第六十二話
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さあ、困ったぞ。
門は抜けた。詳細は省くが正座でね。落語をやって。それはまあだだすべりでしたけど。
立ち上がろうとしてしびれた足でこけて、顔から地面に突っ込んだ瞬間に屁が出た。
それで吹き出した門番が通してくれた。仲間の視線は痛かった。「わたくしは面白かったです」と言ってくれたクラリスのフォローもありがたいけど痛かった。
問題はその後だ。
門を抜けたそこに広がるは、雪がちらつく冬の大地。
ふっと出てきた鳥の魔物が呪文を唱えて、御者台にいた俺とナコが直撃を食らった。
そして今。
周囲は雪山。
青ざめた顔で身体を抱き締めている巫女を片腕に抱いて、歩き回って見つけた洞穴に入る。
「うううううう」
脇から背中から露出した薄着に冬山の低気温は毒にも程がある。
「ひひひひひひだだだねを」
「なんて?」
「ひ、火種をっ――……くちゅん!」
集めてこい、というのだろう。
中は洞窟になっていて、鎧を脱いで奥へ行ってみる。
すると天井に穴が空いた縦穴のような場所に出た。
枯れ木がいくつか見える。
あちこちに凍り付いた人や獣の遺体も見えるのはちょっとぞっとしないけど……獣は食料になりそうだ。
にしてもクルルのパンツをもらっておいて正解だったな。
さっと枯れ木を切り倒して、細かくしてから抱えられるだけ抱えて戻る。
膝を抱えて丸くなって震えているナコの前に枯れ木を立てて並べると、彼女は手をかざして何かを口にした。
相も変わらずクルルと違って理解できない言語だ。
それが精霊にだけ届く言葉なのだろう。
実際、ナコが何より願う火が枯れ木から勝手に生まれて大きく伸びる。
「ささささ、さむい……」
半べそを掻いているナコを見ていられず「待ってろ」と告げて、洞穴の入り口へと戻った。
俺も正直泣きたいくらい寒いんだけど、それはそれ。後回し。
体力がどれだけの期間もつかわからないから、動ける内に環境だけは作っておきたい。
大剣を振るってブロックを作り、それを組み立てる形で大きく空いた洞穴の口を塞ぐ。
完全に塞いでしまったら外に出ることが出来なくなる恐れがあるので、人が一人通れるだけの必要最低限の穴を残しておく。
ナコの元へ戻ると幾分温度がマシになってきた。
それでも寒いんだろう。露出した二の腕をさすっているナコは見ていられない。
「こい」
「え……」
「くっついていた方があったかい」
「う、うん」
困惑げに頷いて彼女がいそいそと俺の前に腰掛けた。
背後から抱き締めてせめてもの暖を取る。
困るのはナコが魅力的な少女という事実。
こんなところでむらむらきている場合もないけど、こういう危機的状況だからこそっていうのもあるのかもしれない。
早い話が……その、なんだ。
おっきしちゃった。てへ!!!!
「何か、あたってるんだけど」
「勇者の小刀だ」
それ以外に答えようがない件。
「変なところにしまってるんだな」
「ここにしかしまいどころがなくて」
それいが(ry
「……落ち着かない」
「洞窟の温度がマシになるまで我慢してくれ」
「……仕方ないな」
身体から力を抜いて、身を預けてくるナコを抱き締める。
クルルともクラリスとも、コハナとも違う。
みんな華奢だが、ナコはルカルー同様に身体が鍛えられて絞られている。
だから詰まった感じがある……ちゃんと柔らかいのに。
「何が起きたんだと思う?」
ナコの問い掛けに彼女の首元にアゴを預けながら唸る。
「あの魔物によって、俺たち二人だけでこの山に飛ばされたんだろう」
「迷惑な話」
「まったくだ」
頷いてしばらくは、ぱちぱちと音を鳴らすたき火を二人で眺めていたんだが。
ふと、ナコが俺の腕に自分の手を重ねてきた。
「なあ」
それから俺の手を彼女の薄いけれど確かにあるそのおちちにあてがった。
「なんか……こうしてると、ここがどきどきするんだ。死ぬのか?」
すげえこときくな。やばい。すげえ勢いでおっきする。
「ええと……お前が元気な証だ。問題ない」
「問題ないのか……」
なるほど、と呟かれる。
薄い布地越しに感じる彼女の胸の奥からどくどく聞こえるんです。
めっちゃ早いやん。めっちゃどきどきしてるやん。
「……問題ないのか?」
「いや改めて聞かれても」
頭の中にクルルとクラリスの顔が浮かぶ。「流れで無知な子相手についやっちゃうとか勇者のやることじゃないかな」「これ以上増やしたら大変です。泣いちゃいます……」
二人の言うことはもっともだ。そうとも。俺の天使の言葉に従うべきだ。
だがその途端、どうだろう。
「やっちゃえよ」「今しかないって」「暖を取るために、って流れでいけますよ」
コハナの囁きが聞こえるんだよな。マジで悪魔の囁きだった。
「くちゅんっ」
ほら、寒がってんじゃん、というコハナの声がどんどん大きくなる。
マジで直に言われているかのような生々しさにあちこち探すけど、どこにもいない。
「さむい……もっと」
ふり返って熱を求めるようにナコがしがみついてきた。
押し倒される形で抱き留めて、その勢いで――……
「ん――……?」
きょとん、とした顔のナコとキスを。
どんなハプニングやねん、と思ったのに。
「……ん、案外、きもちいい。これ、もっと」
そう囁いてよくわからずに顔を擦り付けてくるナコに理性が。
理性が決壊しそうでござる!
がんばれ、まけるな、と訴えてくる天使二人を悪魔が抱き締めて「ここからは大人の時間なのでそっとしておきましょう」と連れて行った。
「からだ、あったかくなる……もっと、したい」
無自覚に甘える巫女を前に、俺は心の中で謝りました。
非常事態だからと言い訳はしない。ごめんなさい、と。
◆
……まあ、その、なんだ。入れてはいない。
さすがに罪悪感があってそれはこらえました。
今は裸で俺の服を羽織に二人裸でくっついている。
ナコは俺の小刀を指で弾いて「ニコリスよりは小さい」と言うんだけど。
さすがに馬と同じサイズは無理かな。それは君たちを傷つけるだけのような気もするし。
「これはなにをするためのものなの?」
「ううん……まあ、その。今までした行為の先の段階で使うんです」
「どうするの?」
「俺が後半触った箇所に入れるといいますか」
「またまた。入るわけない」
……なんともいえないなあ。
「ニコリスのは嫌な感じしかしなかったけど……あんたのはそうでもないかも」
「ぴんぴんしないでもらえます? 我慢できなくなっちゃうんで」
「なにを我慢してるの?」
「……子作りかな」
遠い目をするしかない俺です。
「……自分としたいの?」
「そういう本能なんです」
最後の言い訳であり、女性から嫌われる言い訳ベスト3に入る気がするよ。
「それ、さっきみたいにきもちいい?」
「いや、大概慣れるまでは痛いと聞くな」
「……身体あったまるのか?」
「あったまりはするだろうけど、それならさっきみたいので十分だろ」
「ううん……」
肌を擦り付けてくる巫女さまの手に握られて、撫でられて。割と泣きそうです。
「興味ある」
「えっと、だな」
「ここを脱出するまで時間かかりそうだし、慣れるまでする機会ありそう」
する方向に前のめりかよ。
「もっと……触って欲しいし。お返しに触るよ、これなんかすっごくあついし」
ナチュラルに無自覚にしこしこされると、もう無理。限界です。
「もっとくっつきたい……さむいよ」
「ええい」
毒を食らわば皿までよ!
つづく。




