106 プランチェ薬草園
一緒に薬草園まで来たお姉さんはクロイと言う名前のようだ。
この施設を管理している家の娘さんのようで、ここで働いていると言う。
クロイが入館の手続きをしてくれると言うのでお願いして薬草園に入る。
入館料もきっちり取られたが、薬草園にはそれだけの価値があった。
(お~、これは壮観だな~。学校の体育館くらいの広さか?)
薬草園は壁に囲まれているが、広さはかなりある。
種類は様々で、見上げるほどの木もあれば、実のなった低木もある、温室のようなスペースには鉢に入ったこの地域にない植物たちも並んでいる。
そして、その中にはしっかり自然スライムも混じっていた。
(大収穫だな~。これはホックホクだわ~)
自然スライムは鑑定吸収して、見た事ない種類の薬草も片っ端から食べていく。
この町に来て、すっかり薬草好きになってしまったようだ。
「ただのスライムも沢山いるのですね」
「スライムは医療行為に使われることも多いからね。もの町では大人気だよ」
「スライムで医療行為? 確かにティトのベットは柔らかくて最高だけど」
「ダーリンはベット以外でも最高なのよ」
ビースナスの疑問にクロイが答える。
ノエルにツッコミを入れているエステルも、結局は良くわかっていないようだ。
「詳しくなの!」
「えーとねぇ~。イリナちゃんはスライムをテイムしてるから、知ってるかもしれないけど、一つの薬草を食べさせ続けると、その薬草の力を持ったスライムになるのよ」
(俺が初めて甘露になった時か)
「その状態になったスライムは、怪我の治療に役立つの、傷口に付けておくと悪くなった部分を食べてくれて、傷口を清潔に保ってくれるのよ」
(ああ~、消化力が弱いから、腐敗した部分だけを食べるのか。しかも、薬草液が作れればそのまま治療も出来ると)
「でも、傷を食べたスライムはきっと自然スライムにはなれないわね。望まれてるとは言え、人の肉を食べ過ぎれば自然と契約できないもの」
俺はスライムの使い方として有りだと思ったが、エステルは気に入らないようだ。
「他にも、薬草の力を帯びたスライム同士の素材で作った方がポーションの効果が上がるのよ」
「ポーションは薬草の魔力的要素を抽出して、あとから粉状の薬草を溶かし込んで作るのが主流ですからね。魔法生物のスライムを材料に使うのは効果的ではありますね」
(ひぃ~。材料扱いは嫌だな~)
バラバラにされた自分を想像して俺は震えた。
それを見てかクロイが笑って訂正する。
「ごめんごめん。怖がらせたかな。薬草の力を帯びたスライムは貴重だから、めったにポーションには使わないし、使うとしてもほんの一欠けらだよ」
(ここにいるどのスライムよりも薬効があるってバレたらえらい騒ぎになりそうだな)
そこで、クロイが考える仕草をしてから声を落として話す。
「でも、ティトだっけ? そのスライムはちゃんと見張ってないとだめよ。スライムは国で管理しているけど、最近ではスライムを連れ去る事件も起きているの」
(スライムの連れ去り?)
薬草園の中には俺以外にも十匹以上のスライムが自由に動き回っている。
おそらく、薬草を食べさせての進化を狙っているのだろうが、量が多いと思ったが国で管理しているようだ。
「スライムを使役しようだなんて、人間は強欲よね~」
(別に、スライム達は嫌がってないし、良いんじゃないか?)
そもそも、生まれたてのスライムは弱いし、自然界なら捕食される事もあるだろう。
(……いや、俺みたいに【甘露】にでも進化しなければ、意外と天敵はいないか)
どちらにしろ、魔力探知で感じるスライム達の感情は「満喫している」だ。
のんびり生きるスライムにとって、お腹が満たされていれば他はどうでもいいのだ。
(食べ続けた先は、自然の一部になっちゃうんだもんな~)
スライムの連れ去り事件が起きていたとしても、俺ならば事前に気が付くことは出来る。
魔力探知で変な動きにはすぐに気が付けるのだ。
試しに、魔力探知を広げてみる。
すると、スライム達が一か所に集められて何者かに袋に入れられているのが見えた。
(えええっ! いきなりスライムが大量に攫われてるんだけど!)
「どこなの!」
(この施設の右の死角になっている所だよ)
「大変だ! スライムが攫われちゃう!」
「えっ? スライムがなに?」
「あっちなの!」
イリナ達がクロイをその場所に案内する。
(あっ、違うなあれは)
クロイがそのスライムを回収している集団に接触すると、普通に挨拶していた。
どうやらスライムを管理している国の機関のようだ。
回収されたスライムと同じ数のスライムが代わりに返されていた。
(なんだ、勘違いかー)
「……ダーリン!」
(えっ?)
イリナ達の方を見ることに集中していた俺は、後ろから来た存在に気が付かなかったようで、エステルの声に反応して視界を戻した俺の目に入ったのは、開かれた袋だった。




