庭に案内していただけますか?」

「お心のままに」

(完全に信じているな。神父にはイリナがどんな姿に見えているんだろう)


 認識阻害の魔道具は、その姿を見た人間のイメージにある程度依存する。

 見たい姿に見える性質上、神父にとって理想の御使いの姿に見えているだろう。


(裸で薄い衣を纏った姿とかに見えていたら嫌だな~)


 この世界でも宗教画は存在する。

 例にもれず裸婦もあるので、そのイメージで見られていないことを祈るばかりだ。


「こちらになります」


 神父の案内で中庭に移動すると、さっそくイリナに魔法をお願いする。

 街中だが、この土地にもしっかり魔力があるので、ファルステンは維持できるだろう。

 イリナから生成する木のイメージが送られてくるので、少し調節して切り株のような形にする。

 これに俺の生産したリンゴンの木を接ぎ木するのだ。


「ファルステンなの」

(よし、スライム生産!)


 神父に聞こえないように小声で呪文を唱えた後、生成された木に俺のリンゴンの木を合わせる。

 すぐに馴染んで継ぎ目もない。

 テイムによりタイミングも完璧だったので不信に思われたりはしないはずだ。


「おおお、これが御使い様の力……女神の奇跡に感謝申し上げます」


 神父がもう一度跪いて頭を下げたので、最後に説明をする。


「この木から収穫できる実は全てあなたたちの者です。まずは皆で食べなさい。その後に売りに出し、この教会の糧とすることを許します」

「なんという慈悲深きお言葉。謹んで実行させていただきます」


 それを聞き終わる前にジャンプして中庭から外に出る。

 消えたように見せることで神出鬼没さを演出して、より御使いっぽさを出す。


(あとは、行く先々で御使いっぽい事をしていくだけだな)

「がんばるのー」

「おー!」


 その後は、お墓で悲しんでいる遺族の為にお墓に花を出したり、飼い猫が行方不明になってしまった少女の為に、魔力探知で見つけた後にノエルに連れてきてもらって、動いていない状態から猫を呼び出したように演出したりして、御使いの噂を広めていった。

 向かう先で、すでにビースナスが噂を広めていた事もあり、名乗る前から御使いだと認識して見てくる人間も増えてきた。


(なんだか詐欺をしているみたいで心苦しいな~)

「でも、みんな助かってるし、良いことしているんだから良いんじゃないかな」

「そうなの。みんな喜んでるの」


 貧困層に炊き出しをしている現場で食べ物を出しながらそんなことを言っていると、ビースナスがこっちに来た。


「東の端まで来たようですね、お疲れ様です。領主は見事に釣られたようで、街中で聞き込みに必死になっっています」

(よし、じゃあエルドの元に戻ろう。薬の出来具合を確認しなきゃな)


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