第二十三話
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泣きべそを掻くロリ。
お尻ぺんぺんで白状したところによれば、魔王の現われた北の島国から流れ着いた移民らしい。
名前はペロリシア・ペローリー(あだ名はペロペロかな)(言いにくいな)(ペロリにするか)。
地域に馴染めない孤児で住むところに困っていたら、エルサレンの地下深くに眠る聖なる杖のありかと魔王の魔法を教えてもらったんだとか。
魔王来たんかい。がばがばじゃないか、この国は大丈夫なんだろうか?
だめだからペロリにやられる体たらくなんだろうな……。
やれやれ。
ペロリのケツを叩いて「うっ、ぐすっ、ゆるじでぐだざい……」とガチ泣きされるところまで追い詰めた俺は、丁重に街の住民を元に戻してもらい、街の外で棺の死体と化した二人を生き返らせてもらった。
なんとペロリの親は北国の有名な僧侶らしい。
「じゃあお前なんなの」
「ううっ、ぐずっ、ずびいい!」
人の服で鼻を盛大にかんだ後、ペロリは涙目で言った。
「せいじょ、とか、いわれた」
性的な女子の略かな?
……はい、嘘です。
「聖女が魔王に唆されちゃだめだろー」
笑顔で言うと青ざめた顔で全身で震えながら後ずさりされました。
「ごごごおごごごごおおごごごおご、ごめんなさいもうしないのでゆるしてください」
その場で土下座するペロリを見かねた女子二人が咳払いをする。
「殺された手前こういうのもなんだけど、あんまり子供を苛めるのはどうかと思うよ? タカユキ」
「一応勇者なのに、絵面が完全に虐待している近親者。っていうかルカルーのパンツどうしてくれる」
……いや。その。違うねん。
「わ、悪いことしたらお尻たたくだろ?」
「体罰を正当化するのはどうかと思う。うわあ……腫れてるじゃん」
「少しやりすぎじゃないか。あとパンツ返せ。今すぐ返せ。腕に巻き付けて、この変態! がるるるる!」
お、おおう。おおう。
二人ともそうきます?
とりあえず速やかに腕に巻き付けたパンツを解いてルカルーに返したら、クルルが俺にパンツが必要な理由についてルカルーに説明してくれた。
だからそれはいいとしても、だ。
クルルとルカルーの背にあわてて回って、恐怖の顔で見られると……罪悪感がひどいのでやめてもらえますか。
「お、俺は、お前らを殺されて……その仕返しに」
「幼女のお尻を叩いたの?」
「まだ幼女なのに」
「ひどいおとなです」
あ、てめえ! と口にした俺に「ひい」と身震いするペロリ。
「そのうえ、はだかのぼくをじっとみました! あちこちみてました!」
「ち、ちが! 言いがかりだろー! 子供の裸なんてそうそう見れないから物珍しいだけで、ちが、ちがうじゃん。そうじゃないじゃん? お前、変な言いがかりつけるなよ! それは洒落にならんのだからな!」
あわてて言えば言うほど、クルルとルカルーの目つきがマジで冷えていく。
「タカユキひくわー」「ひく……」
「ほらあああ! 洒落になってない! 二人の目つきが人間のくずを見る目じゃーん!」
まじでいいきみです! と鼻息も荒く言うペロリ。
なかなかいい根性をしていそうだ。
まったく……。
◆
二人の誤解を解くのに必死になっていたら夕方になっちまいましたよ。
そこまで必死になるならわかったからもう、と疲れたクルルに背中を押されて、俺たちはエルサレンの街に入った。
俺の必死の抗弁は街の中にも聞こえていたようで、街の領主が待ってくれていた。
ペロリたった一人に魔物に変えられてしまって荒廃した街の復興には時間がかかるようで、にも関わらず移民に冷たくした自分たちの愚かさによる結末だ、死者は出なかったからよしとするだなんて。
領主により大きな度量を見せられてしまう。
その結果、
「怒りのあまり幼女のお尻を叩きまくったどこかの勇者に聞かせてあげたいね」
「人間としての器が小さい」
「こんごにきたいしてやるよ」
女子三人の言葉が耳に痛い。
っていうかペロリ、お前は反省しろよ!
あとそんな大きな度量を見せるくらいなら、その反省をペロリが来た時点でみせてくれませんかね!?
……当事者が納得したならいいけども。
街の外れにある農園や牧場の家畜と食料は被害があるものの、国に救助を求めて助けてもらえるまではしのげるようなので、領主の手配で取ってもらった宿に俺たちは泊まることになった。
街の状況を理解したクルルが辞退した結果、豪勢な食卓とまではいかなかったが、久々にのんびりできそうだ。
地味に面倒見がいいルカルーにご飯や風呂の面倒をみてもらってすっかり懐いたペロリは、俺を嫌がるので二部屋取る羽目に。
「仲直りしてよ? タカユキは子供じゃないんだから」
同部屋になったクルルはマントを脱いで、俺のベッドに寝転び俺の膝に頭をのせている。
耳かきをし終えてひと息ついた時の一言に、さてどう答えたものか。
「……生き返ったからいいものの、あのままだったらどうしてたんだよ。腐ったら生き返れないとか女神も言っていたぞ」
うん、そうだね……と呟いたクルルの視線を感じて見下ろすと、嬉しそうな笑顔で俺を見上げていた。
「でもさ。だいたい魔王のせいなんだから……手段に使われたペロリをこれ以上怒ると、あとはもう疲れちゃうだけだよ」
そうかもしんねえけど、と唸る。
「うれしいよ」
「……あ?」
「助けてくれたこともそうだしさ。色々言っちゃったけど……ペロリだって、一度はしっかり怒った方がよかったと思うし」
身体を起こしたかと思うと、背中に身体を預けてきた。
人としては軽くて、けどそれでも重たい熱に寄り添われる。
「ちゃんとわかってる。だから……ありがと」
……なんだよ、もう。
「ひとりきりになって、こわかった?」
「……そりゃあ、そうだろ」
否定なんて出来るはずがない。
「泣いちゃった?」
「それはない」
「えー……」
「助けるって決めてたし、実際そうなったろ?」
「じゃあ……助けられなかったら?」
泣いただろう。けどそれを言うのは癪だった。
なんて言い返そうか悩んで、ふり返った時だった。
「ん――……」
クルルの甘い吐息が口に当たる。
それ以上に甘ったるい感触が唇に当たっていた。
下手したら一発やるより命を救うよりも最高の瞬間だった。
水音を立てて、ついばまれて。
クルルの手が俺の腕を捉えて、それでも足りずに俺の前へ移動しながら腰の上にまたがってくる。
自然と彼女の細い腰に回して、抱き締める。
何度も、何度でも。
角度を変えて、それだけで足りなくなって――……舌を絡ませて。
クルルの手が狂おしげに俺の髪を撫でて、首筋を捉えて……彼女へと引き寄せられる。
どれだけ口づけをかわしたのかもわからなくなった頃、息が上がって俺たちは額を重ねた。
「いいのか?」
その問い掛けに、
「いいよ……タカユキに……してほしいの」
甘える声で答える彼女を、抱かない理由なんて存在しなかった。
つづく。




