第二章 3
あんなに動き回って混ざり合っていた色が
すっかりおとなしくなっている
初めて入る生徒指導室はやっぱり灰色で
目の前に座っている警察も、灰色
その声と態度は柔らかそうな青色——たぶん
自分は疑われていない、と、瞬は思う
遺体発見時の様子
なぜ屋上に行ったのか
今堀との関係性——
淡々と答えながら、そのなかで
姉と今堀の関係も話す
記憶のことは、話さない
「大丈夫か」
と、聞かれてはっとする
「すみません、ちょっと
ぼーっとしちゃって」
と、返しながらも、だいぶ冷静になってきたと、瞬は自覚する
自分の色が、戻ってきている
白い色に、まだ幾分か灰色の点が染みのように落ちている
だが赤い色はすっかり消えて
瞬の景色は静かに凪いでいる
話は思ったよりも早く終わり
瞬は自分の白色を保ったまま生徒指導室を出る
ゆっくりと歩いて教室に戻り、鞄を取って玄関へ向かう
荒神の力のことは、もちろん言っていない
もし本当に瞬が今堀を殺していたとしても
荒神の力でやったのならば証拠は出ない
きっと今堀の件は、病気か事故ということになるだろう
それでいい
自分のためにも——いや何より姉のために
全て隠した方がいい
瞬は
自分の手を見つめる
わずかに赤く染まっている気がして
でも
すぐに白く塗りつぶして覆い隠す
自分は白のまま
姉の透明な薄青色を置くための
完全な白のまま
携帯電話を取り出して
桐登から着信があることに気付く
だがそれよりも姉のことを思い
瞬は姉に電話をかける
灰色の、コール音
どこまでもコンクリートの壁に覆われた
無機質な部屋に閉じ込められたような感覚
姉は
出ない
生徒の気配はなく
雨の音が青ではなく灰色を滲ませる玄関靴箱で
瞬は小さく溜め息をつく
外では少しだけ生徒たちの気配がして
そのどれもが
灰色の棒のように立っている
赤くは、ない
とりあえず今はそれだけでいい
自分が白でいて、赤い色がないならば
それだけで姉と生きていくことはできる
雨が
強い
透明なビニール傘を差して
濃い灰色の空を見上げる
いつか——
いつか必ずこの空も白く染めてやると
そう、静かに思いながら
家へと歩き出す




