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のんびりスライム道中 ~エルフの少女とのんびり世界を旅します~  作者: 千両
四章

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101/119

101 ペット探しの依頼

「ヴァネッサお嬢様、依頼を受けてくださる冒険者をお連れしました」

「案内ご苦労様ですジーノ。ようこそお出でくださいました。わたくしはヴァネッサ、この度はわたくしの依頼を受けていただきありがとうございます」

「ペットの捜索とお伺いしました」

「はい、三日前にペットにしていたシルトタルが逃げ出してしまったので、その確保をお願いします」


 ヴァネッサが無表情で告げる。

 美人の感情の無い顔は迫力がある。

 必死に感情を殺しているようだが、ペットに対して向ける感情ではない気がする。


「確保ですか……シルトタルは水辺を好むようですが、逃走経路に心当たりは?」

「わかりません。しかし、シルトタルは狂暴になっている可能性があります。お気をつけてください」


 そこで一度、会話を区切る。


「ティト様、私は町の中で聞き取りをしたいと思いますが、いかがいたしますか?」

「良かったら、私の話し相手になっていただけますか?」


 お菓子の乗ったお盆を持ったヴァネッサがイリナに話しかけた。


「お菓子なの! ビースナス、イリナはここで聞き取りなの!」

「まったく、本当にしょうがない小娘だわね」

「わかりました。では行ってまいります」

「俺もついて行っていいか? レゴラはここでお菓子を貰いなよ」

「構いませんが、余計なことは言わないでくださいね」


 ビースナスとジュラは聞き取りに行くようだ。

 そのままガゼボでレゴラも含めてみんなでお菓子を食べ始める。

 盆に乗っていたお菓子はスコーンのようだ。

 ジャムが掛かっていてサクサクだ。


「ヴァネッサは食べないのなの?」

「私はもう十分にいただいたわ。あまり食べ過ぎると太ってしまうもの」

「ヴァネッサさんはとっても綺麗だから、少しくらい太っても平気なんじゃないかな?」

「うんうん」

「ふふふ。ありがとう。でも子供の頃は本当に凄く太っていたのよ? 油肌で吹き出物も酷かったの。そのせいで石を投げられたこともあったわ」

「酷いねそれ! でも、今からは想像できないなー」


 そこで俺はヴァネッサが指輪を摩っている事に気が付いた。


(あれが運命の指輪なのか)

「あら? この指輪が気になるのかしら?」


 俺の疑問を聞いた二人が指輪を同時に見た事で、ヴァネッサも視線に気が付いた。


「探さないのなの?」

「えっ……ええ、だって五日前に指輪をわざと亡くしたのはわたくしよ? 見つけてくれた人と結婚するために」

「良いのなの? 知らない人なのかもなの」

「それは……、私が自ら選んで……。指輪が選んだ結果ですもの……」


 ヴァネッサの顔は「それでも良い」と開き直っている人間がするような顔では無かった。

 もっと葛藤するような、それでいてどこか諦めた淡い絶望が浮かんでいた。


「ヴァネッサ嬢様、少し冷えて参りましたので屋敷の中にお入りください」

「ありがとうジーノ」


 差し出された手に手を添えたヴァネッサの視線がジーノの左手に落ちる。

 ジーノの左手には薬指と小指が無かった。


「指がないの!」

「小娘! さすがに失礼よ!」

「いえいえ、大丈夫ですよ。失ったのは若い頃ですから」

「あら? ジーノはまだ四十の半ばでしょう? 今も十分に若くて素敵よ」

「お戯れを。さあ、こちらえ」


 屋敷に入る事は断って、俺たちも町に戻る。

 ビースナスと合流したい時は、ギルドに行くようにあらかじめ決めている。

 ギルドで待っていると、ビースナスが戻ってきた。

 そこで、シルトタルの特徴をビースナスに聞く。


「シルトタルは亀の魔物です。水辺を好みますが陸を苦とは思いません。長生きなので大きくなりますが、本来は気性が穏やかなため、裕福な家はステータスとしてペットとして飼う場合があります」

(気性が穏やか? でも、ヴァネッサのあの感じは恐怖と言うか、怒りが滲んでいたようにも見えたけど)


 説明を聞いたので魔力探知を使う。

 本当にこの能力は生物を探すことに関しては最強だと思う。

 広域の魔力を感じながら、魔物の魔力を探していく。


(うーん。町にはいないっぽいな)

「シルトタルがいるとすれば、町の外ってことだね」

「私の集めた情報でも同じ見解になりました。水辺の情報も得ていますので、明日にでもそちらの方に向かって見ましょう」


 次の日、森の中に入り水辺をたどっていくことにする。

 念のため、レゴラとジュラには宿に残ってもらった。

 ジュラは来たがったが、人数が増えると不測の事態に対応できないので我慢してもらった。

 町の外の川沿いを進んで行くと、そこには木こりの小屋らしきものがあった。

 丁度、中から青年が斧を持って出てくる所だった。

 屈強な男を想像していたが、スラっとした長身の細マッチョと言った感じだ。


「薪の購入か? 直接買いに来ても安売りなんてしないぞ。一束で大銅貨二枚だ」

「違うの! シルトタル探しなの!」

「シルトタル? アイツの事か?」


 木こりが指さした先の池で、亀のような魔物が静かに泳いでいた。

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