100 コムトの町での依頼
「わざわざ済まないな。俺はこのギルドのマスターのライオスだ。まずは座ってくれ」
「いえ、私はこのままで結構です」
執務室に着くと机から離れてライオスがソファーに座りなおす。
ライオスに着席を勧められたがビースナスは断った。
その代わりにイリナが遠慮なくソファーに座わると、ノエルも遠慮がちだが、イリナの隣に座った。
俺はいつも通りイリナの膝の上で、エステルも疑似枝に腰かけている。
レゴラとジュラは受付のお姉さんに任せた。
「受付嬢から話しは聞いた。護衛の任務中なんだってな? こんな事で時間を取られるのは嫌だろう、さっさと要件を言おう。単刀直入に言うと依頼は『運命の指輪』の捜索だ」
「片方の指輪を付けた状態で指輪を投げると、運命の相手に行きつくと言う。せいぜいジンクス止まりの魔道具ですよね?」
「ああ、そうだ。この町には白蓮の君と呼ばれるお嬢様がいてな。家が大商会な上に可憐な容姿で性格もいい。まぁ~モテるんだが、何を思ったのか結婚相手をその『運命の指輪』に託しちまったんだ。そのせいで今やこの町は、白蓮の君との結婚を目論む輩で大騒ぎって訳だ」
ギルドマスターのライオスが大げさに肩を竦めて見せた。
「我々で指輪をさ先に見つけさせて鎮静化を図ろうと?」
「そんな所だな。この依頼は別に受けなくても良い。だが、その場合、他の同じ内容の依頼も一切受けないと約束して欲しい。ギルドとしても、さすがに最低なクソ野郎とかにお嬢さんを差し出したくはないんでね?」
「わかりました。指輪の捜索はギルドマスターからの依頼以外を受けないと約束します」
「まぁ、受けてはくれないか……」
「考えておきます」
話しを終えて受付に戻りレゴラ達と合流する。
試しに依頼の掲示板を見ると、物の見事に指輪の捜索依頼ばかりだった。
他の冒険者にも受けないように通告が出ているようだが、強制力はないようで、金に釣られたのか、高額な報酬の依頼は受けられている跡があった。
(せっかく依頼を何か受けようと思っていたのに碌な依頼が無いな)
「これなんかどうかな? ペットの捜索依頼だって?」
「面白そうなの!」
「期限も長めですね。この町にはもう少し滞在しますから、よろしいと思います」
「ダーリンの能力を使えば楽勝かしら」
掲示板から依頼を剥がして受付へ持っていくと、依頼主の居場所の書いた地図を渡された。
受けに行った先は、町の外れにある大きな家で、お金持ちの避暑地に立てた別荘のような印象を受ける綺麗な邸宅だった。
(うわー。お金持ちの家って感じだなー)
「こんな寒い季節なのにお庭に花が咲いてるよ」
「綺麗なのー」
玄関で依頼を受けに来たことを告げると、老紳士が庭の方へと案内してくれた。
庭にあるガゼボに案内されると、そこには白いワンピースに身を包んだ乳白色の髪の女性が立っていた。
日の光が当るとその髪は金色に縁どられるように光を反射している。
愁いを帯びたその表情は、儚気で庇護欲をくすぐる。
(いや、絶対に白蓮の君だろこの人!)
明らかに本人のイメージにそぐわない、左手の薬指に嵌められたゴツ目の宝石の付いた指輪を見ながら、俺はそう叫んだ。
遂に100話になりました。
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