タイトル未定2026/04/12 02:50
一日の診療時間を終えたマスターは、診療所に併設された実家のドアから出てきた。
「お疲れ様」
マスターが振り返ると、看護師長の紫野緑がいた。
「お疲れ様です」
「先生、大門君にゲーム機買ったの?」
「それが……」
「立ち話もなんだから、私の車に乗って」
「いいんですか?」
「遠慮しないで」
緑は車の助手席のドアを開け、マスターは助手席に座った。
運転席に座った緑は、切り出した。
「さっきの言い振りだと、まだゲーム機を買っていないわね」
「はい。大門が白田さんと一緒にゲーム機を買いに行きたいと言うので、白田さんにラインを送りました」
「流花ちゃんを、誘ったのね」
「それが……ラインの既読は付いたのですが、返事は返ってきません」
「返事がない?」
「はい。何か用事があるなら、そう返信が来ると思うんですが」
緑は静かに、電子タバコを吸い出した。
その姿に、マスターは驚いた。
「電子タバコに、変えたんですか?」
「うん。灰皿持ち歩かなくて良いし。先生は、まだ紙?」
「はい」
「あっ、吸っても良いわよ」
「すみません」
マスターは緑の言葉に甘え、タバコを吸い出した。
「マスターも電子タバコに変えたら?」
「変えようと思ってはいるけど、つい忘れてしまって」
「先生らしい」
緑は、笑いながら言った。
タバコを吸い終えたマスターは、遠い目をして言った。
「ボクがしつこかったから、嫌われたのかな」
緑は、声をあげて笑いながら言った。
「それは、ないわ!」
「なんで、そんなことが言えるんですか?」
「だって、流花ちゃん天然だから、先生がしつこいなんて感じていないわよ」
「そうですか?」
電子タバコを吸い終えた緑は、マスターの後頭部をそっと撫でながら言った。
「先生も、天然よ。天然同士、お似合いだわ」
「てん……ねん……」
緑の言葉に、マスターは驚いた顔をして、緑をみつめた。
車はマスターが住むマンションに向かって、ゆっくり走り出した。
車内では、マスターが緑から電子タバコについて聞いていた。
緑にマンションまで送ってもらったマスターは、マンションに入る 前に携帯のラインを出した。
マスターが送ったラインに既読は付いていたものの、未だに返事は届いていなかった。




