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勇者タカユキと魔王の戦い~異世界パンツ英雄譚~  作者: 月見七春
第七章 皇女クラリスの来訪
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第二十八話

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 一度引き返して、寝ているルカルーからパンツをもぎ取ってきました。

 え、なんでかって?

 それはね? 皇女様が宿泊している領主の館に行ったら門前払いを食らったからだよ!

 許可が無いもの……特に男、特に勇者は近づけてはならないそうです。

 え? 俺女子に近づいただけで孕ませる能力にでも目覚めちゃった?

 それとも俺の服の匂いは嗅いだら死ぬレベルのものなの?

 ええい、めげんぞ!

 どうもいい子っぽいからな。いい子っぽさが溢れていたからな。

 しかもぼいんのばいんでとびきりの美少女。

 逃す手はない。


『タカユキぃ』


 ……クルルの声が一瞬聞こえたような気がした。

 ざ、罪悪感が。け、決して浮気などではない。浮気などでは……

 そ、そう! 約束を果たすためです。

 というわけで、フックショットの出番です。

 うるせえ、本気だよ! やれるものならやりたいよ!

 パンツも必要だし、雑な女神の言葉がもし本当なら、やれば力が増すわけだし!

 おし、正当化完了!

 ……うちの女子陣の全力の否定が脳裏に過ぎる。

 まあ、とにかく会ってみないとわからないからな。

 皇女様のテンションは。こればかりは会ってみなければわからない。

 ラブレターだと思って会ってみたら違う意味でした、的なオチが待っているかもしれない。

 そうとも。心を強く保て。人間的強度が必要だ。落ち着け。


「って無理だー! 股間の猛りをおさえれきないー!」


 って一人コントやってる場合でもないね。

 エルサレン攻略戦の時と同じ要領で、人の目がない路地から屋根へ移動する。

 手にしてよかったフックショット。

 とはいえこのスニーキングミッション。

 問題がただ一つ。


「領主の館の守り堅すぎじゃね?」


 領主の館から大通りを挟んだ背の高い三階建ての建物の屋根の影から覗いてみると、どうだ。

 二階のベランダや露出した通路はもちろん、庭のいたるところに騎士たちがいる。

 巡回する彼らは心の底からくそまじめに働いていて、隙がまるでない。

 誰も入れない、という信念が見える……どころの騒ぎではない。


「うん?」


 ちょっと待て。

 冷静に考えてもみろ。

 確かに一国の皇女だ、警備は厳重である必要がある。

 魔王に狙われた街に泊まるのだから、なおさらだ。

 だが、どうだろう。

 よく見るとみな、剣を抜いている。

 いつでも戦える準備をしている様子だ。

 殺気立ちすぎではないか?

 何かあるのでは?

 急いで見渡すと……


「嘘だろ」


 よく目をこらしてみて、かろうじて気づいた。

 庭の端にうつぶせになって倒れている騎士がいる。

 一度気づくと他にもいるのがわかる。

 やばいのでは、と思っていた時だった。

 館の二階の窓が開いた。顔を出したのは皇女様だ。

 俺を探すようにきょろきょろ見渡して、それからふり返る。

 なんだ? なにが起きている?

 はらはら見守っていたら、皇女様が、窓枠に手を掛けた。

 身を乗り出した途端、笛の音が鳴る。

 騎士達が一斉に剣を皇女様に向けた――?

 っていうか待て! あの皇女様、跳ぶ気だぞ!


「ええい!」


 考えている暇はない。フックショットの先端を窓の下に向けて発射した。

 腐っても勇者の能力で手にできる武器。

 弾丸のような早さで引き寄せられる俺の身体は、皇女様が跳ぶ寸前で屋敷の壁に到着。

 足にじいいいいん! と痺れが走るのですが、とにかく!


「クラリス! こっちへ!」

「え、あ? え! はい!」


 ぴょん、と飛び降りる彼女を片手で受け止めて、壁からフックショットを引き抜きつつジャンプ!

 そのまま元の方向へと発射する。


「掴まれ!」

「はい!」


 ぎゅっと抱きついてきた身体を庇うように腕を回して、足を伸ばして壁に接地。

 引き抜いて今度は地面に着地する。


「勇者様! 後ろ!」


 咄嗟に念じて大剣を出した。

 投擲されたのは円月輪の類いだ。防いだため地面に落ちるそれらに動転する。


「一体何が――」

「魔王の刺客です! 中枢にまで手を伸ばしていて――来ます!」


 騎士の格好をした連中が館から俺たちへと走ってくる。

 腕を覆う籠手と剣を放り捨て、腰から取り出したカタールを装着した。


「いかにも、暗殺者か!」


 躍りかかってくる連中を大剣でなぎ払う。

 闇夜に紛れて見えないが、それの威力はどんどん増しているようだ。

 凄まじい勢いではじき飛ばされていく騎士もどきの暗殺者ども。


「わ、わたくしも戦います!」

「下がってろ!」


 それでもどんどん数が増えてくる連中に、俺は気合いを入れるべく叫ぶ。


「アンタは俺が護る!」


 その断言に陶酔に似た声が微かに聞こえた――そんな気がしたけども。

 たまのシリアスで燃え上がっていた俺はそれどころではなかったのでした。




 つづく。

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