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第四十一話

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 クルルがルカルーに対して警戒モードに入ってしまったらしく、宿に戻ったら扉を閉めて出てこなくなった。俺さえも「信じられないよ、けしかけるなんてひどいよ」と入れてもらえない始末。

 これあれだよな。苛めてる方は苛められてる気持ちがわからない、みたいなヤツだよな。実際軽い冗談のつもりだったんだけど……

 まさかここまで効果覿面だったとは。

 いやあ、はっはっは!

 ……マジですみません。

 もう二度としないからと何度も謝ってたら「寝る」と拗ねた声が聞こえてきた。

 機嫌が直るまで放置するしかねえな。

 そんなクルルの眠気に負けじと寝るのが子供のペロリだった。

 必然、俺はルカルーと二人で対峙する状況に。

 厳密に言えばルカルーとペロリの部屋だから、ペロリが寝ている横で椅子に座って向き合ってるって状況です。

 気まずい。

 そういえばあんまりこのツーショットなかったもんな。


「身の危険を感じる」

「いや待て、その発言はおかしい」

「ウサギに皇女。勇者は手が早い」

「……まあ」


 否定できませんけども。


「しかしルカルーは未着手。まるでルカルーに魅力がないかのよう」

「そういうわけでは」

「勇者は肉食系」


 半目で睨むな! ひどい誘導尋問だぞ、それ!


「……する?」

「気楽に言うな、その気も無いのに誘うんじゃありません」

「ばれた」


 悪気ねえな! びっくりするわ!


「ここでしたらウサギにバレる」

「そういう問題じゃないから!」

「……まったく?」

「……まったくではないけれども」


 ふふん、と鼻で笑うルカルー。勝ち誇るんじゃない!


「まあいい。ついてきて……退屈してないからな」

「あ……」


 そういやあ、仕返しするつってついてきたけど……改めて確認したことなかったな。


「ペロリが仲間になって……仕返しする相手もいなくなって、それでもまだ付き合ってくれるの、なんでなんだ?」

「耳かき」

「まじで」

「冗談」

「……あのな」

「ルカルーは流れ者。どこで暮らしてもいいし、なにをしてもいい。だから……ペロリを操った魔王を倒す。それが仕返し」

「結構、根に持つタイプ?」

「実は口実」


 じゃあなんだよ、とツッコミを入れたら……目を細めたルカルーの笑顔が俺を捉えていた。


「我が一族は、自らを倒した異性に従う。勇者がその気なら……なにをしてもいい」

「マジで」

「ふふ……さて、どうかな?」


 立ち上がると俺の鼻先をわざと尻尾で擽ってから、衣服を脱いだ。

 ぱさ、ぱさ、と落ちていく衣服。露わになるしなやかな筋肉で引き締められた肉体美。


「ルカルーも寝る」

「お、おう」

「添い寝する?」

「……やめとく」


 深みにはまる予感しかない。


「それがいい」


 身体を隠すものはパンツだけ。なのに胸も下着も隠さずに眠るルカルーは……ある意味、大物なのかもしれない。


 ◆


 行く先もない俺はハルブをだらだら歩いていたわけ。

 そしたらさ。

 偶然だよ?

 偶然!

 ほんと偶然に、あの居酒屋に来ちゃったわけ。

 いやあ。ほんとこまった偶然だなあ。

 でも来ちゃったからにはさあ。入らないとなあ。


「あっ、いらっしゃい!」


 決してね?

 決してコハナちゃんと会うためじゃないんですよ。


「会いに来てくれたの?」


 尻尾で耳元を擽られて思わず頷きました。


「ま、まあね!」

「ふふ……嬉しい」


 すぐ陥落したよね。


「じゃあジャックさんと一緒の席にするね」

「えっ」


 手を引かれて向かった先は奥のテーブル席で、鼻の下を伸ばしてコハナちゃんを見ているのがジャックだった。

 さっきの駆け引きが嘘みたいな残念さでした。

 あと人のこと言えないな。俺もコハナちゃんに手を握られて同じような顔をしているに違いない。


「……んだよ、坊主」

「……おっさんこそ何してんだよ」

「そりゃあ、おまえ」

「……まあ、一つですよね」

「「でへへへへ」」


 二人そろって昼間っからやっている、しかも繁盛しまくりの店で働くウェイトレスさん(というかコハナちゃん)を見つめる駄目男、二人。


「こことコハナちゃんに目を付けた勇者に一つ、教えてやろう」

「え、なに」

「コハナちゃんはなあ……その日一番呑んだ男と店外で逢い引きしてくれるのだ」

「……ほっほう」


 よく見ればみんな、ジョッキを馬鹿みたいに開けている。

 勢いがやばい。死ぬ気だ。死ぬ気で呑んでいる。


「しかし、これまで一度たりともその貞操に傷を付けた男はいない! なぜならみな、潰れてしまうからだ!」


 ……ええと。

 あれかな。

 コハナちゃん、というか。店のオーナーさん、策士かな。


「結果、いつも家に送ろうとしてくれるコハナちゃんの手を患わせまいと、みなが潰れた男を引き取っている……」


 しかし!


「男にはやらねばならぬ戦いがある! わかるか、勇者よ」

「ふっ」


 脳裏をいろんな言葉がよぎる。


「タカユキ、わかってると思うけど……浮気はひどいよ」「勇者さま……クラリスは……(しゅん」


 だが、すまん。


「コハナちゃん!? お店のお酒ぜんぶもってきて!」

「はあい!」


 負けられない戦いが、ここにある!




 つづく。

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