111 素材を探して
「使徒が降臨したと嘘をついたのですか?」
「痛めつけられていたのを助けるためだもん、仕方ないよ」
合流した後にプランチェ薬草園に向かっている途中、騎士を連れて走り回る、血走った目の領主の姿を見て部屋でのことを説明すると、ノエルは仕方ないと言ってくれたが、ビースナスには冷ややかな目で見られてしまった。
「娘の事で藁にもすがりたい気持ちになっていたんでしょうね」
「薬を作ればすべて解決なの!」
「そうだな。少なくとも薬が完成しない事には救えねぇ。急いでいこうぜ」
(そうだな。この際、領主は無視しよう)
所詮は俺はただのスライム。
出来ることは多くないのだ。
決して面倒だと思ったからではない。
プランチェ薬草園に着くとエルドがクロイに話しかける。
「クロイ! プランハルの部屋に案内してくれ」
「エルドさん! まさか兄の無実の証拠が出たのですか!」
「いや、それはこれからわかることだな。とにかく頼む」
プランチェ薬草園がプランハルの実家なのはわかったが、まさか働いていると言っていたクロイは、プランハルの妹だったようだ。
駆けこむようにしてクロイの案内でプランハルの部屋へ突入したが、目に入ったのは、ある種の予想通りの光景だった。
「何にもないの!」
「兄の私物は領主様の命で全て持ち出された後ですから」
「ああ、俺もそれはわかってる。だが、持ち出された荷物はその時に全て見せてもらったが、その中には新種の植物なんて無かった。だから俺もプランハルの実家を探そうなんて思わなかったんだ」
(プランハルは実家にあると言っていたし、どこかに隠していると言う事か)
普通に見ただけでは家具すらない部屋だ。
しかし、俺には魔力を見る能力がある。
俺は魔力探知を使って部屋全体を見る事にした。
(おっ、魔力の反応があるぞ?)
「どこなの?」
(天井だな)
「何もないの!」
「なんだ? 天井に何か反応があるのか?」
上を見上げてみると梁がむき出しになって屋根が見えるだけだ。
しかし、梁に魔力の反応がある。
「上ですか? お願いできますかエステル様」
(そうだな。エステル頼む)
「ダーリンの頼みなら喜んでよ~」
エステルが俺の指示に従って梁まで飛んで行く。
「ん~。何かあるような気はするわね~」
(行ってみるしかないか)
俺は触手を伸ばして梁まで上がる。
(ん~。梁が光ってるだけなんだよな。って、アレ? これ、引き出しになっているのかな?)
梁に近づいて改めて魔力探知で見て見ると、光が線の様になっている。
取っ手はないが俺には関係ない。
粘着力を上げて引っ張りだしてみると、引き出しの中には紙と素材らしきものが入っていた。
(あったぞ。素材とメモのようなものがある!)
「あったんだね」
「本当か! かぁー! いいぜ。全てが上手くいきそうな気がしてきた」
下に降りてメモをエルドに渡しす。
メモに書かれていたのは、アイリアの容体と瓶の中の液体の使い方だった。
メモによると、アイリアの病気はお腹の中の細胞が魔術的に変異したために体を蝕んでいると言う結論だった。
その症状は元々の正常な細胞と見分けが付かないらしく、回復の魔法やポーションでは効果ないどころか悪化させてしまうと書いてあった。
だから毒に近い成分で『攻撃』の形で体に作用させるしかないと考えた様だ。
(正常な細胞の魔術的変異……こっちの世界ならではか)
魔術的な変異ならば俺の魔力探知で見分けられるかと思ったが、医療知識の無い俺ではわかったところで意味はない。
「まずはこの素材を鑑定してくれるか? こいつがレシピに乗っている素材か確認したい」
(……ああ、そうだな。スキル鑑定吸収発動)
鑑定成功
結果:ドレヘン花【変異種】
独特な香りで方向感覚を狂わせる花
調合に使うと他の成分が反転するので注意が必要。
変異によってその効果が強化されている。
吸収しますか? YES\NO?
(この素材の名前はドレヘン花だよ)
「ドレヘンって花らしいわ」
「レシピの最後の素材だ。これで完成させられる! 俺は急いで戻る。ありがとうよ!」
エルドは素材を掴むと言ってしまった。
完成までどれくらい掛かるか分からないが、俺たちのやる事は一つだ。
(さあ、今度は領主の足止めだな!)




