110 窓まで飛んだ
※作者が整合性を取れなくなったためエピソード107から109までの内容を大幅に書き直しました。
直前まで読んでくださった方には大変申し訳ありません。
107からの前書きに変更日を入れてありますので、2026年7月24日より前で読んでいた方はご確認ください。
(まずは居場所の確認からだな!)
俺は魔力探知を使ってプランハルの場所を探す。
大雑把に広範囲を見た後に魔力のある場所を一つずつしらみ潰しに見ていく作戦だ。
すると、魔力探知で中を探れない場所がある事に気が付く。
エルドに聞いてみたところ、牢屋がある場所では無かった。
そして、牢屋らしい場所には誰も入っていなかった。
(まずあそこで間違いないだろうな~)
「どうやって侵入するかですね」
「強行突破なの!」
(いやいや、無茶だし目立っちゃダメでしょ)
「見たところ、場所を知られないようにしているだけで、普通の部屋のようです。窓からティト様だけが侵入するなら容易に思えます。話しを聞くだけならばエステル様もいらっしゃいますので」
(それが一番安全かな~)
「じゃあ、その窓まではボクが投げるね!」
侵入経路が決まるとノエルが肩を回しながら言う。
俺達が直接プランハルのいる所に乗り込んで、素材の保管場所を聞き出すと言うとゲラーデは危険だと言うが、エルドは大賛成してくれた。
そして、その部屋に俺を投げ込むのにちょうどいい場所へ案内してくれた。
(あの~。かなり離れているようなんですが……)
「大丈夫だよ! ボクを信じて」
「私は人が来ないように警戒と適度な陽動をしておきます」
場所は領主の城の外の塀にある兵士の休憩所だ。
エルドは治療の研究所に勤めているだけあって兵士からの信頼も厚いようだ。
プランハルの捉えられているであろう部屋の窓に面した側に立つ。
窓までの距離は百メートルも離れてないが、高さがあるためかなり怖い。
(そのまま地面に叩きつけられたら俺でも死ぬかも……)
ちょっとイリナと落ちた崖を思い出して背筋が寒くなるが、ノエルを信じると決めた。
(さぁ~。思いっきり投げてくれノエル)
「うん。それじゃあいくよ~~~~。それ~!」
(わあああああああぁぁぁぁぁぁー)
わかっていても叫んでしまった。
俺の心の声がイリナとノエルにしか聞こえなくてよかったと思った。
凄まじいスピードで目標の窓が迫ってくる。
(早い早い! このまま行ったら窓突き破って凄い音出ちゃうから!)
俺は体を伸ばしてパラシュートの様にして勢いを殺しながら、触手を窓に飛ばして軌道がズレないように調節する。
そのおかげで音もたてずに窓に張り付くことが出来た。
『もう二度とごめんだわ』
(本当にな)
どうやらエステルも怖かったようだ。
疑似枝から出てきたエステルが、窓をすり抜けて中に入る。
俺の疑似枝に入れるくらいなので妖精は霊体の様に物質をすり抜けられるようだ。
(ずっと一緒にいるのに新たな発見ってあるもんなんだな)
「私はダーリンの良い所を毎日発見しているわよ? 中には見張りはいないようね」
入った部屋は使われていないようで、真っ暗な上に誰もいなかった。
そして、隣の部屋から明かりが漏れている。
魔力探知で中を探ると二つの反応がある。
しかし、一つは反応が弱い。
(中を探るぞ)
ドアの下の隙間から中に侵入して、バレないように死角に潜り込む。
中は普通の部屋だが、中央に椅子が向かい合って置かれており、二人共椅子に座っている。
「言え! 解毒薬があるんだろ!」
「ですから……あれは薬なんです……早く完成させなければ……」
「まだ言うか! あれは毒だ! 毒殺しようとしたんだろう」
一人の男が立ち上がり棘付きの小さな分銅が付いた短いムチを振るう。
「うっ……あぁ……薬を……あと少しなんです……」
「黙れ! 黙れ!」
恐らく打たれている方がプランハルだと思う。
拷問されているのか周りに血が飛んでいる。
(このままじゃ、プランハルが死んじゃうぞ。どうすれば良い)
「ダーリン。ユミナのやったプランで行きましょう!」
(えっ? あれをやるの?)
エステルが言ってる作戦は、シュニスの村で行った、ミュールという軽い幻覚を起こすハーブを使った幻覚催眠作戦だ。
「うぅ……っ」
(えーい迷ってる場合じゃないか! そりゃ~ミュールスプラッシュ!)
念のためにエステルに避難してもらってハーブを散布すると、密室の所為もあって二人共フワフワした様子になる。
「あとは私ね! あーあー。ベルセプよ」
「その声は何者だ!」
「頭が高いわ愚か者! ダ―……じゃない。女神の前で有るぞ!」
「女神! まさか娘を救いに来てくださったのですか!」
「そう! 救うために遣いを寄こしたから迎えに行くのよ。門の方よ! ダッシュよダッシュ!」
「はぁぁぁ! 御使い様! 急がねば~」
相変わらず途中から適当になっていたが、無事に騙せたようだ。
俺はすぐに薬草を体内で調合してプランハルにぶっかけた。
「うう! あなたは……どうか私の薬を完成させてください……お願いします」
「わかったから、レシピに使う残りの材料があるところを言いなさい!」
「残りの材料は……実家の……プランチェ薬草園の私の部屋に……」
(あっ、おい!)
「気絶したみたいね。場所は聞き出せたし急ぎましょう」
(そうだな)
プランチェ薬草園。
寄りにもよって俺が攫われる前に居た薬草園だ。
不思議な縁を感じながらも、俺はみんなの所に急いだ。




