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第二十四話

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「ゆうべはおたのしみでしたね」「でしたね!」「隣の部屋まで聞こえてきた」


 以上、お空に現われた女神とペロリとルカルーの発言でした。

 耳を撫でながら素知らぬ顔をしてだんまりを決め込むクルルに蹴られて、咳払い。


「あー。その。仲良ししてただけだ。運動だな。お互いを理解しあうための」

「ものはいいようですよね」「つまりなにをするの? ぼくにもわかるようにせつめいしてほしいです!」「子供にはまだ早いことだ」


 ……まあ、その、なんだ。

 えー……その。なんだ。

 ううん……。


「まあおたのしみすればするほどパンツの力は高まるんじゃないですか。そういうことがあってもいいと思いますよ、女神的に」

「愛の女神かなにかか。そういうこと推奨しない流れでこないだ俺にレーザー出したんと違うか」

「べ、べつにめんどくさくなってなんかないぞー? ないぞー? なっ、なな、ないぞー?」

「お前のそのわざと微妙にどもり感だす喋りはなに」

「えー。こほん! あんまり特別に仲良ししてたらー、他の女子からぁー、パンツはもらえなくなるんじゃないかなー」


 顔をあらぬ方に向けられた。明らかに話を逸らされているんだけど、逸らした方向があんまりにも真実をついているような……!


「まあ、ウサギのパンツがあればいいよな」


 ルカルーの呟きが耳に痛い。


「えーそこからの、復帰は? タカユキにゆだねます★」

「……レーザー出して助けてくれたりしないん?」


 明らかに離れた位置に立つルカルー(に抱かれているペロリ)。

 ここから取り返せる気がしないんだけど。

 信頼とかなんとか。それこそ女神の力を借りでもしないと無理そうなんだけど、しかし願いは叶わなかった。


「それはねー。勇者相手にしか使えないんだなー。めんどいし」

「おいこら、めんどいっていったな!?」

「だって女神の忠告を無視して雄の本能に従ったのタカユキだしぃー」


 唇を数字の三の形にするな!


「パンツが欲しけりゃ苦労しろ! というわけで、ありがたぁい女神のお告げをするよー」

「お前もたいがい適当だよな……」


 そんな女神のありがたさとは。


「えー。港へ行き、海を渡って……え、海賊がいる? なんとでもなるなる★」


 あは! と口に開いた手をかざして笑う。

 可愛いのが腹立つ……相変わらず急に、俺たちから視線を外して話し始めるんだが、お前さ。

 誰と話しているんだかわからないぞ!


「ん? んっ、ん? セーブポイント間違えたらエンドレス死亡じゃね? って? あ、うん、そうね。確かに確かに。勇者の装備も集まってない? そういえばそうだね!」

「こっちを見て喋れ!」

「えー、お告げ。お告げするよ? えー……ウサギ娘に、祠の場所を聞いて、装備を手に入れろ!」


 ……まあ。確かに装備は欲しい。いい加減、裸足は困る。


「あと三つ……あれ待って? あと二つだっけ? 百はあるだろって? それは多すぎだよー! 三つくらいにしとこ! ねっ!」


 前に話してただろお前! そこアバウトでいいのかよ! っていうか誰と話してるんだよ!

 それに山ほどあるんかい。勇者の装備! ありがたみがないな!


「まあ、えー。がんばれ。以上」


 雑なんだよもう! 呆れかえるルカルーの顔を見上げてペロリが尋ねる。


「あれなに?」

「……ウサギ、あれは?」

「女神なんだって」


 ほらぁ。みんなのテンションもだだ下がりじゃーん。


「まあいいや。装備が必要なのは事実だもんね。ちょうどエルサレンの地下に、王国の賢者と勇者の墓があるからお参りしていこう」

「賢者と勇者の墓、か」


 呟きつつペロリが抱える杖を見る。

 先端に輪が幾つもついた金色の天使の胸像。そこから杖の尻まで伸びた白い枝のような石。


「なあクルル。ペロリは魔王に言われて、地下に眠る杖を手に入れた。ならその杖って、賢者のものなんじゃないのか?」

「……まあ、そうかも」


 それがなに? きょとんとするクルルと一緒になってペロリが首を傾げる。「なにー?」 ……ちょっと可愛いとか思ってんじゃねえぞ。ルカルーが半目で睨んできているからな。


「勇者の墓がもし祠代わりになるなら、魔王はどっちも知っていておかしくなさそうだし……なんか罠が仕掛けられている気がするんだが」

「いくらなんでも死んだとは言え勇者の墓なんだから、大丈夫じゃない?」


 やだー、前向きー!


「これだけのメンバーがいれば大丈夫だろう。ペロリも親から受け継いだ魔法と、魔王から教わった魔法の二つをもっているし」

「いけるぞー」


 ルカルーとペロリも前向きー!


「まあ、じゃあ」


 いってみるか。


 ◆


 全滅しました。

 まあ待て、落ち着け。

 クルルの案内で教会裏の階段をおりて、地下深くへと降りていった。

 賢者の墓を素通りして、さらに地下へと降りていったわけ。

 そしたらハゲの勇者の幽霊が靴をくれたよ。

 編み上げの革靴でしっかりとしている。

 ちょっと臭いのが傷だが、裸足はこれで解消だ。

 全力で走れそうだぞ!

 だからそれはいい。


「あぱぱらぷうううう!」


 地下深くで孤独にお眠りになりつづけた勇者の幽霊が狂っていたのにも目を瞑ろう。

 丁重に別れを告げて、どうせここまできたんだし、と賢者の墓に寄ったのがよくなかった。

 筒型爆弾に手足が生えた魔物と目が合ったよね。

 向こうもまさか素通りされた上で戻ってくると思ってなかったみたいで、


「え、あ、え? ちょ、ま、まてよ! え? やだこまるでしょ、えっ?」


 あわてて自分の頭の上にある導火線に火をつけたよね。


「お、おれはばくだんやろう! しね、ゆうしゃ!」


 てんぱって拙い舌遣いで言う爆弾野郎。

 導火線の火を消すべきか逃げるべきかで揉めていたら爆発したね。死んだよね。

 で、教会の中ですよ。


「おお、勇者様。死んでしまうとは……残念ですな」

「ええ、まったく」


 神父さまの言葉に頷いて、ふり返ると棺が三つ並んでました。


「……それで、その。お仲間の方、生き返らせますか?」

「あ、できるんだ。ペロリじゃなくてもいけるんだ。え、お願いします」


 当然でしょ、みたいな体で言い返したんだけど。


「寄付が必要なんです。言いにくいんですが、そのぅ……結構高くてですね」

「え」

「クルルさまは42000G、ルカルーさまは15000G、ペロリちゃんは100000G」

「……え? え? え? 何換算? え、その値段の違いはなに?」

「年収です」

「…………うん?」

「クルルさまは筆頭魔法使いですので、国から給金を。ルカルーさまは現在、野良仕事で自給自足気味なので」

「待って。え、待って。なんでてめえが年収知ってんだとか色々ツッコミどころはあるけど待って。ペロリおかしくない?」

「彼女の奇跡で人を生き返らせれば、まあ、このくらいは稼げるだろうと」

「……ほう……ちなみに俺は?」

「0Gです」

「……待って。え? 俺が生き返っているのって、え?」


 もしかして無料だから的な?


「女神様の加護です」

「だよね! よかった! ただだから生きていても死んでいても変わらないよね、とか言われたら泣いちゃうところだった。よかった」

「それで、どうなさいますか?」


 えー……困る。

 とりあえずクルルの棺を開けて、クルルが管理しているお金を取ろうと思ったんだけど。


「……うん」


 そっと閉じた。

 綺麗な裸しているだろ……死んでいるんだぜ、それ。

 当然何も持っていなかった。

 恐る恐るルカルーとペロリの棺を確認。

 二人とも裸だった。

 綺麗な裸だった。

 アウトでした……。


「勇者さま、どうなさいました?」

「……待って。待って。燃えちゃった? え、荷物ごと? 俺は?」


 意識して見下ろしてみると無事だ。

 さすが勇者の服! っておい!


「あのう、勇者様……伺いにくいんですが、お金は?」

「……ないっす」

「では、三日以内にお金を作っていただく必要がありますね」

「え、えっ、え? 三日?」

「はい。この時期ですともつのはそれくらいかなーと」

「……うん」


 あれかな。

 これはもう……詰んでないかな?


「まけてくれない? ほら、仮にも勇者じゃん? 俺、勇者じゃん? 勇者価格みたいなさ、特別手当てがあってもよくない?」

「他のお客さまの迷惑になりますので」


 ぱちん、と神父さまが指を鳴らしたら、上半身裸でふんどし姿の筋肉だるまが二人出てきて俺と棺をぽいぽいっと外に放り出した。

 ……くっ。なんということだ。

 ポケットの中身はクルルのパンツだけ。

 勇者の服の中に入っていたから無事だったのだろう。

 前向きに考えれば、こいつが無事でよかったな。

 棺の中の三人は全裸なわけだし。


「ううん」


 もう全滅までのプロセスが間抜けすぎて、悲嘆に暮れるどころじゃない。

 迷いに迷った俺は、そばで歩いている人を呼び止めて連れて行ってもらうことにした。

 騎士の駐屯所。

 俺と棺を迎え入れてくれた騎士は事情を聞くと顔を強ばらせながらも、


「では勇者様、クラリス皇女へ知らせを送ります。お金の無心ということで、よろしいでしょうか?」


 そう言ってくれた。

 ……確かに言ってくれた。

 金の無心って。

 事実だけど。

 事実なんだけどさ。

 俺、勇者だぜ?

 国を救うために頑張ってるんだぜ?


「それはそうなんだが他に言いようが」

「無心ですよね」

「まあそうなんだけど、そうじゃなくてさ。給料代わりにもらえたり」

「無心ですよね」

「……あ、はい」


 なにその強固な意志。


「じゃ、じゃあ……せめて教会に言って、まけてもらえたりしない?」

「力関係というのもありますし、国家権力がタダにせよ、と命じるのは……角が立ちますので」


 甲冑に隠れているけどわかる。


(子供じゃないからわかるだろそれくらい)


 って言いたげな空気をかもしだしている! そんな顔をしているだろ! くそ!


「だよね! うん。勇者だからこそ決まりは守らないといけないよな!」

「ええ。ですから国民の税金をしぼりとって、仲間を生き返らせていただく方向で」


 言い方な。言い方。

 それはその通りなんだけども。

 その通りなんだけれどもさ!


「いやべつにそういうあくどいことを考えているわけでは」

「国のお金、それは血税。国民みなが贅沢を我慢し、国に徴収されるお金の集合体。軽はずみに使えば国が信用を失う、それは信頼と生活の重さのあるお金」


 くっそ!


「ちっ、ちなみに……この世界って魔物倒したらお金かせげたりする?」


 罪悪感に負けました。


「三日死ぬ気であちこちの大型魔物を倒しまくっていればたまる金額かと。勇者ですし、世界のためになりますし。そうすればクラリス様も、お立場が危うくなることもなく、勇者様に声援を送りに来て下さることでしょう」


 言外に「てめえで稼げよ」と言われている感ね。


「死んでもただで生き返れるわけですし」

「おまっ、それは言うなよ! やっぱりそういうことなのかよ! 俺の命やすっ! くっそー! 年収0の何がわる――」

「説明の必要が!?」

「あ、はい。悪いですね、すみません……」


 兜の隙間から妙に鋭い眼光が。こわい。こわいよ。


「……がんばります」

「ええ。棺の安置はお任せください。涼しくていい地下室がありますので」


 にこりともしてなさそうな声で言われても。

 わかった。わかりましたよ!


「ちっくしょおおおおおおおおおおお!」


 クルルのパンツを握りしめて、俺は走りだすのであった。

 靴のおかげで痛くないのに、なんでだろう。

 涙が止まらないょ……つらいょ……!




 つづく。

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