タイトル未定2026/04/12 02:44
短大の自習室で、親しい仲間とディスカッションを終えた水田若菜は、仲間たちと一緒に自習室を出た。
廊下は夕陽が差し込んでいた。
夕方の五時を過ぎたと言うのに、まだ明るい。
廊下を歩きながら、「この後ご飯でも食べに行く?」と言う声が聞こえてきたときだった。
ラインの着信音に気が付いた若菜は、バックから携帯を取り出した。
ラインを読んだ若菜に、笑顔が広がった。
「ゴメンね、急用が出来た。悪いけど、私パス」
若菜の言葉に一緒に歩いていた女子たちは、若菜を冷やかした。
「あっ、彼氏とデートだな!」
「そんなんじゃないって!じゃあ、また明日」
若菜は、元気よく駆け出した。
ラインに送られた待ち合わせ場所は、繁華街にある有名デパートの玄関前だった。
若菜にラインを送った白田流花は、若菜を見つけると笑顔で大きく手を振った。
変わらない流花の笑顔に、若菜は嬉しくなり思いきり駆け出した。
若菜が流花の両手を握ると、流花は声をあげた。
「スイ久しぶり!元気だった?」
「うん!シロちゃんは?」
「元気!元気!スイに会いたくなって。突然呼び出して、ごめんね」
「ううん。アタシも、シロちゃんに会いたかった!」
若菜と流花は見つめあうと、笑顔になった。
「お腹空かない?」
流花の問いかけに、若菜は言った。
「空いたぁ。なんか食べよう」
「目の前、デパートだし。ここでも良い?」
「良いよ」
若菜と流花は、デパートの中に入り食堂街を目指して歩いた。
平日だったが夕飯時とあり、食堂街はそれなりに混んでいた。
若菜と流花は各店舗を眺めながらフロアを歩き、比較的空いていたラーメン屋の店に入った。
若菜と流花は同じラーメンをオーダーして、やっと落ち着き流花が切り出した。
「もっと早く会いたかったけど、忙しくて今日になっちゃった」
「ライン、嬉しかった。アタシも、シロちゃんに会いたかった!」
ラーメンを食べ終えた若菜と流花は店を出て、デパートを出た。
先程は、陽は傾いていたがまだあたりは明るかったものの、今は陽はすっかり暮れて繁華街は夜の雰囲気になっていた。
若菜と流花は繁華街を歩き、おしゃれなカフェの店に行った。
店内には程よく客が入っていたが、店の中は騒がしくはなく静かな時間が流れていた。
店内に入り、思い思いの飲み物を注文して飲み物を受け取ってから、奥のテーブル席に着いた。
静かに飲んでいると、流花は若菜をじっとみつめた。
「スイ……学校楽しい?」
流花の思いがけない言葉に、若菜はとまどった。
「高校の時と、雰囲気がかわったように感じる。短大、大変?」
若菜は、高校生の頃と同じツインテールの髪型をしていた。
見た目は何も変わっていないが、流花は鋭く察していた。
カップをテーブルの上に置いた若菜は、短く息をついてから言った。
「さすが、シロちゃん。なんでも、お見通しだ。四月の終わりに、赤井さん出張に行って、今いないんだ」
「そうだったの!じゃあ、毎日のようにライン送っている?」
若菜は、静かに首を横に振ってから言った。
「出張に行く前、赤井さんに愛想をつかれちゃった」
「愛想を?どうして」
「ずっと、マスターのことが好きだったから」
「そんなこと赤井さん、初めから承知をしていたんでしょ」
「もう、我慢の限界を超えていたんだと思う。それに……」
「それに?」
「シロちゃんが、マスターのお店でバイトをしていて、マスターの側にいるシロちゃんが、ずっと羨ましかった」
そう言えば……流花はこれまでの自分を振り返った。
いつの間にか、マスターと一緒にいる時間が長くなっていた。
マスターと一緒にいる時間が、自分の中で当たり前のように思え、特に意識をしていなかった。
「ごめんね。シロちゃんにずっと、嫉妬をして」
「あ……謝らないでよ」
慌てて言った流花は今、自分は目の前の若菜に何と言えばいいのか、必死になった。
「スイ……私は聞くことしかできないけど、離れていてもスイと会う時間はいつでも作るよ」
「シロちゃん、本当?」
「うん」
流花は、笑顔で頷いた。
時間を忘れ、若菜と流花はカフェで話し込んでいた。
おしみながら若菜と流花は、夜の繁華街の中で別れた。
一人になった流花に、携帯のラインの着信音が聞こえた。
流花は歩道の隅により、携帯を出した。
携帯はマスターからで、「日曜日大門とゲーム機を買うので、一緒に行きませんか?」
と言う、内容のラインだった。
ゲーム機を欲しがる大門を想像した流花は、思はず笑ってしまった。
返事を送ろうとした流花だったが、別れたばかりの若菜を思い出し、返事を送るのをためらってしまった。




